わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

ゆきづき花

27. 橘部長と喧嘩しながら



 バスルームは意外と狭くて、お湯をためている間に、浴槽の隣のシャワーブースで髪を洗った。私がトリートメントをなじませてると、先に洗い終わっていた橘部長がじっとこっちを見ていた。

「ほんとに恥ずかしいから見ないでください!」
「綺麗だ」
「はい?」

 不意に顔を近づけてキスされた。

「桜はとても、綺麗だ」

 のぼせたかな、と思うくらいに頭がくらくらした。
 何この状況。
 逆!逆!
 いつもは私が橘部長を観察してるのに、何故かずっと見られている。
 シャワーの細かな水滴が私の全身を刺激していた。
 体を洗ってる時もずっと見られていて、恥ずかしいのを突き抜けて、背伸びして私の方からキスをした。

 腰を抱き寄せられて肌が触れ合う。初めての時にはあんなに戸惑ってたキスにも、ちゃんと応じられるようになった。

「ちゅーするの気持ちいいです」

 "キスで腰が砕ける"とか、"力が入らなくなる"とか、信じられなかった。でも今は、口は性感帯って本当なんだなと分かる。
 舌を絡ませて、吸われたり、私からも吸ったりしてると、恥ずかしいくらいに腰が揺れてくる。
口の中を犯されて、歯列も上顎も優しく舐められてると口の端から唾液がこぼれた。





「みやびさんのばかぁ……へんたいっ!」

 結局、お風呂の中でも色んな事をされて、本当にのぼせて倒れそうになった。先にあがらせてもらってソファに寝転ぶ。
部屋に戻ってきた橘部長は、ルームサービスを頼んでいた。


 ルームサービスって贅沢だなぁと思いつつ、早めの夕飯を食べる。もう寝たいと思って、部屋のクローゼットから着替えを出していると、橘部長にうしろから抱き締められた。

「だめです、私もう眠い……」
「ちゃんとベッドで抱きたい」
「無理。眠いです。ベッドがいいなら、何でさっきお風呂であんなことしたんですか!」
「誘ったのは君だ」

「人のせいにしないでください! だめって言ったじゃないですか!」

 腕から逃げて、振り返って私が怒ると、橘部長が言った。

「……そんなに嫌だったか……?」

 無表情だったが、しゅんとしているのが分かる。急にしおらしくしないで欲しい。

「嫌ではなかったです……。恥ずかしかったけど、むしろ凄かったというか、良かったというか……」


 私がそう呟いたせいで、勿論ベッドでも散々な目に合わされました。


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