万色を支配する白魔王 ~ステータス極振りどころか全捨てし、スキルに全振りした少女のピーキー無双~
12 アサシンウルフ戦(前)
「静怒……つまり、静かに怒ってるってことなの? めちゃくちゃ厄介そうなの」
つまりそれは、冷静に殺しに来るということである。一番面倒な精神状態だ。
「グルルルル……」
低い唸り声を上げ、アサシンウルフは慎重に間合いを詰めて来る。やはり、厄介だ。
間合いは、戦いにおいてとても重要な要素だ。アサシン……暗殺者の名を冠しているだけあり、それを理解しているらしい。
唸りながら、近づいてくるアサシンウルフ。……まだ……まだだ……もう少し――
「なっ 」
消えた さっきまで、目の前にいたのに一体――いや、スキルか!
よくよく見れば……いる。透明になっているようで私の目ですら見えないが、単に見えないだけの存在を認識する手段なんていくらでもある。基本的なところでは足跡、少し難しいところでは空気の流れなどだ。
唸り声で分かりそうなものだが、今のアサシンウルフは唸り声を上げていない。そもそも暗殺者には基本的に音を立てる理由なんてなく、さっきまでがおかしかったのだ。
おそらくあれは、私がアサシンとして戦うべき相手かどうか見計っていたのだ。もし、私が愚者を演じていたら、私を舐めて襲ってきたアサシンウルフに対し、有利な状況を築けたのかもしれない。
しかしこの状況に至っては、もうそんなことを考えても意味はない。今の状況で取るべき行動について、考えねばならない。
隠れられていると思っているであろうアサシンウルフに、奇襲を仕掛けるか? AGI値的に、私の間合いに入る前に対処行動を取られそうな気がする。
となると、やはりカウンターだ。アサシンウルフの攻撃を防御して『パリィ』を発生させ、態勢が崩した瞬間に追撃を与える。透明であるためアサシンウルフの動きを正確に読むことは難しいが、そこは直感に頼るしかない。
キョロキョロ周りを見渡すような振りをしながら、しっかり瞳孔はアサシンウルフがいる場所に向ける。……草木が大きく騒めいた瞬間、私は右腕を真横に向かって突き出した。
――『パリィ』――
「ッ 」
嫌な予感がしたので、咄嗟に右手を引き戻す。しかし、少し遅かったらしい。
ある程度の衝撃ともに、視界の端のHPゲージ一割弱減った。ん? 何でそんな中途半端な……ああ、『ジャイアントキリング』のステータスの底上げか。やはり、大きい。
さっきのダメージだが、『パリィ』は間違いなく発動していた。つまりアサシンウルフは、『パリィ』の衝撃を突破し、私にダメージを与えて来たのだろう。
正直、舐めていたと言わざるを得ない。15というレベル差を、しっかりと認識出来ていなかった私のミスだ。
いや、それだけではないか。確かLv:20のラインで、モンスターは異常に強くなるのだ。Lv:20になって職業や種族を得たプレイヤーが、無双できないようにするために。
これは、思っていた以上に強敵だ。せめて、Lvが15あったら――『パリィ』のレベルがもう一つ上だったら、まだ違ったかもしれないが。
『パリィ』の衝撃で攻撃を完全に相殺できない以上、使い道は本来の目的である受け流しのみとなる。幸い、今の交錯で透明状態でもアサシンウルフの全体像を把握出来るようになったため、受け流しもなんとか出来るだろうが、それでも心もとない。
『パリィ』で相手をノックバックが発生させれていた時は、大きな隙に蹴りをかますだけで良かった。しかし受け流しでは、ノックバックほど大きな隙はつくれない。つまり、蹴りを放っても対処されてしまう可能性がある。
……仕方が無い、だろう。出来れば買いたいと思っていたが、そもそも強さで考えれば、買うよりこっちの方がいいのは明白なのだし。
両袖を引っ張る。手を袖の中に入れ、内側から袖口を握りしめる。……要するに、拳を袖の中に入れたのだ。
今まで私は、純白の神衣が手袋を含んでいなかったために、蹴り技を主に使ってきた。しかし、攻撃出来る範囲という点では劣るが、早く出せるという点では、殴りの方が上なのである。
そして何より……私は殴り合いの方が得意だ。
先ほどのカウンターで、アサシンウルフに私が居場所に気づけることはバレているだろう。故に、私はアサシンウルフに向かって拳を構えた。
「……ここからは、こちらも真面目に行かせてもらうの」
「グルルル……」
そして、再度戦いが始まる。
VITとHPの比をどうするべきか……悩ましい。なんかアイデアあったらください。
アサシンウルフ戦は、あと二話続きます。
フォローといいねをよろしくお願いします。いいねは、面白いと思った話だけでいいので。
 
つまりそれは、冷静に殺しに来るということである。一番面倒な精神状態だ。
「グルルルル……」
低い唸り声を上げ、アサシンウルフは慎重に間合いを詰めて来る。やはり、厄介だ。
間合いは、戦いにおいてとても重要な要素だ。アサシン……暗殺者の名を冠しているだけあり、それを理解しているらしい。
唸りながら、近づいてくるアサシンウルフ。……まだ……まだだ……もう少し――
「なっ 」
消えた さっきまで、目の前にいたのに一体――いや、スキルか!
