ダンジョンを造ろう

田中隆司

穴を掘る

 魔力の使い方は魔力が知っている?らしいから私でも難なく魔法を使うことができた。
 なぜ今まで使えなかったのか不思議なくらいに扱える。
 だからとりあえず上だと思う方向に穴を掘ってみる。
 手をかざして魔力を土に浸透させてどけていくと面白いように穴が広がっていく。
 崩壊しないか心配だったけどそこは心配ないっぽい。
 コアに繋がっている通路にはコアの魔力が通ってそうそう崩れたりしないようになるんだとか。
 五分ほど手をあげていて、そろそろ手が疲れてきた頃に上に穴が開いた感覚がした。
 一拍おいて上から魔力が降りてきたことがわかる。
 コアは心なしか光量が増したように思える。
 今さらだけどもし真上に水があったら既に死んでたかもって思う。
 そうじゃなくて良かった……。
 取り敢えず、最低限のことはできた。
 けどまだしないといけないことが山積みだ。
 コアのお陰で食べなくても──なんなら呼吸しなくても──生きていけるようなったみたいだけれど料理は食べたいしトイレも必要。
 ただ穴を掘っただけだったら多少知恵のある生き物だったら降りてくるだろうし試したいことも多々ある。
 いきなりこんな状況に放り出されてどうしようと思うものの、私は思っていたよりこの状況を楽しんでることに気づく。
 前の生活に未練がないわけではないけれど、退屈していたのは間違いなかった。
 だからこの非日常にわくわくしているし、何より自由に弄くれるダンジョンを育てることを考えると楽しみで仕方ない。
 こう思えるのもシロがいてくれるおかげだろうけど。
 シロがいなかったら泣き崩れてそのまま死んでいたかもしれない。
 私にかまってほしそうに足元をうろうろするシロを抱き上げて撫でる。
 前の生活の時から私にとって大切なのはシロだけだったからシロさえいれば私は問題ない。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品