転生ヒロインに告ぐ!この世界はゲームじゃない!

茄子

36 入れ替えて正しましょう(セイラ視点)

「婚約破棄…」

 12公爵家の当主もしくは代表者が集まった場所で、告げられた言葉は私の頭の中を素通りしていくだけで、何の感情も起こすことは出来なかった。
 ただ、小説の通りになったとは思ったけれど、それだけだった。

「ミレーヌ=カペルに神の加護が下りたことは僥倖だったな」
「まったくだ。12公爵家に迎え入れ王子の婚約者とし、セイラは後継者の失われたゲミニー家に養子に入り、ヴェルナーを婿に向かえ、ゲミニー家を継げ」
「スコルピウス家にはまだ子供がいるからな、我が家はそれで対応しよう」

 エドワード様に抱きしめられたまま告げられる今後の12公爵家の方針に、私は頷いて了承を示したが、この決定をよく思わない人がこの場にはいた。

「セイラが僕以外と結婚するなんて認めない」

 カイン様の言葉に、12公爵家の者の眼が集まる。
 今後の方針とカイン様の婚約者の件ということで、カイン様もこの場にいることを許されてはいるけれども、本来であれば同席することは許されていないはずなのにもかかわらず、口をはさむなんて愚かな真似をすると心の中で無感動に思ってしまった。

「カイン様、これは12公爵家の決めごとです。王家の方はその決定を受け入れていただく決まりでございますれば、どうぞお控えください」
「神の加護を得たとはいえミレーヌはただの令嬢だよ、セイラの代わりなどできない」
「ええその通りですわカイン様。だからこそ、代わりになれる貴方様の婚約者になっていただくのです。12公爵家の当主になることは、そのミレーヌ=カペルにはできないのですから、これが最善なのですわ」
「次代を産む役目はセイラでなくとも、ミレーヌ=カペルが神の加護を得たのであれば可能なこと。だが、12公爵家にある秘宝の加護を受けているわけではないのです、12公爵家を継ぐことはできない」
「ではどうしてセイラがヴェルナーと結婚することになるの?必要ないよ」
「次代を産まなければなりません。マリオンとマリウスの代わりをするのであれば、これが最善です」
「セイラの気持ちはどうなるの!」

 カイン様のその言葉に、視線が私に集中しヴェルナー様とも視線が合う。

「私は構いませんわ。ヴェルナー様に抱かれて子を成すことに何の抵抗もございません」
「セイラ!僕が嫌だって言ってるんだよ!」
「関係ございませんわカイン様。私が婚約者にならないのなら、それまでのことなのですもの。カイン様はミレーヌ様をお気に召していらっしゃったようですし、構いませんでしょう?私は子供を産めば、自由になれる、そうですわよね?」

 私の問いかけに、カイン様以外の全員が頷いたのを確認してカイン様を見つめる。

「次代の==になるのが私でなくとも構わないのなら、それでいいではありませんか。======になって子を成す必要がないのなら、私は戦いに身を置くか、次代を産む胎を守るだけですわ」
「好きでもない男に抱かれるっていうの?!」
「ヴェルナー様のことは好いておりますわ、カール様でもアレックス様でもエドワード様でもそれはかわりません。抱かれることに何の抵抗があるわけがございませんので、心配は必要ございません」
「君は僕のものだろう!」
「いいえ」

 カイン様の言葉にピクリと体が震え、目が細まったのを感じた。
 私がカイン様のものなど、いつからこの人はそのような事を考えていたのでしょうか?婚約者であっても、私は私のものであり12公爵家の駒であり、神々の愛玩具であるというのに、この方は何を思いこんでしまっているのでしょうか?

「半神であるとはいえ、神ではない貴方が、12公爵家の血はひいていても12公爵家の人間ではない貴方が、私を所有することなどできませんわ」
「なにを…」

 驚きと、傷ついたような表情が混ざった顔を向けてくるカイン様に、私はエドワード様によりかかったまま温度の乗らない視線を投げかけ、ヴェルナー様を見つめる。
 マリオン様とヴェルナー様の間には確かに愛情があった。その愛したマリオン様を失うきっかけになった私を抱くことを、ヴェルナー様は納得できるのでしょうか?
 いいえ、この場にいてこの件を了承しているのだから、納得はしていなくてもできるのでしょう。
 それが12公爵家の人間として、最善の方法なのですから、愛情とはまた別のところで私を穏やかに好いてくれるのでしょうね。

「俺もセイラ様のことは好きだし、大切だと思っている。マリオンのことで恨む気持ちは少しもない。いつか目覚めるのなら、その場所を守る事こそが俺の愛の示し方だ」
「ヴェルナー様…ええ、そうですわね。私も一緒にお守りいたしますわ、あのお2人が目覚めたときに帰れる場所をお守りいたしましょうね」

