配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第11話 お茶

「病院? 何故ですか?」
「君が傷だらけだからだ」
「必要ありません。これは母から受けた愛です」
「愛……か」

そう言い切るユーフェミアに、銀河は苦々しい感情を覚えた。あまりに狂っている。正常な判断ができていない。罰を何度も受けるたびに思考が歪み、そして母は何故暴力を振るうのか、それは愛情によるものと受け取るしか自分を保つ方法が無かったのだろう。

「えいっ」
「〜〜〜〜!!」

花宮愛華はユーフェミアの傷口を突いた。瞬間、ユーフェミアは壮絶な表情をして蹲る。花宮愛華は呆れたように言った。

「こんな小突かれた程度でそんな状態じゃ戦えないでしょう。母の愛だとしても治すのが一番だと思いますよ。母親の役に立たないなら尚更。SC、欲しいんでしょう?」
「欲しい、です」
「なら潔く病院行って手当てされてきてください。そうすれば次のSCは譲渡します」
「わかりました。そこまで言うなら……」

三人は病院へ向かった。そして順番を待ち、ユーフェミアが治療されている間、綺羅星銀河と花宮愛華の二人は病院のソファーに座りながら喋っていた。

「まさかアグレッサーと出会う事はなるとは思いませんでした」
「私はSCを引き渡す代わりにお茶をしようと誘うとは思いませんでしたよ。最終的に病院になってるし。何考えているんですか?」
「お茶に誘ったのは口実というかハードル下げです。いきなり病院は断られるかと思ったので。それに何やら僕は嫌われてしまっているようだ」
「そりゃあ初見の相手に虐待の痕を指摘されて母親を非難されたら怒りますよ。交渉する時は私に任せてください。その方が彼女も受け入れやすいでしょう」
「お願いします」

あ、と銀河は言う。

「予想外といえば花宮さんが病院に連れていくことを支援してくれた事にも驚きました。スコア的にはマイナスにならないんですか?」
「もしここでSCを渡して大事件を起こしてくれれば、そこでスコアを荒稼ぎできますからね。目の前の損より、未来の利益です」
「それって助けからず死ぬ人が出ますよね」
「出ると思います。それをどれだけ救えるか、スコアを伸ばせるかが面白いポイントなんです」
「理解できません」
「しなくて構いません。誰かに理解されたくてやっているわけじゃないので」

そう言う花宮愛華は少しも動揺している様子はなかった。当たり前のことを当たり前に言っているという感じだ。

(狂人……)

他人の生命より自分の点数稼ぎが優先なんて狂っているとしか思えなかった。

「貴方、今私のこと狂人と思ったでしょう?」
「顔に出ていましたか?」
「いえ、大抵こういう話をすると頭がおかしい、狂ってる、非人道などと言われるので今回もそうかと思っただけです」
「なるほど、ご自身の体験からでしたか」
「お陰で周囲から嫌われてるわ。それで第08魔装救助部隊に配属されたの。貴方もたぶん周りから狂人だと思われているでしょう」
「構いません。僕は周りが何というと僕が納得できる事を果たします」

花宮愛華は笑った。

「そういうところですよ。噂では管理者に逆らったとか」
「ええ、殺せと命令されたのでクソやろう、と返しました」
「貴方も立派な狂人ですよ。管理者に逆らうなんて常人ならできません。ようこそ、狂人達の職場へ。狂人さん」
「お邪魔させてもらいます」

と、そこで治療室からユーフェミアが出てくる。全身包帯だらけで、まるでモンスターのようだった。しかし白い包帯には微かに血が滲んでいる部分もあり、痛々しい。

「さて、お化粧も済んだ事ですし、本当にお茶しに行きましょう」
「え、本当に行くんですか? 私を病院に連れてくる方便とばかり」
「そうなんですか? 私はてっきりお茶する前のドレスアップだとばかり思ってました。どうなんですか? 銀河さん」
「お茶を飲みにいきましょう。チョコパフェが食べれる場所が良いですね」

場所をファミリーレストランに移し、話し合いを始める。包帯ぐるぐる巻きの状態であるユーフェミアを、周囲の人達は奇異の視線で見ていたが、二人はそれを気にせず好きなものを頼んで食べていた。
ユーフェミアは困惑しながらも、勝手に注文されたアイスを食べる。

