転生ヒロインに告ぐ!この世界はゲームじゃない!

茄子

17 お色気回?いいえ説明回です(セイラ視点)

 ごきげんよう、セイラ=ウィルゴでございます。
 そろそろこの挨拶もくどく感じてきた方がいらっしゃる気がしますので次回からは省略したほうがいいかもしれませんね。
 2週間ぶりに戻った学院は変わりなく穏やかな時間が過ぎているようで、寮の自室のベランダに足をつけたときにほっと一息つきました。

「おかえりなさいませ、主様」
「ただいま戻りました。変わりはありませんか?」

 連絡していたわけでもありませんが、従者がベランダの窓を開けて待機していたため、そのまま室内に入る。
 すぐさま従者の一人が背後に回り、二週間着用し続けていたにもかかわらず一切汚れのないドレスのボタンを一つずつ丁寧にはずしていく。

 今、なぜか唐突に私たちの普段来ている衣服の説明をしなければいけないと啓示を受けた気がしますので、従者が着替えさせてくれている間にご説明いたしますね。

 まず、訓練服。これは乗馬服と燕尾服を合わせたようなものをイメージしていただければいいかと思います。下半身はぴったりとしてロングブーツを履いておりますが、上半身のジャケットは燕尾服の様に裾が長い感じです。
 制服ですが、シュミーズドレスの上にショート丈のフレンチジャケットを羽織っております。要するにこのフレンチジャケットの部分が制服になりますね。皆様の想像するフレンチジャケットがどのようなものかはわかりかねますが、女性の場合はローブ・ア・ラ・フランセーズのショート丈、袖口は手首のところまでしっかりとおおわれております。
 靴は自由ですので出身地域や階級差などがありますね。私は太いヒールの付いたロングブーツを愛用しております。
 さて、続きまして普段着です。部屋ではシュミーズドレス+羽織物が基本になります。
 外出の際はお国によりますが、我が国の国民はエンパイアスタイルもしくはハイウエストのドレスを着用いたします。シュミーズドレスの上にフレンチジャケットを羽織るというのもございますし、気候によってはそのままジャケットではなくショールなどを羽織って外出することもございます。
 国による、というのは、各国やはり独自の文化や流行がございますので差が出てしまうのです。極端な例ですが、ピヤタロス神国ではこちらでは信じられないほど薄い布を胸と下半身のみに纏うという衣装が普通だそうです。
 流石に気温差があるのでペレト様はこちらではシュミーズドレスを着用なさっていらっしゃいますね。
 また、下着ですがコルセットはございますが着用するのは夜会の時ぐらいでしょうか。普段はブラジャーとドロワーズ、もしくはショーツを着用しております。
 気温だったり気分でどちらにするか決める方もいますね。

 バサリ、と音を立ててすべてのボタンが外されて腕も抜かれたドレスが床に落ちる。続いてブラジャーのボタンも外され、ショーツの紐も外される。

「主様、どうぞ」
「ありがとう」

 身にまとうものがすべて取り払われて、従者が準備している湯船にゆっくり体を浸す。

「ふう」

 水晶の滝でも水浴びは出来ましたし、不思議な力のおかげで汚れなどは一切ありませんでしたが、やはり温かいお湯にこうしてゆっくりつかるというのは別ですね。疲れが取れていくような感覚がいたします。
 言えばあの空間でもお湯につかるぐらいできたとは思いますけど、入っている間に弄りに来そうな方々が多いのでやめておくのが賢明ですわよね。

 パシャリ、と湯船のへりに体を預けて静かに目を閉じる。
 湯船には薔薇のオイルが落とされているのか華やかな香りが浴室を包み込んでいる。

「失礼いたします」

 そう言ってそっと頭が一瞬持ち上げられ、髪を背中から抜かれる。少し仰向けに首を動かされ、髪にゆっくりとお湯がかけられ続いて丁寧に洗髪剤を使用して頭皮とが髪が洗われる。

「主様がご不在中のことですが」
「なにかしら?」
「ケーテ様が些か戯れが過ぎることがあったようです。それとアイトリー様が動かれているようです」
「そう」

 あの方にも困ったものですね。私への好奇心、いえ信仰といっていいのでしょうか?それが強いのも考え物ですね。
 けれど彼女の手によってこの世界に酷似した小説と同じような出来事が起きてしまっていますね。流石に私を犯人というほどミレーヌ様も愚かではないようで安心しましたが、ケーテ様に指示を出して私がさせたと言わないとも限りませんし、さてどうしたものでしょうね。
 アイトリー様が動いたというのは意外ですが、情に動かされたのでしょうか?あの方はどうにもつかめない方ですし、行動が読めませんね。

