家庭訪問は恋のはじまり【完】
第53話 ストーカー?
しばらくそうして抱き合った後、瀬崎さんが言った。
「晩ご飯、作ろう」
「えっ?」
「きっと、たくさんの冬野菜をもらってきたんだろ?
ちゃんと料理して食べよう」
瀬崎さんはそう言うと、エプロンを着けてキッチンに向かう。
私は慌ててその後を追った。
私はたくさんの冬野菜が詰まった野菜室を開け、順に取り出す。
次に、入りきらなくて、そのままにしてあった段ボールも開く。
大根、白菜、水菜、ほうれん草、小松菜、じゃがいも、里芋、人参…
それを見て、瀬崎さんは眼を見張る。
「すごいな。
これは、想像以上だ」
「でしょ?
こんなにいらないって言うんだけど、勝手に車に乗せられるの」
「これだけ新鮮なら、サラダでも食べられるな」
「えっ?」
「くくっ
夕凪は、鍋の材料だと思ってた?」
瀬崎さんが笑う。
「違うの?」
「もちろん、鍋にしてもおいしいし、火を通して食べると嵩も減ってたくさん食べられるからいいんだけど、それじゃ、料理が苦手な夕凪は、食べないまま終わるだろ?
サラダなら切るだけだし、スライサーとか使えば簡単だから、メインのおかずだけ買ってきて、山盛りサラダでもいいんじゃないかな?」
「うん。それなら私でも食べられそう」
「じゃあ、痛みやすい葉物は、食べる分を残して冷凍しちゃおう」
そう言うと、瀬崎さんは洗って使いやすいサイズにカットすると、どんどんフリーザーバッグに入れていく。
あっという間に、野菜室の野菜が半分以下になって、冷凍庫がいっぱいになった。
「コンソメとか麺つゆの中に入れれば汁物ができるから、毎日、たくさん野菜を食べて。じゃ、残りで今日の晩ご飯を作ろうか」
瀬崎さんは、野菜の代わりに冷凍庫から取り出した鶏肉をソテーして、白菜・水菜・人参で彩りも鮮やかなサラダを作ってくれた。
「ん、おいしい!!」
私がひとくち食べてそう言うと、瀬崎さんは嬉しそうに微笑む。
「良かった。また時間がある時に、料理教室しような」
あっ…
料理教室…
「あの、その事なんですけど、武先生に言われたんです。やめた方がいいって」
「は?  なんで、武先生?」
「あの、うちの前を通った時に、瀬崎さんの車が止まってるのを何度か見かけたって。
料理を教えてもらってるって言ったんですけど、そんな言い訳、大人は信じないって言われて。
瀬崎さんの車は目立つから、他の保護者に見られて変な噂にでもなったら、嘉人くんが可愛そうだから、やめなさいって言われたの」
私がそう言うと、瀬崎さんはそわそわ、キョロキョロとし始めた。
「瀬崎さん、どうしたんですか?」
私が不思議に思って尋ねると、瀬崎さんはスマホを取り出した。
すぐにメールが届く。
『何も喋らないで。何か書くものある?
    筆談をしたい』
私は首を傾げながらも、ボールペンと共に不要になったコピー用紙を渡す。
瀬崎さんは、それを受け取り、サラサラっとお世辞にも上手とは言えない字でペンを走らせる。
[ 武先生にストーキングされてないか? ]
はっ!?
私は首を横に振る。
[ このアパートの前の道は、300mくらい先で公園に突き当たる。
途中で曲がる事もできるから、抜けられない訳じゃないけど、普通は公園やその手前の民家に用がなければ入ってこない道だ。
そこを何度も通りかかるなんて、不自然だよ。
夕凪ん家に来たとしか思えない]
っ!!
指摘されて、初めて気づいた。
[ 万が一、盗聴されてるといけないから、筆談にした。
もし、少しでも変わった事があったら、すぐに連絡して]
私は、大きく頷いた。
私たちは、その後も無言で食事をし、瀬崎さんは帰っていった。
翌日、瀬崎さんが手配をしてくれた業者が来て、盗聴器や隠しカメラを探してくれたが、幸いなことに、そういった物は、ひとつも見つからなかった。
よかった。
だけど、本当に武先生がストーカーなの?
