配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第20話 思案

銀河は考える。
ユーフェミアには悪い印象を抱いていない。最初は嫌な人間、冷たい人間だと思ったが、彼女には彼女なりの考えを知ったし、理解もした。それで納得できるかと聞かられれば別だが、それでも理解した。

だが恋愛面としてどうか? 彼女は何が好きで、何を嫌いで、何が趣味なのか全くと言っていいほど知らない。好きでもなければ嫌いでもない。それが素直な感想だった。だから、断ることした。

「花宮愛華さん。申し訳ないですがお断りさせて頂きます」
「まぁ、そうですよね。私たちの思想は対極に位置するものです。仲良くなるのは難しい。それはそうとして断る理由はなんですか? 私は自分で自慢できるくらいのルックスだと思いますが」

確かに花宮愛華は美人で体つきも良い。胸もあり、適度に肉もついている。もし彼女として選ぶならこれ以上ないほどの優良さだ。彼女と付き合い男性がどれだけいるか分からない。
でも、そういう事ではなかった。体も大切だ。だが精神、具体的には趣味嗜好のマッチが大切なのだ。
銀河は言う。

「僕は花宮さんの事を何も知らない。だから付き合えない」
「私も銀河さんの事は少ししか知りません。だから知りたいと思ったんです。惚れたから、と言うのもあるでしょう。しかしそれ以上に貴方の全てを知りたい」
「もしかして貴方が感じている感情は愛情ではなく知識欲じゃないですか?」
「好きな人をもっと知りたいのは当然のことでは?」
「確かに」

納得する銀河。だが、交際に至るまでは気持ちが追いついていかなかった。

「告白されて、貴方に親密さを感じ始めているのは確かです。しかしあまりに突然の事で気持ちがついていきません。だからお断りさ」

言葉を最後まで言うことができなかった。首元にナイフが突きつけられていたからだ。銀河と花宮愛華にだ。ナイフ。鋭く磨がれた軍用ナイフ。人を殺す為の武器。それが首に添えられていた。

「俺たちはパイオニア! ここを占拠させてもらう! 魔法を使おうとも無駄だぜ! こっちには魔法無効化アイテムがあるんだ!」

どうやら銀河と花宮愛華を狙ったものではないらしい。場当たり的な無差別テロに巻き込まれたのだろう。

「お前達は人質だ! 中央に来い!」

銀河達は両手を上げたまま中央へ移動する。

「服を脱げ! もし武器を持ってる奴がいるなら武器も捨てろ!」

そう言った瞬間だった。テロリストのリーダーと思われる男の顔面にナイフが突き刺さった。花宮愛華がパイオニアの使う魔法無効化アイテム対策に持っていたナイフを投げたのだ。

「か、考えなしか貴方は!?」

花宮愛華は自分の首に添えられているナイフは片手で掴む事で固定して自身の安全は確保していた。しかし周りの安全は確保されていない。人質が次々と殺されていく。銀河も殺されそうになり、殴って気絶させた。
銀河は腰からスタンロッドを取り出して、人質救出を行うが、どう足掻いても殺される方が早かった。

「リーダーがやられた! 作戦変更! コードレッド! コードレッド!」

パイオニアのテロリスト達は、人質を殺し終えると一目散に逃げ出して、街中で自爆した。強い爆風が押し寄せ、銀河は地面に叩きつけられる。食事処にいた人たちだけではなく、ただそばを通った通行人まで死者を出してしまった。
辺りを見れば、下半身がない市民や、腕がない市民、血を吐いてる市民など地獄絵図だった。その発端を作った花宮愛華は、自分の手を魔法で治療していた。
銀河の姿を見つけると駆け寄ってくる。

「あ、銀河さん。今の爆発で魔法無効化アイテムも吹き飛んだみたいです。魔法、使えます」
「ああ、そうか。なぁ、花宮さん。この光景を見て何も思う事はないんですか?」
「テロリストのパイオニアは許せないですよね。プライベートの時に襲ってくるなんて。どうせなら待機中に事件を起こしてくれれば、スコア稼ぎに使えて一石二鳥だったのに」

