おまけSS 蜂蜜食べても大丈夫？

(X年後のお話)

　朝食は、時々宮燈さんが作ってくれるから和食が多い。
　でも、今朝はパンにした。なぜなら昨日、杉岡さんの奥様から、予約しないと買えない美味しい食パンを頂いていたから。
　二ヶ月先まで予約が埋まっているという噂のパン。何もつけずに食べて、サクサクふんわり食感を楽しんだあと、私が蜂蜜をかけていると夫が言った。

「一歳未満の赤子に蜂蜜を与えてはいけないのでは？」
「ああ、それは蜂蜜にボツリヌス菌がいた場合、赤ちゃんが菌に対抗出来ないから、乳児ボツリヌス症になるんですよ。お腹の中にいる間は、胎盤通してるから関係ないです」

　突然なにを言い出すのかと思えば、赤ちゃんの心配だった。ちなみに宮燈さんは、先週遊びに行った清里でお土産に買ってきた、ルバーブのジャムを塗って食べている。

「だが、母親はカフェインを控えたりするだろう？影響がゼロではないのでは？」
「うーん、私もわからないです。じゃあ、調べますね」

　私は持ったままだったスプーンを置いて、携帯端末で検索してみた。

「あ、やっぱり母親が蜂蜜を食べるのは大丈夫ですよ。ところで、私は妊婦じゃないのに何故そんな心配をしてるんです？」

　私がそう言うと、無表情だった夫が目を伏せた。睫毛ながーい。きれーい。
　結婚して随分経つのに、まだドキドキする。美人は三日で飽きるとか嘘じゃん。そう思って見つめていたら、思いがけないことを言われた。

「六日遅れてるだろ」

　……生理周期、把握してんのか。本当にストーカーだな。配偶者じゃなかったら警察に相談するレベルだと思う。

「実は遅れてます。今日あたり、市販の検査薬で試そうかと思ってました」
「約束通り、育休はとるから」
「宮燈さん、気が早いですよ！」

　私が笑ったら、宮燈さんも少しだけ笑う。私は「ああ、幸せだなぁ」と思っていた。

　おしまい

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