「どう? ここのアイスは口に合った?」
「はい、美味しいです」

返事はするものの鋭い視線を向けてくるユーフェミアに、銀河は「あ、これは無理だ」と心が折れる。花宮愛華に視線でバトンタッチをして、話を進めるように促す。

「私は花宮愛華と言います。貴方の名前は?」
「ユーフェミアです」
「ファミリーネームは?」
「わかりません」

その答えに二人は顔を見合わせる。

「わからない? それはつまり母親から与えてもらってないこと?」
「名前はもらいました」

銀河は頭が痛くなった。虐待されていた事から薄々分かっていたことだが、このユーフェミアという少女。その母親に家族扱いさえされていない。そして本人はそれに気付いていない。もしくは気付いているが見ないようにしてる。

「そうか。分かった。じゃあ二つ目の質問。SCを集める理由はわかる?」
「わかりません」
「銀河さん、これは」

銀河は視線でそれ以上言わないように示す。
完全に使い捨てに駒扱いだ。家族扱いせず、情報が抜き出されても良いように必要最低限のことしか教えられていない。

「じゃあ3つ目の質問。SCを集めているのは、君だけ?」
「パイオニアって人達もお母さんに協力しているって言ってました。慈善活動団体だから協力してくれる、と」

テロリストじゃないか!? 銀河は叫び出しそうになったのとをグッと堪える。
何が慈善団体だ。パイオニアは反管理者を掲げて下部組織に自爆特攻をさせるような組織だ。そんなところと協力した暁には良いように使われゴミのように捨てられるのがオチだ。助けなければならない。銀河はそう思った。

「パイオニアが絡んでくるとは」
「でもこれで最近パイオニアが活動的になってる理由が分かりましたね。やつらもSCを探してるんです」
「もう良いですか? 貴方達の質問に答えたし、治療にも付き合いました。SCの対価としては十分だと思います」
「では最後に一つだけ聞いて良いですか?」
「……なんですか?」
「質問とは違いますが、知っておいて欲しいことです」
「知っておいて欲しいこと?」

ユーフェミアは怪訝そうに首を傾げた。

「私たちは魔装救助部隊です。その目的は人の救助です。もし貴方が苦しんでいて助けを求めているのなら、力になります。その時は言ってください」
「頼る事はありません。貴方達のせいで母さんから罰を受けたんです。その貴方達に頼る? あり得ない」
「今はそういう認識で良いでしょう。もし気が変わったら、の話です」
「あり得ないです」

そう言って、ユーフェミアは去っていった。
残された銀河と花宮愛華は会話を続ける。

「花宮さんが最後に言った言葉には驚きました」
「貴方が苦しんでいるなら力をになる、ですか?」
「はい。もっと貴方は冷徹な人かと思っていたので」
「それは間違ってはいません。スコアを優先する血の通わない女だとよく言われます」
「よく言われるんだ……」
「自覚もしてます。ですが私は人を助ける事が使命だと思っています。スコアは良い指標なんです。助けたら助けた分が確実な数字となってやってくる。救われた命の数がわかる。自己満足ではない現実の数字として」

銀河に取って耳の痛い話であった。自己満足で人を助けてある銀河とは対極に位置するからだ。そして正しいのは、救助人数が多いのは花宮愛華の方だからだ。だから少し責められた気になって居心地が悪くなる。

「ですが、流石にあの境遇には同情します。信じている母親からは家族とも思ってもらえず暴力を振るわれ、協力する組織はテロリストで非人道的な扱いを受けるのは確実。魔装自衛隊と戦えば殺害許可が下りて殺されてしまう運命にあります。その前に自分から助けて欲しいと言ってくれるのを願うばかりです」
「……そう、ですね。そういえばSCを集めて何をする気なんでしょうか」
「破壊力のあるものですから、町中で稼働させて無差別破壊などが考えられますね」
「そんな事態になれば最悪ですね」
「スコア稼ぎにはちょうど良いですけどね」
「その感想出てくるところが花宮さんと仲良くなれない部分なんですよね」
「人間ですし、合う人間と合わない人間はいますよ」
「達観してるなぁ」

緊急アラートが鳴り響いた。そして魔法通信が繋がれる。

『やぁ、聞こえてるかな。僕だ。ウェルシェパードだ。SCの起動反応が君達のすぐそばであった。休日なのは分かっているけどこれも人命の為だ、急いで向かってほしい』

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