家庭訪問は恋のはじまり【完】

くっきぃ♪コミカライズ配信中

第46話 お正月

翌朝。

「ゆうちゃん、あけましておめでとう!」

新年最初の朝を美晴のモーニングコールで目覚める。

「んー、みぃちゃん、あけましておめでとう。
 今、何時?」

「んーとねぇ、8時!」

「お?  みぃちゃん、時計、読めるんだ?」

「読めるよ〜
 みぃちゃん、1年生だもん」

「そっかぁ。
 じゃあ、今からゆうちゃんは、30分後に
 朝ご飯を食べます。
 何時何分に食べるでしょう?」

「8時半!」

「すっごいじゃない。
 じゃあ、ばぁばにそうやって伝えてきて」

「はーい!」

美晴は元気よく階段を駆け下りていく。

ふぅ…

これであと15分寝られる…

私はアラームを15分後にセットして、二度寝を決め込んだ。

私は8時半に家族みんなでおせちとお雑煮をいただき、美晴にお年玉をあげた。

みんなで近所の寺社に初詣に行き、のんびりとお正月特番を見ながら、まったりと過ごす。

そして、間もなく3時半という頃、瀬崎さんからメールが届いた。

『今から出る。
 30分後くらいに着くと思う』

私は2階へ上がり、外出できるように身支度を整える。

20分後、私はテレビの前の家族に声を掛ける。

「ちょっと、コンビニに行ってくる」

「行ってらっしゃい」

母の声が聞こえて終わるはずだった。

なのに…

「あ!  みぃちゃんも行く!」

誰にも相手をしてもらえなくて退屈をしていた美晴が嬉しそうに駆け寄ってきた。

どうしよう!?

「みぃちゃん、コンビニに行くだけだよ?
 寒いから、ここでみんなと待ってて」

私は説得を試みるけど、

「ええ!?
 みぃちゃんも行きたい!
 ねぇ、いいでしょ?」

と聞き分けてはくれない。

「夕凪、散歩がてら、連れてってやってよ。
 今日は友達の家にも行けないし、いとこがいるわけでもないし、退屈なのよ」

と母が嫌味を交えて言う。

はいはい。
私がいつまでも結婚しないから、遊び相手のいとこができないんです。
申し訳ありません。

私は、心の中で母の嫌味に返事をするものの、どうするべきか考えあぐねていた。

美晴を連れていけば、瀬崎さんと会った事を美晴は家族みんなに言うだろう。

その上、美晴が一緒じゃ、そのままついでにドライブという訳にはいかなくなる。

かといって、たかがコンビニに美晴を連れていけない理由も思い浮かばない。

仕方ない。

「じゃあ、みぃちゃん、外は寒いから、暖かくしてきたら、連れてってあげる」

私は諦めて、美晴を連れて行くことにした。

瀬崎さんには、事情を話して謝ろう。

私はコンビニまで、美晴と手を繋いで歩く。

5分ほどでコンビニには着いたが、瀬崎さんの車は駐車場にはない。

私は、店に入り、美晴に話し掛けた。

「みぃちゃん、せっかく来たから、何か食べようか」

私がイートインコーナーを指差すと、美晴は嬉しそうに、「うん!」と返事をした。

2人でレジ前で何を食べるか悩む。

「夏ならソフトクリームなんだけど、今日は寒いもんね。
 何にしようかなぁ」

私が言うと、

「ポテトがいい」

と美晴はショーケースのフライドポテトを指差す。

「ああ、いいね。
 じゃあ、飲み物も買おうか」

美晴は喜んでジュース売り場に向かう。

悩みに悩んで美晴が選んだのは、グレープ味の炭酸飲料。

私はそれを手にレジへ向かい、ポテトとカフェラテを注文した。

程なく、揚げたてのポテトも届き、イートインコーナーで、2人で頬張る。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品