配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第12話 愛好

その通信を聞いた花宮愛華の行動は素早かった。
即座にガードジャケットを展開し、店の外へ出て、SCの方角を確認、その方向へ飛翔する。銀河も遅れてガードジャケットを展開、花宮愛華を追って、SCを発見した。まだ周囲の物質を取り込む前のようで、完全に起動し切ってはいなかった。

「どうしたら良いですか!?」
『こちらでSC封印弾を射出する!」
「完成していたんですか」
『ああ! アグレッサーに壊されたからだいぶ時間経ってるからね! 二人は周囲の民間人を避難させつつ、パイオニアが邪魔してこないように見張っていてくれ!』
「了解しました」

花宮愛華は大きく息を吸って、言う。

「これより戦闘が行われます!! 巻き込まれたくない方は避難して下さい!!」

それを聞いた市民達は一斉にその場から逃げ出した。転んだ人や、子供を救助して逃げさせながら、SC封印弾が放たれるのを待つ。

『強い魔力反応を検知! アグレッサーだ!』
「来たか!」

銀色の髪をたなびかせ、ロングソードを握った少女が現れる。狙いはSC。一直線にそちらへ向かう。だがまだ未封印の危険な代物だ。触れさせて刺激させるわけにはいかない。

「花宮さん! スコアは任せます! 私は彼女と対話してみます!」
「了解です。無駄だと思いますが、頑張ってください」
「そういうこと言わないでくださいよっ!」

ユーフェミアの飛翔予測位置に割り込み、魔力ブレードで殴りかかる。それに反応したユーフェミアはロングソードで迎え撃ち、激しい火花が散った。

「やってくると思っていたよ! 君は!」
「邪魔を、しないで! SCを渡す約束はどこへ行ったの!?」

魔力ブレードとロングソードがぶつかり合い、お互いに渾身の力を込めながら叩きつけ合う。

「約束は守る!」
「ならそこを、どけえええ!!」

半狂乱になったユーフェミアは一撃は魔力ブレードを叩き折り、銀河の頬を掠める。空中で大きく距離を取り、再び魔力ブレードを構築しながら今度は銀河がユーフェミアに向かって大振りの攻撃を繰り出した。

「今はまだ危なくてね! それを鎮静化させたら受け渡すと約束しよう!」
「鎮静化なら私もできる! だから邪魔しないで!」
「そういうわけには、いかないんだ!! 君に及ぶ危険は出来る限り少なくしたいからね!」
「どの口が!! ただSCが欲しいだけでしょう! 約束だって守る気はない癖に!!」

鋭い一撃がガードジャケットを突く。しかしその一撃は心がそのまま強さとなるガードジャケットの、銀河の救命救助への思いを破るには至らなかった。ガリガリ!! と音を立てて体を斜めに滑る。そしてそのまま銀河の体を外れて空を切る。

「強い……ッ」
「硬いッ!」
『よし、準備完了だ! SC封印弾射出!』

パァン! という響き渡る。そして銀河とユーフェミアの横をすり抜けてSC封印弾はSCへと向かっていく。このままいけば無事封印され、鎮静化するだろう。そう思って気を抜いた直後だった。
避難民の一団の中から、突如して高速で飛翔する人影がある。

「誰!?」
「パイオニアに栄光あれえええええ!!!!」

そう叫んだ男は自らの体をSC封印弾へぶつけて、大爆発した。

「自爆テロ!? そこまでSCが欲しいのか!」

花宮愛華より魔法通信が入る。

『それは分かっている事です。むしろ私達の作戦がバレていた方が怖い。SC封印弾に命を使うと決めていたんですから。恐らくこの通信は傍受されています』
「何ですって」
「話してる余裕が! あるんですか!」
「ぐっ、お構いなしか!」

ロングソードを腕でガードし、反対の腕で魔力ブレードを振るうが急速降下され避けられてしまう。そして今度は急上昇して銀河を倒しにくる。何度もロングソードを魔力ブレードで打ち払うが、ユーフェミアの狂気は止まらず勢いを増していく。

(こ、このままでは)

「シルヴァリオ・ストライク」

超至近距離での魔法の炸裂に銀河は吹き飛ばされる。全身を焼かれ、意識がブラックアウトしそうになるが根性で繋ぎ止める。そして地面に衝突する寸前で持ちなし、着地した。しかしユーフェミアを引き止める事は失敗してしまっていた。

「すみません、失敗しました! ユーフェミアがSCを確保します」
『仕方ありません、ここは見守りましょう。彼女が鎮静化させればそれはそれで良いんです』
「了解」

安全に受け渡しできなかった悔しさを抱きながら、SCを掴むユーフェミアを見守る。SCは魔力を発信させて、周囲のものを引き寄せようとするが、ユーフェミアによって遮られ鎮静化されていく。

