家庭訪問は恋のはじまり【完】
第79話 はじめまして
ある部屋の前で、瀬崎さんが足を止める。
「俺。入るよ」
瀬崎さんが襖を開けると、ご両親らしき2人が座卓の角を挟んで直角に並んで顔を突き合わせている。
「おじいちゃん、おばあちゃん、こんにちは」
嘉人くんは、気持ちのいい挨拶をする。
「あら、よしくん、いらっしゃい」
おばあさんが返事をする。
「父さんも母さんも、ちゃんとお客さんを連れて行くって、連絡しただろ。
なんでこんな所でパズルなんかしてるんだよ」
瀬崎さんが、不満気に言う。
ああ、そうか。パズルをしてたんだ。
「別にわざわざ改まる程の事じゃないじゃない。
これから家族になるんでしょ?
ありのままの姿を見てもらった方がいいと思って」
だからって、パズル?
「ものには限度ってものがあるだろう?
それはあまりにも失礼だよ」
怒る瀬崎さんの横で、私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ」
「夕凪?」
瀬崎さんが私を振り返る。
「あ、ごめんなさい。
  ちょっと微笑ましくて…… 」
私は、その場で膝を折った。
「はじめまして。神山夕凪と申します」
廊下に手をつき、挨拶をする。
「いつも嘉人から聞いてるから、初めてお会いする気がしないわね。
どうぞこちらへ来て、一緒にお喋りしましょ」
そう言っていただいて、私は再び立ち上がり、瀬崎さんに続いて部屋に入った。
座卓を囲むように瀬崎さんと並んで座る。
「父さん、母さん、俺、彼女と結婚しようと思う」
瀬崎さんにそう言ってもらって、胸の中がじんわりと暖かくなる。
「夕凪さんは、本当にこいつでいいんですか?」
お義父さんが初めて口を開いた。
「はい」
「世間は、あなたが思ってるよりずっと厳しいと思いますよ。
意地悪な陰口に晒されて、あなたは生きていけますか?」
それは、もっともな質問だ。
「覚悟しています。
それでも、私は瀬崎さんと嘉人くんと一緒にいたいと思います」
私は顔を上げて答えた。
「夕凪は、俺がどんな事があっても守るよ」
「僕も守る!!
夕凪先生は、僕のお母さんになるの!!」
瀬崎さんだけでなく、嘉人くんまで加勢してくれる。
「あら、よしくん、ママじゃなくてお母さんって呼べるようになったの?」
お義母さんが微笑ましく嘉人くんを眺める。
「うんとね、ママは僕のママでね、夕凪先生はお母さんなんだって」
それを聞いて、お母さんが不思議そうに私を見た。
「あの……
嘉人くんの中のママの座を奪ってしまいなくないんです。
嘉人くんがママと聞いて思い浮かぶ顔はひとつである方がいいと思いまして、私は違う呼称で呼んでもらおうと、先程、お話しました」
もしかして、小賢しいとか思われたかな。
「そうね。
嘉人を気遣ってくださってありがとう。
嘉人、良かったわね。
大好きな夕凪先生がお母さんになってくれて」
「うん!!」
「俺。入るよ」
瀬崎さんが襖を開けると、ご両親らしき2人が座卓の角を挟んで直角に並んで顔を突き合わせている。
「おじいちゃん、おばあちゃん、こんにちは」
嘉人くんは、気持ちのいい挨拶をする。
「あら、よしくん、いらっしゃい」
おばあさんが返事をする。
「父さんも母さんも、ちゃんとお客さんを連れて行くって、連絡しただろ。
なんでこんな所でパズルなんかしてるんだよ」
瀬崎さんが、不満気に言う。
ああ、そうか。パズルをしてたんだ。
「別にわざわざ改まる程の事じゃないじゃない。
これから家族になるんでしょ?
ありのままの姿を見てもらった方がいいと思って」
だからって、パズル?
「ものには限度ってものがあるだろう?
それはあまりにも失礼だよ」
怒る瀬崎さんの横で、私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ」
「夕凪?」
瀬崎さんが私を振り返る。
「あ、ごめんなさい。
  ちょっと微笑ましくて…… 」
私は、その場で膝を折った。
「はじめまして。神山夕凪と申します」
廊下に手をつき、挨拶をする。
「いつも嘉人から聞いてるから、初めてお会いする気がしないわね。
どうぞこちらへ来て、一緒にお喋りしましょ」
そう言っていただいて、私は再び立ち上がり、瀬崎さんに続いて部屋に入った。
座卓を囲むように瀬崎さんと並んで座る。
「父さん、母さん、俺、彼女と結婚しようと思う」
瀬崎さんにそう言ってもらって、胸の中がじんわりと暖かくなる。
「夕凪さんは、本当にこいつでいいんですか?」
お義父さんが初めて口を開いた。
「はい」
「世間は、あなたが思ってるよりずっと厳しいと思いますよ。
意地悪な陰口に晒されて、あなたは生きていけますか?」
それは、もっともな質問だ。
「覚悟しています。
それでも、私は瀬崎さんと嘉人くんと一緒にいたいと思います」
私は顔を上げて答えた。
「夕凪は、俺がどんな事があっても守るよ」
「僕も守る!!
夕凪先生は、僕のお母さんになるの!!」
瀬崎さんだけでなく、嘉人くんまで加勢してくれる。
「あら、よしくん、ママじゃなくてお母さんって呼べるようになったの?」
お義母さんが微笑ましく嘉人くんを眺める。
「うんとね、ママは僕のママでね、夕凪先生はお母さんなんだって」
それを聞いて、お母さんが不思議そうに私を見た。
「あの……
嘉人くんの中のママの座を奪ってしまいなくないんです。
嘉人くんがママと聞いて思い浮かぶ顔はひとつである方がいいと思いまして、私は違う呼称で呼んでもらおうと、先程、お話しました」
もしかして、小賢しいとか思われたかな。
「そうね。
嘉人を気遣ってくださってありがとう。
嘉人、良かったわね。
大好きな夕凪先生がお母さんになってくれて」
「うん!!」
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