家庭訪問は恋のはじまり【完】
第58話 発覚
嘉人くんのノートを届けた翌週、私は校長先生に呼ばれた。
2時間目が終わったばかりで、宿題を見ようとしている時だった。
校長室に入ると
「どうぞ、おかけください」
と会議用の椅子を勧められた。
なんだろう?
最近は子供たちも大きな問題は起こしてない。
思い当たる事がないまま、私はそこに腰掛けた。
「実は、先程、保護者の方からお電話をいただきましてね」
クレーム?
誰だろう?
「神山先生が、瀬崎嘉人くんのお父さんと不適切な関係であるとおっしゃるんですが、事実ですか?」
っ!!
なんで!?
「いえ、そのような事は… 」
私は力弱く否定する。
「その方がおっしゃるには、先週、神山先生が夜、瀬崎さんのお宅へ伺い、1時間を経過しても出てこなかった、という事なんですが、事実ですか?」
校長先生の言葉遣いは穏やかだけど、目は決して笑ってない。
「それは…
嘉人さんが宿題で使うノートを忘れたので届けに行ったんです」
私は説明をする。
「ノートを届けるだけなら、5分もあれば済みますよね?」
「あの、お食事を用意してくださっていたので、断りきれずにご馳走になってました」
「それは不用意な行動でしたね」
「申し訳ありません」
私は深く頭を下げた。
「詳細を教えていただけますか?
何時に伺って、何時に帰ったんですか?」
「確か…6時半頃お邪魔して、7時半過ぎにはお暇したと思います。嘉人くんがそれから8時までに宿題を終わらせると言ってましたから」
私は、先週の事を思い出しながら、答える。
「先週の事は分かりました。では、たびたび瀬崎嘉人くんのお父さんが、神山先生のご自宅を訪問されているというのは、本当ですか?」
それも!?
「あの…
はい、事実です」
私はためらいながらも、正直に認めた。
「ただ、その、想像されているような関係ではなくて、料理を教えていただいてるだけなんです」
それを聞いて、校長は首を傾げる。
「どうして、瀬崎さんに?」
「あの、瀬崎さんは、Accueilというフレンチレストランの社長さんで、以前、厨房にも入っていた事があるそうで、お料理がとても上手なんです。一方、私は、全く料理ができなくて… だから… 」
私は一生懸命説明するけど、これ、ちゃんと理由として成り立ってる?
私は、声が震えないようにする事で精一杯だった。
「分かりました。私は、神山先生を信じますよ。神山先生は、軽々しく保護者とどうこうなる人ではない事を知ってますから。
ただねぇ、神山先生をよく知らない保護者の方がそれを信じてくださるかというと、いささか疑問で…
普通に料理教室に通えば良かったんじゃないかって言われたら、その通りと言うしかない状況なのは、ご自分でもお分かりでしょう?」
「……はい」
おっしゃる通りです。
「3時間目は、三宅先生に1年1組に入ってもらってます。」
三宅先生は、教務主任の女性の先生。
出張や欠勤の際の自習監督によく入ってくださる先生だ。
「神山先生は、とりあえず、状況がはっきりするまで、担任を外れていただきます。
いいですね?」
えっ!?  そんな…
「あの!  本当に何もやましい関係ではないんです。お願いです。担任を続けさせていただけませんか?」
私は懇願したが、それが聞き入れられる事はなかった。
2時間目が終わったばかりで、宿題を見ようとしている時だった。
校長室に入ると
「どうぞ、おかけください」
と会議用の椅子を勧められた。
なんだろう?
最近は子供たちも大きな問題は起こしてない。
思い当たる事がないまま、私はそこに腰掛けた。
「実は、先程、保護者の方からお電話をいただきましてね」
クレーム?
誰だろう?
「神山先生が、瀬崎嘉人くんのお父さんと不適切な関係であるとおっしゃるんですが、事実ですか?」
っ!!
なんで!?
「いえ、そのような事は… 」
私は力弱く否定する。
「その方がおっしゃるには、先週、神山先生が夜、瀬崎さんのお宅へ伺い、1時間を経過しても出てこなかった、という事なんですが、事実ですか?」
校長先生の言葉遣いは穏やかだけど、目は決して笑ってない。
「それは…
嘉人さんが宿題で使うノートを忘れたので届けに行ったんです」
私は説明をする。
「ノートを届けるだけなら、5分もあれば済みますよね?」
「あの、お食事を用意してくださっていたので、断りきれずにご馳走になってました」
「それは不用意な行動でしたね」
「申し訳ありません」
私は深く頭を下げた。
「詳細を教えていただけますか?
何時に伺って、何時に帰ったんですか?」
「確か…6時半頃お邪魔して、7時半過ぎにはお暇したと思います。嘉人くんがそれから8時までに宿題を終わらせると言ってましたから」
私は、先週の事を思い出しながら、答える。
「先週の事は分かりました。では、たびたび瀬崎嘉人くんのお父さんが、神山先生のご自宅を訪問されているというのは、本当ですか?」
それも!?
「あの…
はい、事実です」
私はためらいながらも、正直に認めた。
「ただ、その、想像されているような関係ではなくて、料理を教えていただいてるだけなんです」
それを聞いて、校長は首を傾げる。
「どうして、瀬崎さんに?」
「あの、瀬崎さんは、Accueilというフレンチレストランの社長さんで、以前、厨房にも入っていた事があるそうで、お料理がとても上手なんです。一方、私は、全く料理ができなくて… だから… 」
私は一生懸命説明するけど、これ、ちゃんと理由として成り立ってる?
私は、声が震えないようにする事で精一杯だった。
「分かりました。私は、神山先生を信じますよ。神山先生は、軽々しく保護者とどうこうなる人ではない事を知ってますから。
ただねぇ、神山先生をよく知らない保護者の方がそれを信じてくださるかというと、いささか疑問で…
普通に料理教室に通えば良かったんじゃないかって言われたら、その通りと言うしかない状況なのは、ご自分でもお分かりでしょう?」
「……はい」
おっしゃる通りです。
「3時間目は、三宅先生に1年1組に入ってもらってます。」
三宅先生は、教務主任の女性の先生。
出張や欠勤の際の自習監督によく入ってくださる先生だ。
「神山先生は、とりあえず、状況がはっきりするまで、担任を外れていただきます。
いいですね?」
えっ!?  そんな…
「あの!  本当に何もやましい関係ではないんです。お願いです。担任を続けさせていただけませんか?」
私は懇願したが、それが聞き入れられる事はなかった。
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