わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
44. 橘部長に閉じ込められる_2
「君に何度電話しても繋がらないから、母に連絡をとった。だから、君の熱が下がっていたことは知っていた。だが、それを何故私には言わないのかと苛立った。それで定時後すぐに新幹線に乗った」
「お母様から聞いてたんですね……」
「君の顔を見たらすぐ帰ろうと思っていた。翌日は朝に会議の予定もあったから」
「忙しいのに、来てくれてありがとうございました」
私を見下ろしている宮燈さんは無表情だった。怖い。いつも通りなのに、宮燈さんがこんなに綺麗で怖いの初めてだ。
宮燈さんはまた私を抱えて、ぽいっとベッドに下ろした。ジャケットを脱いで、ネクタイを解き、縮こまってベッドにうずくまる私の横に来るから、怖くてますます小さくなった。
「何故、私を忘れていた?」
「ごめんなさい、うっかりです」
「誰にでも間違いはある。特に君は間が抜けているし」
「うう、それ何回も言われている気がします」
「……怒ったよ、とても」
橘部長は私が着ているルームウエアを脱がせながら言った。
「あの日は『私を忘れるなんて許さない』と思いながら帰った」
ひええと思っていたらキスされた。遠慮もなにもないキスだった。
「この階は、私しか宿泊していない。でも、いつ誰が廊下を通るかわからない。だから声を出すな」
「……はい」
声を出さないように、なんて出来るのかな。心配していたら、またキスされて、鎖骨の下をきつく吸われた。ちりっとした痛みを感じて小さく悲鳴をあげた。
「痛……な、に?」
「痕を」
「……あと?」
「そばにいたら忘れないように毎日刻み込むのに。こうして」
今度は腕を吸われた。また少し痛い。見ると鬱血してるから、ああこれがキスマークかあと思っていた。わざわざ他人の身体に痣をつけるなんて酷い、意味わかんないって思ってたけど、自分がされて初めてわかった。
目に見える形で、印をつけておきたいんだ。
これを見て私は宮燈さんに縛られて、宮燈さんは独占欲が満たされて安心するんだろう。
結婚してからも「私の事だけ考えて、私だけを見て欲しい」と繰り返し言われていた。すぐ考え事をしてしまう私に言い聞かせてるんだろうなあと思っていた。でも、それだけじゃなくて、異性も家族も友達も、全部含めて「自分だけ見て欲しい」だったのか。
「ごめんなさい、もう連絡忘れないから……」
「当たり前だ。次は絶対許さない」
あちこち触れられて、背中も脚にもキスマークをつけられて何だか全身が痛い。
太腿とか嫌だったけど、宮燈さんは私が痛がってるのを悦んでいた。恥ずかしいけど、私の体で宮燈さんの指と舌が触れてない部分はもうない。
我慢できなくなった私がお願いすると、宮燈さんは無表情のまま体を起こした。一瞬笑った気がした。
「お仕置き。そのままで待ってろ」
そう言い残してシャワーを浴びに行ってしまった。
え、ここで放置……? 酷い!!! 鬼畜!!!
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