転生ヒロインに告ぐ!この世界はゲームじゃない!

茄子

32 人形を作ろうか(ミレーヌ?視点+カイン視点)

 夜の林道、寒くなっていく時期ではあるけれど、まだコートを羽織るほどではないから薄手のショールを羽織って、カイン様とゆっくり歩いている。
 夕食をカフェで一緒に取ってくださると言ってくれて、その時私の最近の話しを聞いてくださるカイン様はやっぱり優しい。
 そのカフェからの帰り道、ちょっと散歩をしようと言われて今こうして歩いている。

「あの、いいんでしょうか?」
「なにが?」
「こんな時間に、散歩なんて…寮に戻らなくってもいいのでしょうか?」
「ちゃんと事前に言ってあるからいいんだよ。僕のミレーヌと話したかったし、最近セイラがちょっとつれなくってね、気晴らし」
「つれない……、それって私のせいでしょうか?」
「そうかもね」

 言われて胸が締め付けられるように苦しくなって、足を止めてその場で深く頭を下げる。

「もうしわけありません!なんてお詫びしていいのかっ」
「うん、だからお詫びに遊ばせて」
「え?」

 肩を掴まれて頭を上げさせられると、そのまま抱きしめられて口づけられてしまう。
 急なことに頭が回らず、とにかくと目を閉じればあてられる唇の角度が変わり、唇を食まれてしまいビクリと体が震える。

「僕ね、セイラが大好きで大好きで、傍に置いておきたくて仕方がなくって、それなのに、最近避けられてて…、君のせいなんだから退屈しのぎに遊ばせてよ、僕のミレーヌ」
「んっカイン、さま」

 ぬるりと入ってきた舌の動きに頭がぼーっとしていく。触れ合う舌が熱くて、体中にその熱が広がっていく感じがして、体から力が抜けていく。

「ぁ…」
「はあミレーヌ、やっぱり僕のミレーヌはいいね」

 何を言われているのかもわからなくなっていくなかで、ドレスのボタンが襟元から外されているのか、苦しかった息がしやすくなる。
 侍女がいないから自分だけで着れるドレスにしてるせいで、前面にボタンがある物しか着れなくて、そのせいで脱がせやすいのかな?って思いついてそんな破廉恥なこと考えるなんてって恥ずかしくなる。

「僕の気が魂に馴染みやすい」
「ん…」

 どろり、と頭の中が溶かされるような酷く気持ちがいい感覚に、ガクリ、と足の力が抜けてそのまま地面に崩れ落ちてしまう。
 ぼーっとした頭で見上げたカイン様の顔は、酷くきれいな笑みだった。

「あーあ、大丈夫?」
「はぃ」

 クスクスと笑って、カイン様はしゃがむと私が羽織っていたショールを取ると、地面に広げてその上に私の肩を掴んで押し倒した。

「カイン、さま…」
「もうちょっと」

 そう言ってもう一度触れる唇に、目を閉じる。
 セイラ様との仲がぎくしゃくしてしまっているのは私のせいなのに、どうしてなのかカイン様を拒むことができない、お慰めしたい。
 おずおずとカイン様の背中に抱きしめるように腕を回した瞬間、バチン、と頭の中がショートしたようにはじけた。



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 は?なにこの状況?
 今朝このドレスを選んでからの記憶がないんだけど、どうなってるわけ?
 カイン様に押し倒されてキスされて、あたしはカイン様の背中に腕を回してるわけで?

「ん?ミレーヌ?」
「はい…あの、その……」

 ちょっとまってちょっとまって、落ち着けあたし。いまこれってすっごい既成事実のチャンスでしょ?逃す手はないでしょ!

「大丈夫ですから、続きを」
「あー、いいや」

 そう言って離れていこうとするカイン様を腕に力を込めて押さえつけ、自分に覆いかかる様ににむしろ引き寄せる。

「カイン様、あたし…」

 なんだかわかんないけど、あたしの体もいい感じにとろけてる気がするし、初体験が外っていうのはちょっとどうかとも思うけど、まあ思い出作りにはいいわよね?
 潤んだ目で見つめて言えば、カイン様は笑ったかと思うと広げられた胸元に、思いっきり噛みついて歯形をつけてくる。

「ぃっ」
「痛いんだ?じゃあまだだね」
「え?」
「これが痛いって感じなくなったら。ミレーヌはきっと僕の王妃になれるよ」
「それって…」

 快楽漬けのドMになれってこと?なにそれ、王妃ってドM能力がないとダメなわけ?

