ゴット・オブ・ロゴス

神港 零

悪魔の脅威

「間に合えよ!」
たくみは全速力で悪魔の気配がする方に向かっている。
「見えてきた。誰かが悪魔に襲われている」
たくみは遠目から襲われている人物に確認する。その人物はたくみが知っている人だ。
(もしかして、姫野さんは!) 
悪魔を見て怯えている巫恋に匠は驚くが、すぐ平常心を取り戻し、次に悪魔の方を見た。
「(主殿、早くあの小娘を助けるぞ)」
「(分かっている)」
『神憑り』
たくみは神憑りを使って悪魔と巫恋みこの間に割って入った。
たくみは泣きそうな巫恋みこに声をかけた。
「大丈夫だよ。姫野ひめのさん、後は任せて」
神楽坂かぐらざかくん……」
巫恋みこが泣きながらたくみを呼んだ。
たくみ巫恋みこから目線を外し、悪魔を睨みつける。
「チッ、お、お前は今朝の使徒か。また俺の邪魔者をする気か!?」
そう言って悪魔は舌打ちをしてたくみから距離を置く。
「もしかしてお前、今朝の悪魔か?なんか姿が違うように見えるのだが…………」
「その通りだ。俺は、ベリアル様の魔力を貰い、生めれ変わった。これからは俺の事をこう呼ベ。コカビエル、と」
「カビみたいな名前だな」
「なんだと!?」
(主殿、油断はするなよ。コカビエルと言う名前はたしかに変な名前だが、奴は旧約聖書偽典『エノク書1』に現れる堕天使と同じ名前を名乗った。聖書ではコカビエルはそこそこ強いから奴もコカビエルの名前を名乗ったからにはそこそこ強くなったんだろう)
「そこそこって微妙だな。でもありがとう」
スサノオが忠告をしてくれたので、俺は素直に声を出してお礼を言う。
確かに奴の身体から膨大な魔力を感じる。たくみは空間から天叢雲剣あめのむらくものつるぎを取り出して臨戦態勢を取ってわざと挑発する事を言ってみる。
「でも、コイツなんで攻撃して来ないんだろう。俺はこんなに隙だらけなのに………………馬鹿なのかな?」
「テメェ、何度、俺をバカにすれば気が済むのだ!?」
沸点が低いコカビエルは俺の挑発にまんまと乗ってしまい、襲いかかってきた。
俺は鞘に刀を帯刀し、居合抜刀術の構えを取り、相手が自分の間合いに入るのをじっと待つ。
三……ニ……一………今だ。
奴の鋭い爪が届きそうな時、俺は鞘に帯刀してた刀を思いっきり抜き放ち強烈な一撃を放つ。
『居合抜刀術  抜打先之先ぬきうちせんのせん
匠の剣先はコカビエルの手に当たり、攻撃を受け流した。
こ、こいつ、今朝よりも頑丈になっているな。
確か、今朝はこの程度の攻撃で腕が豆腐のように切れたからな。
そう簡単には倒せないか。
俺は攻撃を受け流され、隙を出しているコカビエルにすぐ刀を切り返して追撃する。
しかし、コカビエルは翼を広げて、空へと逃げ込んで俺の刃を躱された。
「コイツ、オレの攻撃をあんな至近距離で受け流した挙句、刀を切り返し…………そんな事凄い反射速度なければ出来なくないが………今朝の戦いでは本気を出していなかったということか?」
「それはどうかな?」
数秒間、コカビエルは考えるような仕草をしたがすぐに俺の方を向いて質問をした。
俺はその問いに対してはぐらかすように言う。
その回答に満足しなかったのか、コカビエルは少し顔を強ばらせ、俺の方を睨む。
「ならば本気になる前に倒すべきだ……」
コカビエルは未知で不確定要素の俺を見て、自分たちの邪魔になるだろう俺を最前に倒そうとしているのだろう。
だが、俺はコカビエルに対して強気の発言を楽しそうな言う。
「そう簡単には倒せるほど弱くないぞ」
悪魔は匠のその態度が気に食わなかったのか怒りを露わにして襲いかかってきた。
悪魔の爪は匠の首に目がけて腕を伸ばし、鋭い爪で串刺しにしようとしてきた。
神楽坂かぐらざかくん!」
次こそはたくみが殺されると思ったのか巫恋みこが叫んだ。
しかし、匠は余裕の笑みを浮かべた。
その瞬間、悪魔の片腕が身体から離れた。
「この程度か」
「グェェ。お前、何をした!」
片腕を失ってたくみから距離を置いた悪魔が聞いてくる。
「ただ、腕を斬っただけだ」
「ふざけるなぁ!確かに俺はお前と間合い詰めた。しかし、お前は俺が間合いに入っても一切動いていなかったぞ!いつの間に腕を斬ったんだ!?」
悪魔は声を大にして叫んだ。
