配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第18話 勝利

『目標! 沈黙! 作戦は成功だ!』

全員の拍手と歓声が場を湧かす。銀河とユーフェミアの前には四つのSCが浮かんでいた。銀河はそれを掴み、半分づつ分け与える。

「いいの? 私に渡して」
「勿論駄目だ。だけどそうしないと君が罰を受けることになってしまう。それは避けたい。だから半分づつ平等に」
「わかった。ありがたく貰っていく」
「そうして欲しい。ここで全てのSCを要求されて戦闘続行なんた事態にはならなくて済みそうだ」
「もしそうなったら、貴方は私に勝てる?」
「さぁ、どうだろう。少なくとも魔力制限された状態で勝つのは難しいかな。それに今とかも魔力を消耗しきったばかりだ。この疲れが取れるまで当分の間は戦闘は控えたい」

魔法エネルギーは精神エネルギー。
心の体調が直接魔力の有無に関係してくる。燃えるような熱い意志があれば、魔力は溢れ出すし、疲労感があれば魔力の出力は低くなる。
SC連結ドラゴンを倒す為に魔力を絞り出した後は強い疲労感が二人を襲っていた。

『ユーフェミア、貴方は何故目の前にSCがあるのに獲らないのかしら?』

突然声が鳴り響いた。空中から反響しながら轟く声はとても冷ややかで、ユーフェミアは体を固めた。

「誰だ! 姿を表せ!」
「母さん……」
「お母さん? ユーフェミアの……? なら一つ言わせて頂きたい!!」
『へぇ、何しから。SCを奪おうとする悪い子』
「家庭の事情があるのでしょう! 特殊な事情があるのでしょう! その上で言わせて頂きたい! 子供を虐待するなよ!! 暴力を振るうなよ!! 戦闘をさせるなよ!!」

銀河は自分の思っていた事をハッキリ言った。
それと同時に銀河は心の中で炎が燃え上がるものがあった。魔力が滾って、それに魔力に合わせて大声で叫んだ。
それに返ってくる声はやはり冷たかった。

『嫌よ。役に立たない子供に割く心はないわ』

瞬間、空間が捻れ曲がり、そこから銀色の光が漏れ出し始めた。慌てた声の通信が入ってくる。ウェルシェパードも予想外な事が起きているらしかった。

『空間跳躍砲撃!? 銀河くん避けろ!!』

巨大な銀の奔流はウェルシェパードの警告のおかげで回避できた。だが、ユーフェミアはそうでもなかったらしい。魔力砲撃の直撃を受けて全身から煙を出しながら海上へ落下していく。どうやらギリギリ即死の攻撃ではなかったらしい。だがガードジャケットは砕かれ、ボロボロの状態になっている。

「ユーフェミア!!」

銀河は手を伸ばす。だが寸前のところでユーフェミアは姿を消した。何故という思考が頭を過るが、本人の意識がない状態で肉体を転移させるなんて芸当が出来るのは、魔力の固有数値を知っているユーフェミアの母親しかいないと結論付ける。

「ユーフェミアは役に立たないんじゃなかったのか。何故回収する? 僕ならば彼女に人並みの生活を送らせる事ができる。貴方にはできない事だ。虐待し、洗脳し、戦わせるなんて悪鬼の所業に他ならない!」
『ふん、生まれたばかりのガキがよく言うわね。そう言う言葉は人間様が言うのが価値があるのであって、貴方に言われても何の重みもないわ』
「確かに自分は数年も生きてない子供だ。だがこの胸はある感情だけは本物だ。そこに重さは関係ない。僕がそう思った。それを言うだけだ」

話は平行線だった。
ユーフェミアの母親であるラフィーアは銀河をデザインベイビーの子供だと見下し、話に全く乗ってこない。これでは彼女の心を変えるのは不可能だと判断した銀河は、強い口調で言う。

「なんと思おうが構わない。綺羅星きらぼし銀河は必ずユーフェミアを取り返し、貴方を捕まえる。それが第08魔装救助部隊としての覚悟だ」
『覚悟ですって。今目の前でユーフェミアを奪われておいてお笑いぐさね』

