配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第9話 カウンセリング

白い部屋。
そこに机を挟んで男と銀河は向かい合って座っていた。
男が言う。

「これから幾つか質問する。カウンセリングを兼ねた思想調査という感じだ。質問には正直に答えて欲しい」
「わかりました」
「最初の事件、君が第08魔装救助隊に異動するきっかけとなったターミナル区役所テロ事件。この時に君は上司の命令を無視して突入した。それは結果的に人命救助に繋がったけど、管理者の定めた法律では上司の命令が絶対だ。どうして命令違反を?」

銀河は迷わず答えた。

「被害者の一人が、炎に巻かれながら私に助けを求めました。娘を助けて欲しいと自分の命を犠牲にして応援を呼んだんです。その行動を見た時に助けなければならないと思いました。強い衝撃を受けたんです。法律の事も頭の隅にありましたが、それよりも助ける方が優先されるべきだ、と思ったんです。だかり行動に移しました」
「なるほどね、その子供を想う親の行動に胸打たれたわけだ。確かにそこまでされて命令違反になるので動けませんだと悲しいものがあるね」

男は記録を残すと、銀河の瞳を見た。

「二つ目の質問。第08魔装救助隊に異動になった後、花宮愛華とコンビになったけど、それについてはどう思ってる? 彼女に対して思う事はありますか?」
「彼女には非常に強い興味があります。昔は救命に燃える性格だったようですが、今では人命を数字でしか認識しないようになっています。どうしてそうなってしまったのか興味があります」
「性格が変わってしまうきっかけが気になるんだね。相性はどうなのかな?」

銀河は顎に手を当てて少し考える。

「私とは対極に位置する存在だと思います。だからこそ相性は良いのでは無いかと思います。私は少し感情に支配されてしまう事が多いですから、それを冷静に埋め合わせてくれる彼女は最適なパートナーだと思っています」
「命を数字でしか見ない事に腹は立たない?」
「思うところがないわけではありませんが、それは自分だけのものです。それに口出しする権利はない、と考えます」
「そこらへんはちゃんと制御できてるんだ。どうして人命がかかると暴走してしまうのだろうね?」

その問いに銀河は苦笑した。

「人命がかかっているから、としかお答えできませんね。人の命は救わなければならない。それが僕……失礼、私が生きている意味です」
「僕で構わないよ。そんなに壁を作らないで。人の生きる意味は、管理者の役に立つ事じゃないのかい? たぶん殆どの人がそう思っていると思うけど」
「管理者の役に立てれば嬉しいです。しかし、その前に人の命です。命は一つしかないのだから、とりあえず救って、そこから後の事を考えれば良いと思います。その結果が死刑だとしても、それはちゃんとした手続きを通っているので納得できます」
「その場の勢いで生死を決めるのが嫌なのかな」
「そうなります。大量殺人犯でも、その過去にあったものをひっくり返して、同情の余地があれば減刑した上で処刑する。それならば納得できるんです。これ以上被害を増やさない為に取り敢えず殺しておく、そういう場当たり的な判断を僕は苦手とします」
「生真面目だね」
「端的に纏めれば、そうなります」

男はうんうん、と何度か頷きながら紙をめくる。

「じゃあアグレッサーとエネミー1について聞こうかな。彼女、彼らについてどう思う?」
「難しい質問ですね」
「2つ同時にやると混乱するだろうから、アグレッサーについて聞こう。彼女についての質問だ。彼女と出会ったら、どうしたい?」

