わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
51. 橘部長と会えない日_2
暇だから、仕方なく研究室に行き、黙々と翻訳作業をしていると同級生に声を掛けられた。
「クリスマスは彼氏とデートなんじゃねーの?」
「用事できたって」
「清川、もう振られたのか」
人の不幸が楽しいのかニヤニヤしている。研究室にいた他の後輩達にも聞き耳たてられてる気がする。
「違うよ、親戚が危篤なんだって」
「ほんとかあ~?清川はセカンドで、本命彼女がいたりしてな」
「うるさいなっ!!集中できないから黙ってて」
その後も、先輩達からもからかわれるし、先生にも心配されるし、何だか疲れて昼下がりにはもう帰る支度をした。附論は全然進まなかった。
外に出ると、空は雲もなく晴れ渡っていて、風がとても冷たい。今朝テレビで見た天気予報によると、今日の最高気温は11度。夜には2度まで下がってしまう。
2度って冷蔵庫(5度)より寒いじゃん!チルド室の温度じゃん!!
大寒波でも来ない限り冬でも比較的温暖な「晴れの国おかやま」県南部出身の私には、底冷えする京都の寒さは苦手だった。ぷるぷる震えながら自転車置き場へ行き、手袋を出そうとして、どこかに落としたことに気づいた。
手袋無しで自転車とか凍えるわ!!
半ば自棄になってきた私は、もう自転車は置いてバスに乗って、飲んで帰ることにした。
ひとりでチキンをむさぼり食ってやろうかとも思ったが、胃もたれしそうなのでやめた。
街はカップルだらけで、キラキラ眩しい。正直言って羨ましい。私も宮燈さんに会いたい。
十二月は春の人事異動が動き出すタイミングだし、人事考査もあって忙しいらしく、この一ヶ月、一度も会えてない。だから余計に、今日を楽しみにしていたのに。
会いたい。
仕事の都合だったら私が東京へ行けばいいけど、ご親戚が危篤って時に押し掛けても大迷惑だろう。宮燈さんが結婚している事は、まだ伏せてあるから私がいくのもおかしいし。
会いたいのに、待つ事しか出来ないなんて辛い。
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