よくよく見れば……いる。透明になっているようで私の目ですら見えないが、単に見えないだけの存在を認識する手段なんていくらでもある。基本的なところでは足跡、少し難しいところでは空気の流れなどだ。
唸り声で分かりそうなものだが、今のアサシンウルフは唸り声を上げていない。そもそも暗殺者には基本的に音を立てる理由なんてなく、さっきまでがおかしかったのだ。
おそらくあれは、私がアサシンとして戦うべき相手かどうか見計っていたのだ。もし、私が愚者を演じていたら、私を舐めて襲ってきたアサシンウルフに対し、有利な状況を築けたのかもしれない。
しかしこの状況に至っては、もうそんなことを考えても意味はない。今の状況で取るべき行動について、考えねばならない。
隠れられていると思っているであろうアサシンウルフに、奇襲を仕掛けるか? AGI値的に、私の間合いに入る前に対処行動を取られそうな気がする。
となると、やはりカウンターだ。アサシンウルフの攻撃を防御して『パリィ』を発生させ、態勢が崩した瞬間に追撃を与える。透明であるためアサシンウルフの動きを正確に読むことは難しいが、そこは直感に頼るしかない。
キョロキョロ周りを見渡すような振りをしながら、しっかり瞳孔はアサシンウルフがいる場所に向ける。……草木が大きく騒めいた瞬間、私は右腕を真横に向かって突き出した。
――『パリィ』――
「ッ 」
嫌な予感がしたので、咄嗟に右手を引き戻す。しかし、少し遅かったらしい。
ある程度の衝撃ともに、視界の端のHPゲージ一割弱減った。ん? 何でそんな中途半端な……ああ、『ジャイアントキリング』のステータスの底上げか。やはり、大きい。
さっきのダメージだが、『パリィ』は間違いなく発動していた。つまりアサシンウルフは、『パリィ』の衝撃を突破し、私にダメージを与えて来たのだろう。
正直、舐めていたと言わざるを得ない。15というレベル差を、しっかりと認識出来ていなかった私のミスだ。
いや、それだけではないか。確かLv:20のラインで、モンスターは異常に強くなるのだ。Lv:20になって職業や種族を得たプレイヤーが、無双できないようにするために。
これは、思っていた以上に強敵だ。せめて、Lvが15あったら――『パリィ』のレベルがもう一つ上だったら、まだ違ったかもしれないが。
『パリィ』の衝撃で攻撃を完全に相殺できない以上、使い道は本来の目的である受け流しのみとなる。幸い、今の交錯で透明状態でもアサシンウルフの全体像を把握出来るようになったため、受け流しもなんとか出来るだろうが、それでも心もとない。
『パリィ』で相手をノックバックが発生させれていた時は、大きな隙に蹴りをかますだけで良かった。しかし受け流しでは、ノックバックほど大きな隙はつくれない。つまり、蹴りを放っても対処されてしまう可能性がある。
……仕方が無い、だろう。出来れば買いたいと思っていたが、そもそも強さで考えれば、買うよりこっちの方がいいのは明白なのだし。
両袖を引っ張る。手を袖の中に入れ、内側から袖口を握りしめる。……要するに、拳を袖の中に入れたのだ。
今まで私は、純白の神衣が手袋を含んでいなかったために、蹴り技を主に使ってきた。しかし、攻撃出来る範囲という点では劣るが、早く出せるという点では、殴りの方が上なのである。
そして何より……私は殴り合いの方が得意だ。
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