「本当に鎮静化の方法を知っていたのか」
『待って! 様子がおかしい』

鎮静化した筈のSCが再び光出した。

「ああああああ!!」

ユーフェミアの指が裂け始めた。SCの魔力がユーフェミアを拒絶しているのだ。禍々しい魔力は触手のように形を持ち、今度はユーフェミアの体全体に巻きつき始めた。
そして指先から細かくバラバラにして吸収し始めた。

「痛い痛い痛い痛い! お母さん! 指がぁ、 助けて!」
「お母さんじゃないが! 絶対に助ける! 花宮さんは引き続きテロリストと避難を」
『了解』

銀河は魔力ブレードでユーフェミアの体に巻き付いた触手を切り裂き、腕を掴んで無理矢理SCから引き剥がす。勿論、そんなことをすれば銀河もただでは済まず、今度は銀河が吸収される対象になったのか触手で体を締め付けられ、手先からバラバラにされ始めていた。
血が吹き出し、皮膚が剥がれ落ちようとも、ユーフェミアの手を離さず力の限り引っ張る。そして遂に手を全て抜き取ると、空中へ放り投げた。

「あぅっ、あ、助かった」

呆然とそう言うユーフェミアに対して、銀河は笑顔で言った。

「僕達は魔装救助隊! 助けを求められれば必ず助ける! そう言っただろう?」
「あ、あ、でも、貴方が危ない!」
「大丈夫、このくらい! ウェルシェパード隊長! SC封印弾の予備は!」
『あるよ、今装填中だ! あと少し待ってくれ!』
「了解!」

じりじりと触手とSCの吸引力に負け始める。銀河のガードジャケットも圧倒的な魔力の前には砕かれ、腕がひび割れていく。そして更に触手が傷口を突き刺して、銀河の抵抗を弱めようとする。

「せぇやあああ!!」

銀色の一閃がSCの触手を断ち切った。銀河を傷一つつけず、ロングソードは触手を切り落とす。ロングソードを握るユーフェミアの手には血が滴っていた。ボロボロの状態で、ユーフェミアは銀河を助けたのだ。

「どうして助ける? 僕の事は嫌いじゃなかったのか?」
「嫌いです! 嫌いですけど、受けた恩は返します!」
「ありがとう、お陰でだいぶ助かった。あとはSC封印弾が来れば」

触手を切り続けるにも限界はある。SCの魔力は膨大で切って切っても湧いてくる。それどころか二人いっぺんに吸収しようと触手を伸ばしてくる。それを切り払いながら、ユーフェミアはまた捕まる愚を犯さない為に距離を取る。
するとウェルシェパードから連絡が届く。

『よし! 準備完了だ! SC封印弾射出する!』
「了解!!」

遠くで音が鳴り、高速で飛翔してくる物体がある。
SC封印弾だ。それはSCに突き刺さると無数の魔法陣を展開してSCの魔力を押さえ込み始める。魔力が抑えられたことで触手の勢いも削がれ、簡単に引き千切れるようになる。
そうして完全にSCは押さえ込まれ、活動が停止する。
銀河は、宙に浮かぶSCを掴むとユーフェミアの方へ投げ渡した。SCを受け取ると、唖然とした表情で銀河を見た。
銀河は言う。

「約束した。SGを渡すと。それに僕の要求にも答えてくれた。病院にだってついてきてくれたし、話だってしてくれた。だからこれは正当なものだ。受け取って欲しい」
「……ありがとう、ございます。感謝します。貴方の事は嫌いですけど」
「少しは見直してくれた?」
「はい。貴方は少し良い人です。綺羅星きらぼし銀河さん」

そこで割って入る声があった。ウェルシェパードだ。

『ちょっとちょっと待ってどいうこと!? どうしてその子にSCをあげちゃうのさ!?』

答えたのは花宮愛華だ。

「シェパード隊長は少し黙っててください」
「いや、説明してあげてください。話す代わりにSCを譲るって約束したんです」
『破ろうよ! その約束!』

その言葉に銀河はガクッとなった。あんまりな言葉だったからだ。
それは花宮愛華も感じたようで、つーんとした態度で返答する。

「現場に来てない人が横から口出さないでくださーい」
『いやでも、SC渡すのは駄目でしょう!? それ無差別破壊兵器みたいなもんだよ!?」
「それならそれで良いじゃないですか、救助する人が増えてスコアが稼ぎができます」
『愛華ちゃんそういうところあるよね。頭おかしいよ全く。銀河くんはどうして譲ったの」
「彼女の傷の治療と情報を得る為です」
『うん、まぁ、愛華ちゃんよりはマシか……管理者からお咎め無いしいいか、別に。責任は自分でとってね』
「わかりました。ありがとうございます」

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