アクターズ・ラプソディ

切磋琢磨(ぶたまろ)

第五幕 連続事件(Murder Is Coming)




 「はあぁ………」

 「疲れたの?パツキンくん」

 そりゃあ、そうだろう。3時間もかけて部屋の天井にまで届くほどのダンボールの山を片付けたらなぁ………
 「うん。声が出ないくらい疲れたみたいだね」

 「そういえば、先輩はどのくらい片付けましたか?」

 「私?私はね、大体ダンボール7個くらい」

 「………………え?」

 俺は唖然とした。俺の1/10十分の一にも満たないからだ。結局俺を散々こき使ったことに変わりないじゃないか。
 「先輩、疲れました。」

 「なに?ねぎらいの言葉ほしいの?」

 「はい。ください。俺は先輩よりも相当頑張りましたから。」

 「じゃあ、労いの言葉とハグいる?」

 「言葉でいいって言いましたよね?」

 「じゃあ、はい。お疲れ様でした。」

 「マジで疲れました。それじゃあ、休憩します。」

 「なあ、お前ら、最近、連続事件知ってるか?」

 何かしらの作業を終えたであろう天孥優さんがこの場にいる全員に問いを投げかけた。連続事件?つまり、殺人事件の事だろうか?
 「それって………例の『配信』ですか?」

 そう口を開いたのは赤麻螺先輩だった。配信?それは
 「『るるちゃんの自殺配信』ですか?それって」

 俺にも心当たりがあった。毎週金曜日17:00に人が自殺するところを配信すると言うあの事件だ。
 「ああ、あの事件………そう言えば、今日は金曜日だね。どうせ今日もどの救世主オペラ座も背景を解析しても場所が分かるわけないよ」

 「案内役オペレーター兼解析班であるお前がそんな事言ってどうする!俺は空想科学能力者SFアクターでどうすることもできないんだ。頼む。しっかりやってくれ。」

 天孥優さんは大きな声を出した。その顔は哀しみと怒りが混ざっていた。きっと、何もできないのが辛いんだ。
 「天孥優さん、それは分かってるよ。でもね?私も持てる力全てを使って努力の証を砕かれてるの。無力感を感じても自分の限界はここまでなんだって。割り切らなきゃ心が保たないよ」

 先輩は落ち着いていて一切感情を汲み取ることができない声でそう言った。初日なのに嫌な雰囲気になってしまった。今は15:00だ。残り2時間か………



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