わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
72. 橘部長と仲直りする_2
疲れたからソファに座って「私は自分のホテルに荷物を置いているし、夕飯は中華街に行きたいです!」と出かけることを提案した。
「靴も、買いに行こう」
足元に跪いた宮燈さんが、私の靴を脱がせながら言うからびっくりした。確かにスーツに合わせた飾り気のない黒いハイヒールだから、可愛いワンピースには地味かもしれない。
「いつも靴は壊れるまで履いてるから、服に靴を合わせる習慣が身についてないんですよね。すみません。可愛い靴があったら欲しいです!」
私がそう言ったら、宮燈さんが少し笑う。やっぱりさっきから笑ってる気がする。こんなに表情を変えてる宮燈さんって珍しいと思って、私は恐る恐る聞いた。
「あのー……勝手にめちゃくちゃ言ってしまいましたけど、私の方こそ嫌いになったりしてませんか? 大丈夫?」
「大丈夫、というか、前より桜が好きになった」
急に好きとか言うから、私の顔は真っ赤になったと思う。
「……だからぁ……そういう甘い言葉を囁く時は微笑んでくださいよう……」と言ったら、無表情だった宮燈さんが一瞬笑ってくれた。え、好き。
「あ! そうだ! 誤解して叩いたことを謝らないと。ごめんなさい。でも浮気じゃないなら『私よりずっとお似合いです』って言ったら『そうなんだろう』って返すなんて酷くないですか?」
「ああ……君以外の女とお似合いだと言われて苛立った。心にもない事を言って悪かった」
そんな素直に謝られると思わなかったから拍子抜けした。本当の気持ちを言わなかったのは私も同じだ。私もお似合いだなんて思ってなかった。
「私もです。ごめんなさい……」
うなだれていると、宮燈さんの手が頬に触れた。顔を上げると、すぐそばで私を見つめている宮燈さんの綺麗な顔。無表情だけど、何だかさっきから空気が優しい気がする。
「宮燈さんにもうひとつお願いがあります」
「何だ?」
「仲直りのちゅーしてください」
私がそう言うと、宮燈さんが私の額や頬、口の端、それから唇に軽くキスをしてくれた。
「もっと、してください」
首に腕を回して私がそう言うと、無表情のまま深くキスされた。舌を絡ませてると背中がゾクゾクするのなんでだろ?体が熱くなってくる。ちゅ、ちゅ、と音がして、恥ずかしいけど気持ちいい。角度を変えながらずーっとキスしていた。
ようやく解放された時には、私はまた何も考えられなくなっていた。熱っぽくなってるのが自分でもよくわかる。背中を支えていた宮燈さんの腕が腰におりていって体を撫でるから、恥ずかしいくらいに震える。
「やっ……あ……」
「キスだけ?」
「キス……だけで、我慢します……」
私がそう言うと、宮燈さんは私をソファに押しつけてまたキスをした。
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