それを最後に声は聞こえなくなくなった。
銀河はユーフェミアに向かって言う。

「一緒に来て欲しい。君には幸せに生きる権利がある。僕が、君を支える。必ずだ」

ユーフェミアは首を横に振ってそれを断った。

「ありがとうございます。でも母さんは誤解されやすい人だから。私がいないと駄目だから。それにSCを届けなくちゃいけないから」
「……その選択は辛いと思いますよ、ユーフェミア」

ユーフェミアは曖昧に笑うと転移魔法で姿を消した。
ウェルシェパードから通信魔法が入る。

『位置逆算に失敗した。転移先に何十ものフェイクを混ぜている。恐らくユーフェミア陣営の本拠地を特定するにはさっきみたいな空間跳躍砲撃魔法の発動の瞬間のみだろうね。取り敢えずSC回収ご苦労様。一旦集まって作戦会議としよう」
「了解」

銀河はそう返答して『第08魔装救助部隊待機室』に帰還する。すると、花宮愛華が近寄ってきて、「ちょっと」と手首の裾を引っ張って外に出るように促してきた。銀河はそれに従い外に出る。

前を歩いていた花宮愛華は、ある程度部屋から距離が離れたところで立ち止まり、綺麗な一礼を銀河にした。そして言う。

「すみません。貴方の過去の事を聞いてしまいました。黙っておく事も考えたのですが、貴方に不要な心配をさせるのを申し訳なく思って言わせて頂きました」

貴方の過去――銀河の過去。
それは恐らく銀河はデザインベイビーであり、生まれた時から訓練漬けの日々を送ってきた事を指して言っているのだろう。銀河からすれば気にするような事では無かったのだが、花宮愛華の中では重要な事なと感じたようだった。
銀河は笑って、言う。

「気にしないでください。元々隠していたわけではありませんし、これからの隠していくつもりもありません。なんだったらもっと詳しく話しても良いと思ってます。少しだけ聞いてそれきりっていうのも気持ちが悪いでしょう?」
「そうですね。もっとお話聞きたいと思います。貴方の過去を、どういう教育をされたのか、興味があります」
「ですか。ならみんなに聞いてもらいましょう」
「みんなに?」
「ええ、私の行動に不満を持った時に、どうしてその行動を取るのか知っていれば適切な対処ができるでしょう。私は私を貫きます。折れません。ですがそれを周りに理解してもらう努力は怠ってはいけないと思うんです」
「確かに、そうですね。では戻りましょうか」

二人は『第08魔装救助部隊待機室』に戻った。すると二人をはやし立てるようにわざとらしくウェルシェパードは言った。

「二人で密談なんてやらーしーいー。何の話をしてたの?」
「私の過去についての話です。ちょうど良いタイミングなので皆さんにもお話しておこうと思いまして」
「銀河くんの過去?」
「端的に言えば私はデザインベイビーで、生まれた時から戦闘教育を受けて育てられてました。そしてその思想は人命救助第一です。私を育てるには相当なコストがかかっているので自分の身の安全を確保しつつ、いかに人を助けるかが重要視されてました。そして最大多数の最大幸福よりも、目の前でないてる人間を助ける事にしてます。何故なら、手の届く範囲で見捨てたく無いから。目の届く範囲で泣いている人がいるのに耐えられない。だから私は、僕は人を助けます」
「なるほど。でも何で今その話を?」
「花宮さんに話した時に、どうせならフルオープンにしてしまった方が良いと思いました。無駄なご心配をこれからさせないようにわかったほうが良いと感じたので、説明させてもらいました」
「それで具体的にどうして欲しいんだ?」

金剛征四郎が言った。

「どうして欲しい、という要望は別に無いです。ただ知っておいて損は無いかなと思っただけです。私がどういう過去を持ち、どういう思想があり、どう行動するのか。それを分かっていれば、上手く使ってくれるのがウェルシェパードさんだと思っています」
「わかった。オーケー、把握したよ。銀河くんの思想も過去も理解した。ではその上で作戦会議だ。あの子供を虐待し、戦わせる狂気に走った犯罪者を捕まえる!」

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