銀河は即答した。

「保護して治療して、事情聴取をしたいです。その上で相応の罰を受けてもらいます。彼女は傷ついていた。僕よりも小さな子供がボロボロになりながら戦っていた。そんな事は許せない。助けなくてはならない。何があろうと」
「熱血だね」
「少なくとも冷血ではないつもりです」
「2つ目、エネミー1についてはどうだい?」
「エネミー1については複雑ですが、取り敢えず助けたかったです。助けた上で事情を全て解明して、適切な罰を与える……事をしたかったです」
「管理者は殺せと言った。だとしても?」
「だとしてもです。この世に死んで良い人間はいます。ですが簡単に決めるべきではない、と思います。なので私は拒否しました。結果は魔装自衛隊の方に重荷を背負わせてしまう形になってしまいましたが」
「でも君は最初の任務。180秒間持ち堪える命令を成功させてる。罵る人物はいないと思うけど」
「自分が自分で許せないだけです」
「真面目でストイックだ。あまり思いつめないようにね。今回君の行動は最高ではなくとも最善ではあったのだから。誰も君を責めないし、罵らない。君は正しい事をしたんだ。それを忘れないで欲しい」

男は銀河の瞳を見つめて言った。

「ありがとうございます。なんだか話したら楽になりました。流石はカウンセラーの先生ですね」
「ははは、ありがとう。ところで、管理者はどう思う?」
「絶対の存在です。人々を守り、物資を確保し、分配し、治安を守る。それを行う凄い存在です。でも、殺しの命令だけは逆らっちゃいます。悪い人だから死んで良いっていう雰囲気には、中々慣れません」
「そっか、うん、君のことがよく分かった。これでカウンセリングは終了だ。付き合ってくれてありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございました」

銀河は頭を下げて、部屋を出る。
扉の横には花宮愛華が立っていた。壁を背にして腕を組んでいる。部屋から銀河が出てくるのを見つけると、薄い笑みを浮かべながら話しかけてきた。

「お疲れ様です。大丈夫ですか?」
「ええ、はい。この通り、怪我などはしていません」

その返答に愛華はジト目になる。

「違います。心の話。メンタルの話です。目の前で人が爆散するのを見たのでしょう? 辛くはないですか? 私で良ければ慰めてあげますが」

思ってもみなかった申し出に銀河は、自分の精神を探る。あの人が爆散するシーンを思い出して、何か思うところはあるだろうか? 特になかった。気分も良好で、問題はない。

「大丈夫です。僕……私は精神的なダメージを負っていません」
「僕で構いませんよ。それが素なのでしょう?」
「わかりました。僕を使わせてもらいます。花宮さんはここで何を?」
「貴方を待っていました。例の事件が終わった後、速攻カウンセリング室へ連れて行かれるんですから何かあったのかと思いました。だけど無事なようで良かったです」
「それはご心配おかけしました。見ての通り快調です。これからの予定は何かありますか?」
「何も。シェパード隊長が休暇申請をしてくれたみたい。完全にオフよ。私も貴方も」
「そうですか、では良ければ食事などいかがですか? 美味しいお店を知ってるんです」

そう銀河言うと花宮愛華は虚をつかれたような表情で固まった。

「僕が美味しいお店を知っているのがそんなに意外でしたか?」
「いえ、そっちではなく、私を誘った事にびっくりしたんです。てっきり銀河くんには嫌われていると思っていましたから」
「嫌われている? 何故?」

だって、と愛華は言葉を続けた。

「私はスコア稼ぎの為に助ける人を選びます。そして貴方は目の前の人を助ける直情型です。だから人の命を天秤にかけるなんて最低、くらい思っているのかと」
「確かに私は目の前の人を助けたがる人ですが同時に優先順位のこともちゃんと考えているんですよ。考えた上で目の前の人を見捨てられないだけで。だからスコア稼ぎとはいえ、的確に人を助ける愛華さんの事は尊敬してます」

その言葉に花宮愛華は頬を染めた。

「尊敬してるとか、そんな直接言って恥ずかしくないんですか?」
「特に何も。本当の事ですし。こうやって私の事も心配して部屋の外で待ってくれていたりと、とでも優しい人なんだと私は感じました」
「わかりました。わかりましたからそれ以上言わなくて良いです。誉め殺しにするつもりですか貴方は。早くその美味しいお店とやらに連れていって下さい」

銀河は一歩前に出て、愛華に手を差し出す。

「では姫、手を」
「ありがとう、ございます」

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