配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第17話 過去

荒ぶるドラゴンは自身の周囲を飛び回るユーフェミアに苛立ちを覚えてるようだった。巨大な体を動かして、鋭い爪で八つ裂きにしようとする。だがその攻撃をユーフェミアは軽々と超えていく。
空戦の心得があるようだ。振るわれる一撃を躱すと、ロングソードで外皮に傷付けようとする。しかし分厚い装甲に守られていて歯が立たない。完全なる消耗線となっていた。
そして先に消耗し尽くすのはユーフェミアだ。ドラゴンはSCによって莫大な魔力があるが、ユーフェミアは人間一人分。それもまだ小学生くらいのものしかない。どちらが先に力尽きるかは自明なことだった。

「ハーッ、ハーッ、ハーッ」

洗い息を吐きながら額から落ちる汗を拭う。その瞬間だった。気の緩み、いや疲れからか飛行魔法が消失し、落下する。そしてすぐそばにドラゴンの巨大なアギトがあった。

(まずい、まずい、死ぬ。死んじゃう。そんな、こんなところで!?)

全身が恐怖で体が震え、目を閉じた。だが予想されたアギトによる噛み砕きは起きなかった。

(どうして……)

そっと、目を開けると、綺羅星銀河の腕にユーフェミアをは抱きとめられ、もう片方の腕でドラゴンのアギトを砕いていた。

『対象、SC連結ドラゴン。脅威度判定S、魔力出力制限の全面解放を許諾。慎重に対象を確認し、撃破してください』
「了解。全拘束解禁とは気前が良い。ユーフェミア、まだ戦えますか?」
「……っ! 戦える! 私に触れないでっ!」
「おお、と」

ユーフェミアは銀河の腕を離れると、飛行魔法で空中に留まり、剣を向けた。

「私と戦うの?」
「いいや、そんな事はしない。僕達はあの怪物を倒してSCを回収したいだけだ。今回の敵は強大だ。一時共闘にしないか?」
「わかった」
「なら手を出して」
「……? 何故?」
「いいから」

ユーフェミアが手を差し出すと、銀河が掴む。そして魔力を送り込んだ。

「凄い、魔力」
「綺麗に半分だ。さぁ、一緒にあれを倒しにいこう。僕の仲間も遅れてやってくる」

その時だった。遠くの方から巨大な鉄球が飛来し、SC連結ドラゴンの顔面に衝突した。そして大爆発を起こした。爆風で吹き飛ばされそうになるユーフェミアを庇いながら、銀河は叫んだ。

「攻撃するならするって先に行ってください! 巻き込まれたらどうするんですか!?」
『ごめんごめん。ちょっといい感じの位置にいたら撃ちたくなっちゃって。作戦は僕達が狙撃する、銀河くんとユーフェミアちゃんが撹乱して、流れ弾やそういうのが市街地に落ちないようにユーフェミアちゃんが撃退。以上!』
「了解しました。では、私たちは撹乱し続ければ良いんですね?」
『そう! 無理に撃破する必要はない! 火力はこちらに任せて回避を最優先に』
「あ、そうだ。作戦名は決まったんですか?」
『ミッション名:フリーダム・ボンバーだ。各自好きなようにやれ! そんな意味からつけられた』
「なるほど。では援護をよろしくお願いします!」
『任せてくれ!』

通信を切ると再び鉄球が落ちてくる。それはSC連結ドラゴンのあらゆる部分に着弾し大炎上を巻き起こしていた。

「腕の一本くらい、貰っていこうか!!」

銀河は魔力ブレードに魔力を倒す。それは巨大な剣となった。それを振り下ろす。激しい火花が舞って、鱗が剥がれ落ち始める。更にそこに鉄球が飛来し、銀河の魔力ブレードを後押しした。勢いよく肉を裂き、SC連結ドラゴンの腕を両断する。

「すごい。これが彼の本来の力……」

勝てないと思っていたSC連結ドラゴンを、味方の援護があるとはいえ片腕を切り落とした銀河に瞠目する。圧倒的な力を前に、自分と対峙していた時は手を抜かれていたと思うユーフェミア。正確には殺さないように手加減させられていたのが、それを知る由もない。
ユーフェミアは思わず叫んでいた。