それは銀河の聞きたかった答えと違っていた。

「そうじゃない、あまりにも早い段階でテロリストを攻撃したでしょう! 周りに市民が人質に取られていたのに! なのに攻撃してしまった! そのせいで死んだ! 大勢死んだんですよ!!」
「別に良くないですか? というか、なんの罪のない人が死ぬのは悲しい事ですけどそれを私のせいみたいに言われるのは心外です。テロリストとは交渉しない。誰がやるかによって規模は変わったかもしれませんが結局テロリストは殺されて、市民も殺されてましたよ」
「規模が変わるのは大切な事でしょう、治安維持部隊の到着を待って、それから動けば良かったのに」
「そんな長々とテロリストに付き合っていられませんよ。明日の朝にはユーフェミアのと決戦があります。その後にはパイオニアの親玉であるラフィーア・エルトリックの根城に突入するかもしれません。無駄に使える時間も体力はないんです。これは仕方のない事でした。そう思ってください」
「仕方のない事、そんな風に割り切れません!」

そう叫ぶと花宮愛華は悩ましげに唸った後、言った。

「まぁ、こういう事もあるさ。という事で納得してください。管理者から警告がないという事は私の行動は正しくはなくとも間違ってはいなかったんですから。銀河さんは少し時間をおいて考えてみてください。今はショックで頭が回らないでしょうから」
「わかり、ました」

渋々、と言った様子で頷く銀河。
銀河に暖かい目を向ける花宮愛華。
それが銀河には居心地が悪く感じた。
魔法通信が入る。相手はウェルシェパードからだった。

『銀河くん、愛華ちゃん、二人とも至急「第08魔装救助部隊待機室に戻ってきてくれ』
「何かあったんですか?」
「無差別テロだ」

銀河と花宮愛華が『第08魔装救助部隊待機室』に戻ってくると同時にブリーフィングが行われた。

「今日の夜、ついさっき各地で無差別テロが行われた。爆発で周囲を巻き込んで叩き潰してるなら。魔力を使っているから威力は高い。既に数百人が犠牲になってる。主犯はもちろんパイオニア」
「私達もその被害にあいました」
「この無差別テロの目的は?」
「なし。ついでに声明もなし」
「ただ単純に人を殺したかっただけって感じ」とウェルシェパード。
「悪質ですね、とても」と花宮愛華。
「ふざけた話じゃねぇかよ」と手のひらを拳で叩く金剛征四郎。

いつもは冷静な全員が怒りを露わらにしていることを珍しく思いつつ、問いかける。

「それで、今後の対策は?」
「パイオニアの前線基地と思われる各地の根城に一斉強襲をかける。他のチームとも連携して市民に被害出さないように最善を尽くす」
「情報は既に拡散されているみたいてますね、市民はこの事態を防げなかった管理者に不満を抱いている様子だ」
「防ぎようのない事態とはいえ死者が死者だ。相手を憎むだけではやりきれない思いもあるんだろう。だから俺達で見せつけてやるのさ。テロには屈しない。管理者の威光はここにあり! ってな」

金剛征四郎は強い瞳でそう言った。
銀河もそれに同意する。

「ええ、人を無意味に殺すなんて許せない。そしてそんな命令を出したラフィーアも。一体なぜこんなことを」
「それは考えたって仕方ないって結論が出ただろ。さぁ準備だ準備。相手は魔法無効化アイテムを使ってくる。質量兵器を忘れるな。飛行魔法もガードジャケットも使えなくなる可能性が高い。できるだけ使用は控えるんだ。今回の戦いは肉体能力が重要視される戦いだ。それを頭に叩き込んでおけ!」

金剛征四郎が叫ぶとみんな一斉に準備を始めた。
銀河もスタンロットが壊れていないかチェックし、対衝撃加工された防護服を纏い出発待機する。

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