 バシャリとお湯がかけられ泡が流され、丁寧にすすがれて素早くタオルでまとめ上げられる。

「ミレーヌ様にお怪我などは?」
「それはございませんが、お食事に混入物があったようで、数日寝込まれておりました。流石に学院の医師が話しを聞きに部屋までいったのですが、カイン様以外を部屋に入れようとせずに対応に困っていたようです」
「混入物ってなんだったの?食堂で?それともカフェ?それとも運ばせたもの?」
「食堂棟のものを部屋に運ばせたもので、混入物は生きたネズミや蛇だったそうです」
「生きた?それはまた、仕掛けた人も相当なものですこと」

 捕まえるのはともかく、それを保存してわざわざ食事に混入させるなど、そう簡単にできるものではない。けれども、犯人が捕まっていないとなれば、調理したもの、食事を配達用の籠に入れたもの、配達員に問題はないと判断されたというところですね。
 さて、どこで混入したのでしょうか?

 湯船から上がり、傍に置かれたベッドに横たわると暖かい湯が体にかけられて液体石鹸で体を洗われる。

「皆様は動いていらっしゃる?」
「静観、と言ったところでしょうか。カイン様は流石に動かれておりますが」
「そう」

 カイン様以外を部屋に入れないというところからも、相当精神的ダメージを受けたということでしょうね。
 私は食事にネズミや蛇が混入してもなんとも思いませんが、通常のご令嬢には相当衝撃的なことだったのでしょう。

 そう考えると、確かに戯れが過ぎますわね。

 背中も洗い終わったところでベッドから手を借りて起き上がり肩からゆっくりとまたお湯をかけられて洗い流される。
 すぐにタオルで水気を拭き取られ、ガウンを羽織ると浴室を出る。浴室を出るとそこは小部屋になっており、椅子と小さなテーブルが用意されている。
 椅子に座ると従者が頭のタオルを外し、髪の水気を別のタオルを使用してぬぐい取ると、香油を使いながら丁寧に梳いていく。
 髪がサラサラと絹糸の様に流れるようになってやっと椅子から立ち上がり、小部屋を出て衣裳部屋に向かう。
 下着を着用しシュミーズドレスを着て、部屋履きのやわらかい靴からショートブーツに履き替える。椅子に座って髪を結ってもらい、薄く化粧をしてもらってからショールを羽織る。

「談話室に参ります」
「行ってらっしゃいませ」

 従者を一人連れて談話室に行きましたが、残念ながらどなたもいらっしゃらないようです。従者はいつものように部屋の壁際で気配を殺しております。

 ソファに座って窓の外を見れば、木々は秋の彩の準備を始めているようで、今はもう9月の半ばなのだと思い出す。
 たしか小説の中ではこの時期にはカイン様とセイラの確執が深いものになっており、ミレーヌ様へのいじめがより陰湿なものになっていく時期でしたね。
 そう考えれば神の采配か小説のように話が進んでいると言ってもいいのかもしれません。

 まあ、先日お尋ねしたところ、含みはあったもののこの世界に酷似した小説については不干渉とのことでした。

 それにしても、私が動いてケーテ様を止めるべきでしょうか?国交の問題もありますのであまりことを大きくしたくはないのですし、フロレーテ様のご心労を増やすのも悩みどころですね。
 できればフロレーテ様がケーテ様を止めていただき、秘密裏にミレーヌ様に謝罪をしていただくのが一番なのですが、ケーテ様が純粋に善意で行動している以上あのお二人が歩み寄るのは難しいでしょうし、困りました。
 けれど、これ以上ミレーヌ様に被害があるのを黙ってみているわけにもいきませんね。

 そう考えていると部屋の外からこの部屋に近づいてくる気配を感じてソファに座ったまま扉に視線を向ける。

「セイラ!」
「まあ、カイン様。ご無沙汰しております」

 気配でなんとなくわかっておりましたが、いらしたのはカイン様でした。立ち上がって礼をしようとしたのですが、すぐさまそのままソファに押し倒されてキスをされてしまいました。

「ん、セイラ。よかったー、ちゃんと帰ってきてくれたんだね」
「もちろん、帰ってきますわよ?」
「うん。そうだよねー」

 ぐりぐりと胸にお顔を擦りつけられますとこのドレスは胸元が開いておりますので、ずれてはだけてしまうのですが、まあ久しぶりにお会いしましたし思うところがあるのかもしれませんので好きにしていただきましょう。

 若干ドレスがずれてしまったところでひとまず落ち着いたのか、カイン様は胸から顔を上げて少し腕を立てて二人の間に空間を作り、私の顔をマジマジと観察していらっしゃいます。

「どうかなさいましたか?」
「……神気が濃い」
「はい?」

 どうやら、神々に触れていたために私の体に残る神気が強いようです。まあ、最後のイルメイダ様に直接神気を注ぎ込まれたのが主な原因な気がいたしますけれども。

「あんまりあっちに染まったら駄目だよー」

 さて、この場合どういう意味なのでしょうね。

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