わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

ゆきづき花

幕間 桜さんの彼氏_1

なっちゃん視点です




 土曜日はいつものごとく、昼間から家族連れなどで寿司屋の店内は賑わっていた。遅い昼休憩のために休憩室へ行くと、塩見さんが椅子を二つ占領して寝転んでいた。

「さとちゃんお疲れ~」

 佐藤夏海という名前から、皆から「なっちゃん」と呼ばれているが、この人は名字で呼ぶ。
お疲れ様でーすと返して、ロッカーのバッグからスマホを出そうとしていると、桜さんも休憩室に来た。

「あー!桜ちゃん~お疲れ~!」

 塩見さんがへらへらと笑っている。分かりやすい。塩見さんは、桜さんだけは名前で呼んでいる。金が無くなるとヒモのような生活をするダメ人間のくせに、桜さんにだけはやたらとお小遣いをあげたり、ジュースを奢ってやったりと、大変分かりやすい。

「久しぶりやん、桜ちゃん。最近全然シフト被らへんなあ」
「私、週5から週2に減らしてもらったんですよ」
「え?!そうなんや。シフト表見てへんかったわ」

 自称パチプロだから、ここのアルバイトはどうでもいいんだろうな、と呆れつつ、私も補足説明をしてあげた。

「そやさかい、新人さん二人入るやん?夏休みいっぱいで、桜さん、辞める予定ですし」
「ほんまに?」

 急に塩見さんが真剣な顔になった。びっくりした。この人、本当に桜さんが好きなんだ。

「卒論準備に本腰入れたいんです」
「仕送りあらへんのやろ、大丈夫なんか?」

 お前こそ貯金ねーだろ、26歳にもなって人生設計大丈夫なのかよと心の中でつっこみつつ、そこも私が補足した。

「大丈夫ですよね~!彼氏さんがお金持ちやさかい!」
「え……何?彼氏出来たって、噂、ほんまなん?」

 桜さんは言葉を濁して笑っていた。

 先日、突然桜さんから「相談したいからうちに来て欲しい」と言われて、お邪魔してびっくりした。なんでも彼氏さんのお母さんが大量に服を買ってくれたが、整理しきれなくて困っていたらしい。可愛い系もお洒落系もスポーツ系も揃ってて、サイズはぴったり。色違いもあって、あちこちのお店で「ここからここまで全部頂戴」って言ったんじゃないかってくらいにたくさんあった。

「ごめんね、いつも頼ってばっかりで。この中で、どれを残したらいいかなあ?」

 私なりに考えて、桜さんに似合いそうな服をチョイスして、半分位の量に減らした。残りは実家に送って、体型が似ている妹さんに着てもらうらしい。トップスはサイズが合わなかったが、スカートでいいのがあったので、私も何着かもらってしまった。
 後日、お返しにと、衝動買いして使ってない新品のコスメをあげたので、物凄く喜ばれた。


「わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く