【月が綺麗ですね。】私は先生に、青春全てを捧げて恋をする。

KOHARU

月が綺麗ですね。(48)叶わぬ日

次の日、文化祭当日。
私は朝からクラスの出店の監視をしていた。
そしてお昼過ぎ頃、そろそろお腹が空いたなぁという頃に小川先生が教室にやってきた。
「お疲れ様です」
「お疲れ、昼飯まだでしょ?食べてきて良いよ。あとは閉店まで俺が見てるから。」
「すみません、ありがとうございます」
こんな必要最低限の会話をして、私は教室を後にする。でも、どうしても気になってしまう。
なんで昨日、帰ろうとする私の後ろ姿を先生はじっと眺めていたのか。
通り過ぎた私を、なぜじっと見ていたのか。
聞きたい。でも、聞いちゃいけない。
もし答えを聞いても、きっとその先に道はないから。 
「お疲れ様ですー」
国語科室で休憩していたところに、栗原さんが入ってきた。
「昼まだでしょ、はいこれ」
「良いんですか?」
「うちのクラスの焼きそばに俺が特別アレンジを加えたから、マジで旨いはず」 
そう言われ、その場でパックを開けて私はその焼きそばを一口食べた。
「本当だ!なんでですかすごい美味しい!」
「でしょ!俺の裏技なんだけど、菊池先生にだけ今度秘密に今度教えてあげるよ」
「嬉しいです!ありがとうございます」
「どう?お店は繁盛してる?」
「結構すごいですよ!生徒達もみんな、喜んで気合入ってます!」
「ハハ、それは良かったね!やべっ、俺はそろそろいかなきゃ」
「何かあるんですか?」
「ほら、この学校後夜祭で花火あげるじゃん?
その花火を運んでセッティングして、ってやんなきゃいけないのよ。肉体労働は若手の男が駆り出されるもんよ。」
「そうなんですね、頑張ってください!」
「ありがと。18:00は必ず中庭にいれるようにするから。じゃあね!」
「分かりました!」
そして栗原さんは走って国語科室を出て行ってしまった。

18:00から始まる後夜祭。
そして、みんなでカウントダウンをして数発打ち上げられる花火。
その花火を好きな人と見ると、幸せになれる。そんな噂もあった、懐かしいな。
学生時代、好きな人と花火を見るなんて夢のまた夢の話だった。
でも、この学校の教師になったら先生と一緒にその花火を見て...なんて考えたことない訳がない。
むしろ、今年はたまたまでも良いからそうなって欲しいとも思っていた。
でも、きっとその願いは今年も叶わない。多分、この先もずっと。

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