そんな事をするようには見えないんだけど。
「晩ご飯、作ろう」
「えっ?」
「きっと、たくさんの冬野菜をもらってきたんだろ?
ちゃんと料理して食べよう」
瀬崎さんはそう言うと、エプロンを着けてキッチンに向かう。
私は慌ててその後を追った。
私はたくさんの冬野菜が詰まった野菜室を開け、順に取り出す。
次に、入りきらなくて、そのままにしてあった段ボールも開く。
大根、白菜、水菜、ほうれん草、小松菜、じゃがいも、里芋、人参…
それを見て、瀬崎さんは眼を見張る。
「すごいな。
これは、想像以上だ」
「でしょ?
こんなにいらないって言うんだけど、勝手に車に乗せられるの」
「これだけ新鮮なら、サラダでも食べられるな」
「えっ?」
「くくっ
夕凪は、鍋の材料だと思ってた?」
瀬崎さんが笑う。
「違うの?」
「もちろん、鍋にしてもおいしいし、火を通して食べると嵩も減ってたくさん食べられるからいいんだけど、それじゃ、料理が苦手な夕凪は、食べないまま終わるだろ?
サラダなら切るだけだし、スライサーとか使えば簡単だから、メインのおかずだけ買ってきて、山盛りサラダでもいいんじゃないかな?」
「うん。それなら私でも食べられそう」
「じゃあ、痛みやすい葉物は、食べる分を残して冷凍しちゃおう」
そう言うと、瀬崎さんは洗って使いやすいサイズにカットすると、どんどんフリーザーバッグに入れていく。
あっという間に、野菜室の野菜が半分以下になって、冷凍庫がいっぱいになった。
「コンソメとか麺つゆの中に入れれば汁物ができるから、毎日、たくさん野菜を食べて。じゃ、残りで今日の晩ご飯を作ろうか」
瀬崎さんは、野菜の代わりに冷凍庫から取り出した鶏肉をソテーして、白菜・水菜・人参で彩りも鮮やかなサラダを作ってくれた。
「ん、おいしい!!」
私がひとくち食べてそう言うと、瀬崎さんは嬉しそうに微笑む。
「良かった。また時間がある時に、料理教室しような」
あっ…
料理教室…
「あの、その事なんですけど、武先生に言われたんです。やめた方がいいって」
「は?  なんで、武先生?」
「あの、うちの前を通った時に、瀬崎さんの車が止まってるのを何度か見かけたって。
料理を教えてもらってるって言ったんですけど、そんな言い訳、大人は信じないって言われて。
瀬崎さんの車は目立つから、他の保護者に見られて変な噂にでもなったら、嘉人くんが可愛そうだから、やめなさいって言われたの」
私がそう言うと、瀬崎さんはそわそわ、キョロキョロとし始めた。
「瀬崎さん、どうしたんですか?」
私が不思議に思って尋ねると、瀬崎さんはスマホを取り出した。
すぐにメールが届く。
『何も喋らないで。何か書くものある?
    筆談をしたい』
私は首を傾げながらも、ボールペンと共に不要になったコピー用紙を渡す。
瀬崎さんは、それを受け取り、サラサラっとお世辞にも上手とは言えない字でペンを走らせる。
[ 武先生にストーキングされてないか? ]
はっ!?
私は首を横に振る。
[ このアパートの前の道は、300mくらい先で公園に突き当たる。
途中で曲がる事もできるから、抜けられない訳じゃないけど、普通は公園やその手前の民家に用がなければ入ってこない道だ。
そこを何度も通りかかるなんて、不自然だよ。
夕凪ん家に来たとしか思えない]
っ!!
指摘されて、初めて気づいた。
[ 万が一、盗聴されてるといけないから、筆談にした。
もし、少しでも変わった事があったら、すぐに連絡して]
私は、大きく頷いた。
私たちは、その後も無言で食事をし、瀬崎さんは帰っていった。
翌日、瀬崎さんが手配をしてくれた業者が来て、盗聴器や隠しカメラを探してくれたが、幸いなことに、そういった物は、ひとつも見つからなかった。
よかった。
だけど、本当に武先生がストーカーなの?
そんな事をするようには見えないんだけど。
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