バッドエンドは全力でぶち壊す!

血迷ったトモ

第40話 アリーヴェデルチ!

「あ、先輩でしたか。では、石田先輩と呼ばせていただきます。自分の事は、テキトーに呼んで下さい。」

「じゃあ、雄貴君て呼ぶね。」

 自己紹介も済ませたところで、気になってた事を聞いてみる。

「ところで石田先輩は、何で上から落ちて来たんですか?」

 当然、この疑問である。一体どんなドジをやらかせば、そんな状況になるのか不思議である。

「それはその…実は…あ!」

 非常に言い難そうに、口を開いた咲だったが、理由を言う前に、目を見開いて声を上げる。雄貴の背後に、何かを見付けたらしい。

 背後は、海辺に続く坂道だが、一体何が見えたのか。そう思い、振り返ってみる。

「…何だか、石田先輩には縁もゆかりも無いような、そんな輩が見えますね。適当にノします?」

 チャラついたヤンキーが4人、こちらにやって来るのが見えた。あからさまに咲に視線を送ってるので、大体を察した雄貴。

「の、ノすなんて、いきなり物騒な…。というか、ボクの状況を知ってるんですか?」

「まぁ何となくは。そんな格好で、茂みから飛び出して来たら、普通はそういう事を勘繰ります。」

「確かにそうだね。ボクが転がり落ちた理由は…。」

 そこで言葉を切り、ヤンキー達に視線を向ける。怯えているような、しかし、どこかもどかしそうな感情が、瞳に浮かんでいた。

「おぉっと〜!発見ぇぇん!」

「いたいた!ったく、手間掛けさせやがって!」

「面倒になったのは、お前が捕まえんのに失敗したからだろ?」

「そうだぜ!ま、穴埋めは彼女・・にしてもらうんだけどよ!」

 何ともまぁ、よくここまで下品な声を出せるものである。同じ人間とは思えない。

「…。」

 嫌悪感を感じながら見る。

「お?何か変なのが居るぞ?」

 雄貴を見て、ヘラヘラしながら、1人の男が前に出てくる。完全に舐めてかかってるようだ。

「…変なのとは、結構な物言いですね。」

 雄貴も軽く笑いながら、しかし、男の一挙一動を見逃さないよう、しっかりと視線を固定しながら言う。

「…お前、かなり修羅場をくぐってんな?見た目に反して、結構なワルって事だ。が、その女に最初に目を付けたのは俺達だ。手を引いてもらおうか?」

 雄貴の動じない態度に何かを感じ取ったのか、急にヘラヘラした笑いを引っ込めて、そんな事を言ってくる。

 まぁ雄貴はワルでは無く、逆にそれを取り締まる側であるのだが。

「ははは。リーダー?一体何を言ってるんですか?こんなガキが…「うるさいぞ。多分コイツは、ステゴロが得意だ。あんまり近付くな。」は、はい!」

 ただのみみっちいヤンキーかと思えば、『リーダー』という呼び名から推測するに、何かの組織かチームを組んでる連中のようだ。

 それに、雄貴の戦闘スタイルも一瞬で見抜かれてるので、このリーダーと呼ばれた男は、普通の人間の中では・・・・・・・・・出来る方らしい。

「はぁ…。女子高生のケツ追っかけてる野郎共だから、もう少し単純なヤツらかと思ったけど、処理・・が大分面倒だな。」

 色々面倒になった雄貴は、丁寧な態度を止めて、後ろに咲が居る事も忘れ、本音をぶっちゃける。

「え、雄貴、君?」

 態度が急変した雄貴に、勿論驚く咲。

「…ま、女性の前で血なまぐさいのもアレですし、まずは穏便な方法といきますか。」

「穏便、だと?」

 眉を寄せて、警戒した顔付きになるリーダー。

「はい、穏便な方法です。じゃあ皆さん…私は警察です。さっさと回れ右して、お家に帰って下さい。」

「「「「…は?」」」」

「…え?」

 手帳をヒラヒラさせる。雄貴の言う穏便な方法とは、身分を有効活用をする事だった。

「因みに俺は、犯人を無力化するのが仕事の、荒事担当だから、逆らうのは止めた方が良いですよ。」

 にこやかな笑みを浮かべながら、しかし、口調だけは真面目に言う。

「はっ。こんな所にサツとは驚かされたが、所詮は若造1人。1人で何が出来る?」

 しかし、男達はアホだったようで、リーダーが鼻で笑ったのを皮切りに、次々に口うるさく喚き出す。

「そ、そうだそうだ!」

「やっちまいましょうリーダー!」

「幾ら荒事に慣れてるからって、1体4なら何とかなるぜ!」

 この展開には、雄貴はもはや、ため息を隠せなくなってしまった。

「はぁ〜もういい。んじゃ、次は、2番目に穏便な方法といくか。ところで石田先輩は、ジェットコースターとか大丈夫なタイプですか?」

「え、うん。一応大丈夫だけど…って、ひゃ!?」

「はいじゃあ少し失礼しまして、アリーヴェデルチさよならだ!」

 咲を抱えた雄貴は、どこぞのギャング組織の幹部みたいな決めゼリフを残し、大きくジャンプをして、道端の木々を跳び越えて、逃走するのだった。

「「「「…は。」」」」

 残された野郎共は、ただただポカーンとしてしまうのだった。


「きゃあああ!」

「っと。あ、石田先輩すみません。急に抱きかかえちゃって。」

 木々の向こう側の、さっきの道よりも、少し小高くなった道に降り立った雄貴は、悲鳴を上げた咲に謝りつつ、地面に下ろしてやる。

「だ、大丈夫。そっちじゃなくて、急に跳んだ事に驚いただけだから。それより、これが雄貴君の能力?凄い跳躍力だね。」

「はい、そうです。自分は、身体強化系の能力です。それよりも、さっさとこの場から逃げましょう。」

 答えながらも、雄貴の耳は、木々の向こう側で喚く男達の声をしっかり捉えていたので、そう提案する。もたもたしてたら、数分の後に追い付かれるだろう。

「う、うん、そうだね。」

 土地勘は無いが、別荘の方角は分かっている。もし必要なら、また雄貴が咲を抱えて跳べば良いのだ。一先ずは、この場から離れる事を優先するのだった。

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