「大丈夫、神の加護をもらえば傷みなんて感じないよ」

 あ、そういう?神秘的な感じの方での意味なわけなんだ?
 ふーん、加護をもらうと痛みを感じない?ダメージを負わないみたいな感じなのかな?ゲームではそういう説明なかったしなあ、加護を得ているっていう一文がステータスに増えるだけだし。

「王妃に…、神の加護を…」

 それってアンデッドの大襲撃でもらえるわよね。
 あたしが祈りの力で神に加護をもらって、浄化の力で殲滅するんだったわよね。
 後方にいるだけで貰えるんだから楽勝よね。

「そうだよ。君が僕のミレーヌならなれるよ。こうして、僕が君が神に気に入られるように、してあげるから」
「あ…」

 ボタンがさらに外されてコルセットから出ている部分に触れられて、そのまま胸にキス跡を残されていく。
 少し痛いけど、そこから熱が広がっていくみたいで気持ちがいい。

「もっと…」

 リップ音を鳴らされてコルセットがずらされて棟がどんどん露になっていく。
 もうちょっとで、というところで胸元から顔を上げられて、今度はどんどん上がっていくキスが、鎖骨をなぞって肩や首筋に広がっていく。
 もう頭がおかしくなりそうなぐらいに熱くて気持ちい。
 なにこれ?こんなに気持ちいならこのまま本番になったらどれだけ気持ちいいんだろう。
 上がってきたキスが唇に触れて、下を絡められた瞬間、バリン、と頭の中で何かが割れた音を聞いた気がした。



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 ミレーヌに気を送り込んで頭の中を探れば、少しずつ出来上がっていくのがわかる。
 セイラと違って器がもろいから少しずつしか気を送り込めないのがもどかしいけど、ミレーヌの頭の中に有った知識に間に合わせるにはこうして無理にでも作ってあげないとね。
 匂いも、ちょっとだけいい匂いになってきたかな?でもセイラには全然かなわないよね。
 やっぱりセイラが一番だよね。
 神々があんなに執着する理由もわかるけど、セイラは僕のものになる様にって神々が細工したんだし、いつまでも僕からセイラを取るような真似はしてほしくないんだよね。
 でも、神々に僕がなにかをいえるわけないし、ミレーヌがちゃんと知識の中の役割を果たしてくれれば、僕はセイラとずっと一緒にいられるんだよ。
 王妃になって、生贄になる必要もないんだよ。

「ミレーヌ?」

 あれ?反応ないな…。壊れてはないけど、気をやっちゃったのかな?
 だめだなあ、もろくって、もろすぎて加減がわかんないや。
 力の抜けたミレーヌの体の上から起き上がって見下ろすと、開いた胸元に乱れた髪、地面に広げられて汚れたショールに、随分な格好だと思わずおかしくなってしまう。
 僕の服が汚れないようにするためだったけど、ショールはもう使えないかもしれないなあ。
 あとで贈って置けば勘違いも捗ってくれそうだし、セイラに贈ろうと思ったけど趣味が合わなくて贈らなかったものでも届けておこうかな。

「じゃあねー」

 そう言って、気を失ってるミレーヌを残して寮に向かって歩く。
 あのぐらいなら数時間で目を覚ますだろうし、僕がわざわざ抱えていく必要もないしね、まあ、こっち側は危ない生き物は人間ぐらいなんだし大丈夫だよね。
 それにしても、セイラは最近ちょっとひどいよね。
 僕がセイラのためにミレーヌを使ってあげてるのに、僕をみんなと結託して避けるとか、ちゃんと話し合いをしないとなあ。
 王族の子供が12公爵家の生物に敬われるために作られた、子産みの仕組み。
 12公爵家の生き物の命を犠牲に次を産み落とすがゆえに、神がそれにかかわるがゆえに、12公爵家の生き物は王族を優先する。

「それでも、12公爵家の生き物は、12公爵家の仲間を選ぶんだよね。王族は選ばれないなんて、12公爵家の生き物を使って産み落とされてるのに、不公平だよね」

 セイラは僕のものなのに、どうして?
 そう考えてセイラとその背後にいるエドワードの姿が思う如何でぴたりと足を止める。
 今は兄妹ではないけど、正真正銘同父母の兄妹だ。
 血の絆の強い12公爵家の者の中でも、あの二人は別格に強い。エドワードはセイラを守るために、養子に出たとも聞いた。
 死に狂いが、妹を守るための狂気なのだと。

「厄介だよね」

 流石に僕との婚約が一時的に亡くなったとしても、エドワードがセイラを娶ることはできないけど、それでも僕という枷が無くなったらエドワードが何をするのかわからないよね。
 ウィルゴ家の次期当主は弟にほぼ確定してるし、そうなればセイラが戦いに率先して赴くのは想像できるかな。
 そうなれば死に狂いのエドワードが当主になるまでの間ずっとその横に?でもエドワードが当主になるのってセイラを守るためで…。
 ってことは、当主になる意味がなくなる?死に狂いらしく戦って死ぬ可能性があるよね、そうなればセイラは絶対にエドワードの死から抜け出せなくなる可能性もある。
 神々がどれほどセイラを愛していても、セイラが神々を愛していても、血の絆は、その魂に刻み込まれた絆は、強い。

「許さない」

 そんなの許されない。
 セイラは僕のモノなんだよ。昔から決まっていたことなんだよ、神々にもあげないよ。

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