わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
48. 庭_1
早朝、私が起きた時、宮燈さんはまだ眠っていた。私の夫は今日も綺麗な顔をしているなあと見ていた。もしや現世の弥勒菩薩なのでは……と考えていたら、宮燈さんがぱっちり目を開けた。
うお、開眼した!
「うわあ、おはようございます!」
「……おはよう。何をそんなに驚いた顔をしている?」
「今ちょっと悟りの境地が垣間見えてました」
「意味がわからない……」
宮燈さんはそう言いながら私の頬にキスをして、首に吸い付いて痕をつける。何も着てないから、肌がくっつくと恥ずかしいし、もっと触りたくてうずうずしてくる。
「"されること"にまだ慣れてないのに"すること"を覚えたいのか?」
「ん、何ですか、そのジャンル分け」
「されるのも悪くないが、さすがにここではやめておこう」
「今更?」
「いや……せっかくだから時間のある時にじっくりして欲しい」
なんかいま怖い事を言われた気がする。再来週、式場での衣装合わせがあるから、宮燈さんが京都に来てくれる。何をさせられるか分かんないけど、それまでに予習しておこうと思っていた。予備知識無しで挑むのは恐ろしい。婚姻届を出した日だって、私の知らない事をたくさん試されて死にそうになったし。
そんなことを考えていたら、腕を引かれてキスされた。軽いキスだったのに、体の芯が熱くなるのを感じていた。やっぱり私の身体はどこかおかしい。
「はじめて……」
「どうしました?」
「初めて仕事に行きたくないと思ってる」
「……行かなきゃだめですよ、橘部長」
私が笑うと、宮燈さんは無表情のまま私の腰を抱えて自分の上に乗せた。もう濡れてしまっているそこが触れて恥ずかしい。耐えられなくて腰を揺らすと、宮燈さんが少しだけ笑った。こんな淫らに笑うのは初めて見るかもしれない。
「絶対に声を出すなよ」
起きたばかりだし体はあちこち痛いのに、また求めてしまう。
仕事なんか行かなくていいのに。いつまでも二人きりでこうしていたいのに。
ぎゅっと抱き締めてもらえてうれしかった。
体を離してから私は言った。
「私、いつか、宮燈さんの赤ちゃん産みたいです」
私の言葉に、夫が目を見開いた。表情筋は動いてないのに、頬に朱が差すからびっくりした。それがおかしくて、つい笑ってると宮燈さんは顔を背けた。
「その時は、私も育児休暇を取るから」
それだけ呟いて宮燈さんはバスルームへ行ってしまう。残された私は嬉しくて恥ずかしくて、枕に顔をうずめてしばらく悶絶していた……。
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