巫恋も匠が無傷なのに攻撃したコカビエルが腕を失っている状況が理解できなくてポカーンとしている。
「馬鹿か、お前は。普通に斬っただけだぞ」
「そんなわけ………」
「だーかーら、お前の攻撃が当たる前に斬ったって言っているの」
「………………っ」
コカビエルはスサノオの言葉の意味を理解し、息を飲む。
コイツ………もしかして俺の剣撃が見えなかったのか?
あのベリアルから魔力を貰ったって言ってたけど対したことは無いな。
俺は少し落胆してしまい、俺は憐れむようにコカビエルを見てしまった。
早くトドメを刺して帰ろう。
俺は気持ちを切り替え、悪魔の方を睨みつけた。
「さて、とトドメをさしますか」
匠のその言葉に悪魔は言葉も出ないほどに恐怖な表情を浮かべた。
悪魔に近づき、匠は天叢雲剣あめのむらくものつるぎを振りかざそうとする。
「ただで死んでたまるか」
悪魔はそう吐き捨てて猛スピードで巫恋みこの方に向かった。
「えっ、えっ、えっ」
巫恋みこはいきなりのことで動けない。
コカビエルは匠に勝てないと判断して匠の弱点であろう巫恋を狙ったんだろう。
しかし、コカビエルの攻撃が巫恋に届く直前、俺は刀に神力を込めて、コカビエルの首を確実に斬った。
『卜伝流  一の太刀』
生き物は全て首を狩れば活動停止になる。それは悪魔も例外ではなくて……………。
首を斬られた悪魔は塵となって消えてここに
あんな化け物が居たなんて信じられないほど静かになった。
「大丈夫?姫野さん」
「あ…あ…、うん…………」
何かショックを受けたような顔をしている巫恋に手を差し伸べて立たせる。
すると、次は猛烈なやな気配がした。
「へぇ、雑魚とはいえあんなに簡単に倒せるなんてな。やはりお前は最高だ」
「そんな事はないぞ。ベリアル」
俺は空中に浮かんでいる奴にそう返答した。
今の俺ではベリアルには勝てない。ここで戦うのは得策ではないだろうし、ベリアルも敵意を感じない。
少し巫恋の方に目を向けると顔が青ざめている。やはり、悪魔が見えるのだな。
それよりも奴に聞きたいことがある。
「貴様………何を企んでいる?」
「企んでいるってなんだ?」
「ここ最近、この武蔵の地で悪魔が奇妙な真似をしている。それは貴様の差し金だろ………」
俺は惚けるベリアルに対して少し怒り感じたが平常心を保って言った。そんな俺を見てベリアルはにやにやしながらしていた。
「それはどうだろうな?」
「それでも何かは知ってそうだな」
俺は刀を構えて、戦闘態勢を取る。
「俺もお前と殺りあいてぇ…………が、お生憎と、今はお前と遊んでいる暇はない」
そう呟いてベリアルはこの場から去ろうとする。その意図に気づいた俺はすぐにベリアルに斬り掛かる。
しかし、ベリアルは霧状になりこの場から消えた。
「ちっ、逃げられたか…………」
相変わらず逃げ足が早い奴なこと…………。
あっ!それよりも姫野さんだ。怪我とかしていないかな?
匠はすぐに巫恋の方を向いた。
うん…………見た感じは外傷はないし、大丈夫そうだ。
俺は真剣な眼差しで巫恋の方を向いて口を開いた。
「姫野さん…………ここで見た事はどうか内密で頼む。誰にも喋らないでくれ」
「うん………わ、わ、わ、分かったよ………こ、こんな事を喋っても誰も信じられないと思うし………………」
巫恋は少し声を震えさせながら返答した。
「それにしても悪魔を見て、俺たち以外でそこまで取り乱さない人初めて見たよ」
「お、俺たち以外?それに神楽坂くんって何者なの?あの化け物は何?」
巫恋は悪魔が居なくなったことにより、緊張感がなくなったのか、早口で今、疑問に思った事をいっぺんに質問してきた。
それに対して俺は困惑する。
『どうしよう………スサノオ…』
『主殿、この小娘は一応こっち側の人間だぞ。今、あった出来事の事を話してもいいんじゃないか』
『そうだね。ありがとう』
「えーと、何から話した方がいいかな?落ち着いて話せる場所は……………あそこの喫茶店に寄ろう。時間、大丈夫?」
「あっ、うん!」
俺は巫恋の期待の眼差しを受けて落ち着いて話せる場所として喫茶店に向かった。

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