「銀河さん! 貴方は、どうして私を助けようとするんですか!? 弱そうだったから!? 惨めそうだったから!? 上から目線で見下ろして!! ふざけないで!!」
「ユーフェミアっ!?」

突然切り掛かってきたユーフェミアに困惑する銀河。だが、ユーフェミアの表情と言葉から何が彼女を突き動かしているのかを察する。

「ユーフェミア! 聞いてくれ! 僕は君を助けようとするのはまだ子供だからだ! 子供が親から虐待……良い扱いを受けていなくて! 魔法で戦う! そんな事あっていい筈がないんだ!」
「何が言いたいの!? 子供だから? なら大人なら助けないの? 私をどうしてそんなに助けたがるの!?」

一際強い衝撃が銀河を襲うだけど、銀河は刃をユーフェミアに向かおうとせず、ガードジャケットでガードしているだけだった。

「僕は見た目こそ大人だが、生まれて一年も経っていないデザインベイビーだ! 魔法で作られ、生まれてきた時から戦う為に訓練され、教育されてきた。そしてその間に触れ合ったであろう教育者達との記憶は全て消されている!」
「デザインベイビー? 生まれた時から戦う為に訓練されてきた……?」

ユーフェミアの猛攻に止まり、力が無くなる。

「それで良いと思っている。人間が目的があって作り出したものなら、それに従うのが被創造物である僕達デザインベイビーの使命だ。けど君は違うだろう? 誰かに愛される為に生まれてきた筈なんだ。そんな君がボロボロになって戦うのは間違ってる! 人間の子供は、愛されて、慈しまれて育てられるべきなんだ!」

銀河は堂々とユーフェミアの目を見て言った。

「君が愛されて欲しい。だから僕は君を救いたいんだ。救った後も、勿論面倒を見る。救って放置なんて真似はしない。魔法学校へ行って、この世界で生きていけるように精一杯の努力をする。だから、ユーフェミア、こっちへ来るんだ」

伸ばされる手を、ユーフェミアはじっと見つめていた。
同情や哀れみじゃなかった。純粋な願いで、綺羅星きらぼし銀河はユーフェミアを救いたがっていたのだ。
ユーフェミアは揺れる。母親を裏切れない。だけど彼と共に歩みたい。そんな感情がごっちゃ混ぜになって、何もできないでいた。

その時だった。

「ユーフェミア!!」

間一髪だった。
二人が今までいた場所に巨大な爪が振り下ろされていた。少しでも反応が遅れていたら死んでいただろう。そうまでして救ってくれる。そんな銀河の思いに答えたくなる。

「あ、あの」
『やばい、弾が尽きた。一応魔法砲撃は続けてるけど、ラストは二人の攻撃で一気にやれないかい!?』
「了解しました! ユーフェミア、お願いがある!」
「はいっ!」
「一緒に攻撃をして欲しい。一人では足りないみたいなんだ」
「喜んで」
「ありがとう」

銀河の手を、ユーフェミアは掴んだ。そして二人で魔法陣を展開させる。

『拘束弾! 発射!』

魔力のエネルギーが束ねられた魔力拘束弾がSC連結ドラゴンをぐるぐる巻きにして行動を制限する。そしてユーフェミアが魔法の詠唱を開始する。魔法の詠唱は自己暗示に近く、この動作を行う事で精密さが上がるのだ。

「つどいし願いの欠片よ。光の道を開け。安泰へ続く架け橋となれ。昏き門を閉じ、漆黒に別れを告げよう。魔法展開、魔法回路駆動、魔法陣展開、魔法陣展開、魔法陣展開」

三重の魔法陣が展開され、魔力が収束され始める。

「銀河さん」
「なんだい?」
「ありがとうございます」

それはどういう意味? と聞く前に魔法が完成した。

「魔法発動・シルヴァリオ・ストライク!!」

眩い光が一点に集中して、一本の魔力の本流となってSC連結ドラゴンを貫いた。

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