わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

ゆきづき花

77. 約束_2


 またひょいっと抱えられてベッドに放り出された。ハリウッドツインだからやたら広く感じて、絶対やりたい放題にされるー!と逃げたくなってしまった。膝を閉じて枕の方へ体を引くと、少しだけ笑っている宮燈さんが言った。

「いやなのか?」
「や、じゃないですけど……あっ……」

 覆いかぶさるようにして体を押さえつけられる。下半身が密着してるから熱を感じて期待してしまう。宮燈さんは動かないまま、笑って私を見下ろしていた。

「桜、愛してる」

 また宮燈さんの事以外、何も考えられなくなっていくけれど、私はその浮遊感を幸せだと感じていた。






 宮燈さんは浅く息をしながら私の肩にもたれていた。私は「うー……激しいー……宮燈さんのばかー……」と文句を言いながら夫の背中をずっとぽこぽこ叩いていた。顔を上げた宮燈さんが言う。

「まだそんなに酷くしてない」
「まだ? まだってどういうことですか?」

 怯えつつ私がそう問うと、宮燈さんはとても綺麗な顔で淫靡に笑った。

「もう二度と私から逃げようなんて思わないようにする」
「なにその不穏当な発言! あれは宮燈さんがっ……あ……」

 腕を宮燈さんの首に回した姿勢のまま抱き起こされたから、額がくっつく距離で夫の綺麗な顔を見てしまった。え、美人……好き、めちゃくちゃにされたい……ってまた、絆されそうになってしまった。あぶなーい。

 体を離そうとしたけど、逆に腰を引き寄せられて肌が触れた。また宮燈さんが笑っている。部屋は暗いけど至近距離だから、長い睫毛とか通った鼻筋とか、笑っててえっちな口元がはっきり見えてドキドキした。

「……ん……確かに逃げましたけど、それは宮燈さんのせいじゃないですか!」
「私はずっと嘘はついていなかったが?」
「う、嘘は……ついて……なかったですね、はい」

 そういえばそうだった。秘密保持契約に触れる部分は言えなかっただけで、他の質問には答えてくれていた。「浮気は事実じゃない」という言葉を信じなかったのは私。「好きなのは桜だけだ」と言ってくれたのに信じなかったのは私。
 心を、見えないものを信じきれなかったのは私の方だった。

「前にも言った。私は君以外どうでもいい」
「だって……隠し事するから……何か分かんなくなっちゃって……」
「だから、わからせる」

 そう言って宮燈さんが私にキスをした。芯が熱くなるのを感じて、宮燈さんの背に爪を立ててしまった。

「ごめんなさ……ぁ……」

 言葉は唇で塞がれて、また舌が入ってくる。くっつけ合ってると気持ちよくて体から力が抜けていった。



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