ゴット・オブ・ロゴス

神港 零

ショッピングモール

「結月に頼まれた物はすべて買えたな。後は俺の冬服か」
ショッピングモールに寄って、夕ご飯の買い出しが終わり、俺はどのような服を買うか、決めかねていた。
「(スサノオ、どんな服がいいと思う?)」
「(主殿はイケメンの部類だし、スタイル抜群だからなんでも似合うと思うぞ)」
「(そうかな?)」
匠の気の抜けた返事に対して、スサノオはため息を吐きながら熱弁した。
「(主殿……..恐らく世の女性、全員に「主殿がイケメンか?」と聞いたら万丈一致でイケメンと答えると思うぞ。それによく考えて見よ、結月殿があんなに美少女なのに血が繋がった兄が顔が整ってないわけが無い)」
「(…………そうかもしれないね)」
「(主殿はもう少し自分を過大評価するべきだ)」
匠は自分がイケメンと言われてもピンと来ないでいる。
自分にとってイケメンと言えば、女の子に何度も告白されたことがあって、男友達が多いイメージで俺とは真逆だと思っている。
でも、スサノオがここまで言い切っているんだから冗談半分で信じるか。
それよりも服、買わないとな。あの文面のから買って来なかったら夕飯抜きになりそうで怖いな。
いろいろな服屋を見て周りながら歩いていると、不意に怒鳴り声がショッピングモールに響き渡った。
「いつまで待たせるのよ?」
「申し訳ございません」
「謝って済む問題じゃないのよ!こっちは小一時間待っているのよ!」
「うちの馬鹿が本当にすいません」
「あの………薫さん。私は気にしないのでその辺で勘弁してはくれませんか?」
「紗夜さん!甘やかしちゃダメよ!相手が寝坊をするのがいけないだから!」
「そ、そうですが………」
「それに寝坊した訳は徹夜でゲームをしたからっていうし、本人から未だに謝罪の言葉がない………これを怒らずにどうすればいいんですか!……それに比べて、紗夜さんは偉いよね。今ではすっかり有名になっちゃったのに、ちゃんとしてて………遅れてくるクソ野郎に見習わせてやりたいわ」
「そ、そうですか…………」
怒鳴り声の方に視線を向けると、白いワイシャツに身を包んだ女性がひたすらに頭を下げているスーツの男性に怒鳴っていた。
その後ろでは、緩いウェーブのかかった黒髪の女の子が遠目からでも優れた容姿だと分かる女の子が女性を宥めていた。
よく見ると、その女性はカメラを持っており、その周辺にはいろいろな機材のようなものがたくさん並べられている。
何かの撮影だろうか?
まぁ、このショッピングモールはテレビで何度も取り上げられるぐらい有名だし、有名人がここでドラマの撮影しても驚きはしない。
実際、周囲には一般の人々がたくさん集まっており、俺が思っている以上にすごい撮影なんだと思う。
家にはテレビはあるがあまり見ない俺は有名人のことをほとんど知らないわけで、あの子のことも全く知らない
「まぁ、俺に関係ないけどね。早く服、探そう」
そう言って、俺はその撮影現場を後にした。
「(はぁ、主殿。あの子は最近、結月殿が話していた小湊紗夜だぞ)」
「(そうなのか?)」
俺は興味無さげに返答する。
「(そうだ。というか少しぐらい興味を持て!)」
スサノオがそういうので足を止めて撮影現場の方を見た。
「でも、アタシにもスケジュールってモノがあるのよ。だから、そちらには悪いけど、今回は紗夜さんだけで撮影らせてもらうわ」
「そ、そんな」
「そんなじゃないでしょ!プロなんだから、そこはしっかりしなさい!別に今後、そちらのモデルを一人も使わないとは言ってる訳じゃないのよ?まぁ、今回遅れてくる奴は二度と使わないけど」
「今後、気をつけます」
「とはいえ、困ったわ。今日の構図としては、紗夜さんと男性モデルを使って、今時のカップルを演出してもらおうかと思ってたんだけど…………しょうがないか、この際だから
ら、一般男性を使うのもありかもしれないわね。服のサイズはあるでしょ?」
「はい、一応揃えてます!」
「よし、なら……」
その時、目が合ってしまった。
「おーい!そこの君ぃ!」
俺は急いで目を逸らす。
「今、目を逸らした君!ちょっといいかしら?」
「は、はい」
女性はまじまじと俺の方を見て固まっていた。
それは女性だけではなく、他のスタッフらしき人やスサノオが言っていた小湊紗夜さんも俺を見て固まった。
周りを見渡すと他の人たちは俺の事を遠巻きに眺めるような位置に陣取っている。………なんで?
相手が固まっている理由は分からないが、どうやら俺に用があるのは間違えない。
俺は相手の方を再び向かった。
「な、なんでしょうか?」
今、1番目立っている女性にそう聞くと、なぜか女性の背景に雷が落ちたかのようなイメージが見えた。え、なにこれ?
今度は俺が驚きで固まっていると、急に俺の両手をガシッと掴んできた。
「君!撮影に協力してくれない!?」
「…………………え?」
俺はただただ、呆然とすることしか出来なかった。

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