家庭訪問は恋のはじまり【完】

くっきぃ♪コミカライズ配信中

第75話 今夜も泊まっていい?

帰宅後、メールを確認した私は、いつも通りの簡単な食事を済ませる。

瀬崎さんは、今日は嘉人くんと食事をしてからうちに来るとの事。

私は食器を片付けると、簡単に掃除をする。

休みの日でもないのに掃除をするなんて、この3年間で初めてかもしれない。

シーツも取り替えて、洗濯機を乾燥まで回す。

機械って便利だなぁ。

そんな事を思っていると、玄関のチャイムが鳴った。

瀬崎さん!!

私は、うきうきしながら、玄関を開ける。

「こんばんは」

私から挨拶をする。

「こんばんは。
 もしかして待っててくれた?」

瀬崎さんが嬉しそうに微笑む。

「うん」

私は、瀬崎さんの背中に腕を回して抱きついた。

瀬崎さんもぎゅっと抱きしめてくれる。

だけど…

「夕凪、上がってもいい?」

瀬崎さんに言われて、初めて気がついた。

まだ、靴も脱いでもらってない。

「もちろん!  どうぞ」

私は、慌てて瀬崎さんから離れた。

「くくっ
 こんなに歓迎してもらえるとは思ってなかった。お邪魔します」

瀬崎さんをダイニングに通して、私はコーヒーを入れる。

2人でまったりとコーヒーを飲みながら、ゆったりとおしゃべりをする。

「夕凪、今日は大丈夫だった?」

瀬崎さんが心配そうに尋ねるけど、何を聞きたいのかさっぱり分からない。

「大丈夫って、何が?」

「いろいろ。
 あんまり眠らせてあげられなかったから、ちゃんと起きられたかな…とか、無理させたかな、体でどこか痛い所とかあるんじゃない  かな…とか」

「ふふっ
 大丈夫だよ。心配してくれてありがと」

私が微笑むと、瀬崎さんはほっとしたように、ふぅ…とひとつ大きく息を吐いた。

「よかった。
 昨日は、自分で自分が止められなくて、夕凪に嫌われたんじゃないかと心配してたんだ」

瀬崎さんが私の手を握る。

「夕凪、今夜も泊まっていい?」

私は嬉しいけど…

「嘉人くんは?
 毎晩お父さんがいなくて、寂しがらない?」

「大丈夫。
 今朝、様子を見に行ったら、少ししょんぼりはしてたけど、暴れたり取り乱したりする程ではなくなってたし、もともと、長期休暇は実家に泊まる事が多かったんだ」

もともと?
それって…

「お母さんがいる時から?」

「うん。
 今、思えば、嘉人が実家に行きたがったのは、あいつの暴力から逃げたかったのかもしれない。
 実家の両親も嘉人に会いたがったし、母親は若くして結婚したから、周りの友人がまだ独身で遊んでるのを羨ましがって、嘉人を預けて、夜遊びを繰り返してた」

そんな事って…

「そんなの嘉人くんが可哀想」

「じゃあ、夕凪ならどうする?」

瀬崎さんは、興味深げに私に尋ねる。

「祖父母が泊まりにおいでって言ってきたら、
  夕凪ならどうする?」

どうしよう。

「嘉人くんが行きたいって言うなら、週に1度くらい行かせるかな。
 でも、それ以上はちょっと考えちゃう。
 だって、毎日遊びに行ける距離でしょ?
 昼間、遊びに行けばいいじゃない」

美晴だってそう。

毎日、祖父母と会って喋ったり遊んだりするけど、泊まるのは年に数回。

「晩ご飯をお呼ばれして帰ってくるとか、みんなで一緒に出掛けるとか、そんなに毎日お泊まりに行かなくても、おじいちゃん、おばあちゃんと仲良くする方法はいくらでもあると思うんだけど、違うかな?
 これって、私が実際に子育てしてないから、そう思うのかな」

「夕凪の意見はもっともだと思う。
 結婚したら、嘉人とも相談してどうするか考えよう。
 嘉人も家の方が居心地が良ければ、そんなに祖父母のところへ行くって言わなくなるかもしれないし」




コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品