 にっこりとほほ笑み合えば、エドワード様の体が揺れたのを感じて、私を守る様に回された腕と反対側の腕を見れば、カイン様の首にその手が当てられていた。

「エドワード様?」
「気にしないで頂戴。少し、子供が暴れそうになっただけよ」

 その言葉に、カイン様はまだこの件を納得していないのだとわかり、ため息が出そうになる。
 その間に当主様や代表者の方々は席を立ち、各々自分の仕事をするためにと帰宅する準備を始めてしまっている。つまりは私達でどうにかしろということなのでしょうね。

「セイラ、神々がお前を浚うまでの間は、エドワードと共にお前を守るよ」
「わかりましたわ、ヴェルナー様」

 最後に頬を撫でられて、皆様が部屋を出ていくと残されたのはいつものメンバー……より二人少ない人数で、私はエドワード様に庇われたまま、カイン様を見つめる。

「カール様、アレックス様、エドワード様。少し込み入った話しになるかもしれませんわ、気を保ってくださいませね」

 念のため忠告しておく。

「神の加護を得ることができるように、カイン様自らがここのところミレーヌ様に気を流し込んでいらっしゃったように見受けられますわ」
「そうだよ」
「なら、今回の加護はカイン様の望むところでございましょう?それに、もし加護を得たならこうなることを考えていらっしゃらなかったのですか?」
「セイラが誰かと婚約するなんて考えるわけがないよ」
「カイン様との婚約がなくなれば、私は誰かの子供を産むか、戦場で死ぬだけですわ。それをご理解いただけていなかったのは12公爵家の者として非常に残念でなりません」
「望まない結婚や子作りが平気だっていうの!?」
「ぷっ……あら、ごめんなさい。あんまりにもおかしくって、つい」

 カイン様の言葉に、エドワード様がそう言って笑うと、カール様もアレックス様もクスクス笑い、私もおかしくなってきて小さく笑ってしまう。

「カイン様とセイラの婚約が望んでいたものかのようにおっしゃってますけどカイン様?この婚約こそが12公爵家によって決められた生贄だということをお忘れなのですか?セイラがカイン様を好いているとでも錯覚なさったのでしょうか?滑稽ですこと」
「12公爵家と王家は寄り添うものではあるが、違うものであり、交わる者ではあるが、混ざらないものだ」
「過去には相思相愛になった夫婦がいないとは言わないがな?セイラ様がカイン様を好いているとは、ひいき目に見てもありえないな」
「相思相愛になった国王もしくは王妃、その方々は発狂したというのが通説ですわ。相容れないほうがお互いの為ですよ、ねえセイラ」
「そうなのですか?どちらにせよ私はカイン様に恋愛感情は持っておりませんので関係がありませんわ。12公爵家としてもちろん王族であるカイン様は優先させますが、12公爵家の決定に逆らうような真似をするつもりもございませんわ」

 重ねられていく言葉に、カイン様が茫然としていると部屋のドアがノックされる。
 カール様がすぐさま対応するために立ち当たった瞬間、カイン様がエドワード様に庇われている私の手を掴もうと手を伸ばしてきた。

「君が神産みの木の苗床と養分になって死なないように!僕がせっかく考えてミレーヌを生贄にしてあげたんだよ!」
「「うっ」」

 その言葉を聞いた瞬間、アレックス様は頭を抱えて俯き、カール様は額に手を当ててよろめきソファーのひじ掛けの部分に腰をつけてしまう。
 エドワード様は平気なようだが、この程度は次期当主として聞いていたのかもしれませんわね。

「そうなるために、私は選ばれたのですわ。12公爵家が代々成してきたことを嫌悪するわけがおざいませんでしょう?カイン様は私の気持ちなど考えずにご自分の望むままに動いているだけなのですわ。すべてはカイン様の自業自得と言えるのではございませんか?カイン様がミレーヌ様に何もしなければこんなことにはならなかったでしょう」
「セイラ!君は意志だけを残されたまま。体が少しずつ木に養分を吸われ、子供を産まされてもいいの?そうなってしまえば僕と一緒にいることもできない、歴代の王妃や王配と同じ運命をたどるんだよ!」
「だからなんだというのですか?」

 何をそんなに必死なのかまったくわかりませんわね。

「もう僕と触れ合うことも会話をすることもできないんだよ!」
「だから、それがなんだというのですか?何も不都合なことなどございませんでしょう?次代を産むのは大切なことですもの」

 むしろ名誉あることでしょう?

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