家庭訪問は恋のはじまり【完】

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第95話 瀬崎幸人編 長男 嘉人

みんなが先生を囲んで紙芝居を読んでもらっている時も、みんなでお絵かきをしている時も、みんなで歌を歌っている時も、嘉人は立ち歩いている。

先生も全く注意する事なく、嘉人のやりたいようにやらせている。

なんだろう?

俺は気になって、時間を見つけては、嘉人の保育園での様子を見るようになった。

そうして、よく分からないまま、嘉人は小学生になる。

ゴールデンウィーク直前、家庭訪問があった夜、妻が憤慨して言った。

「嘉人の担任、最低!
 嘉人が障害者だっていうのよ。
 ADHDとかって障害があるから、病院に行けって。
 嘉人が障害者な訳ないじゃん!」

俺は、その夜、すぐにADHDについて調べた。

嘉人の落ち着きのなさは、その特徴に当てはまる事ばかりだ。

連休明け、俺は学校に電話をした。

嘉人の事を相談しようと学校を訪問する。

そこで出会ったのが、嘉人の担任、神山夕凪先生だった。

とても丁寧に一生懸命説明してくれるその姿は、とても好感が持てた。

話も明瞭で分かりやすい。

少なくとも、妻が憤慨する理由はどこにもない。

病院は、予約が必要ですぐには見てもらえないと申し訳なさそうに説明する。

病院が混んでるのは、彼女のせいじゃないのに……

素直で一生懸命で優しくて……

俺はこんな女性と結婚していたら、幸せになれたんだろうか。

そんな事を思いながら、学校を後にした。



病院の予約を取り、妻にも俺から改めて説明する。

だが、妻は納得しない。

嘉人ができない事、嘉人が苦手な事は、妻も同じように苦手な事だった。

ネットの自己診断サイトを見ると、嘉人だけでなく、妻もADHDの可能性がある事になる。

彼女はそれを認めたくないのかもしれない。

その後、もともと冷え切っていた俺たちの関係は、さらに険悪なものとなった。

怒った妻は、もともと苦手だった家事の一切を放り出し、子育ても放棄した。

寝室も1人別の部屋に移動し、嘉人の宿題も連絡帳も見なくなった。

そんな中、嘉人の診断が下りた。

夕凪先生の指摘通り、ADHDだった。

しかも、妻もその可能性が高いとのこと。


俺は、この先の嘉人の教育をどうすべきか悩んでいた。

ADHDの妻に任せて大丈夫なのだろうか。

現に、今も家事を放り出している。


そんな時、夕凪先生から電話をもらった。

嘉人が何かやらかしたのかと思ったら、妻の事だと言う。

何だろう?

分からないながらも、夜、電話し直す約束をし、夕凪先生の連絡先を聞いた。



打ち合わせで遅くなる予定だったが、思ったより早く終わり、夕凪先生に電話を入れる。

まだ学校だと言うので、診断書を持って訪問する事にした。

話を聞いて驚いた。

嘉人が虐待されているという。

保育園の時のも、嘉人が転んだだけじゃなかった?

俺は衝撃を受けつつも、それを教えてくれた夕凪先生が気になった。


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