配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第7話 尋問

事件現場に着くと複数の治安維持部隊員が現場検証を行なっていた。黄色のkeep outを潜りながら、事件現場へ入る。すると、現場検証を行なっていた女性が、手を振りながら近づいてきた。

「やぁ、アイリーン待ってたわよ」
「誰ですか、アイリーンって。私は花宮愛華です」
「そうだったそうだった。愛華だったわ。まさか貴方が来るなんて驚いた。スコア稼ぎにならない命令は嫌いじゃなかった?」
「ええ、嫌いです。だからといって拒否し続けていては成績が下がってしまうでしょう。膨大な救命量で、ある程度の拒否権があるとはいえ、勝手ばかりは出来ません。管理者からの直接の命令なら尚更です」
「そうね、貴方の立場って結構危ういし、管理者の命令は聞けるうちに聞いておいた方が良いと思うわ。管理者は絶対だもの」

治安維持部隊員の女性の視線が銀河に移る。

「後ろの新顔さんを連れているのは偶々たまたま? それとも子守を押し付けられたの?」
「後者です。あのぐーたら上司、自分が楽する為に彼とペットを組ませたんです」
「ペット? 主従関係なの?」
「間違えました。ペアです。バディ。相棒。二人一組。ツーマンセル」
「ありゃりゃーのゃー。それは大変だね。任された新兵を死なせたとあっては成績に響く上に死神殺しの名が泣いちゃうね」

花宮愛華は頭痛を堪えるように、頭に手をやった。

「ちょっと待って。今なんて言ったのかしら。よく聞こえなかったわ」
「成績に響くって」
「その後」
「死神殺しの名が泣いちゃうね」
「死神殺し?」
「貴方の通称。絶体絶命の窮地に現れて華麗に命を救っていく姿から名付けられた名称。格好良いでしょ? 結構有名よ」
「一体どこの誰がそんな通称を……」
「私」
「子供の頃から続いた友情もこれまでね」
「待って、ちょっと待って。ごめん謝るからそれはやめて。こんなことで大切な友情を失いたくない」
「なら情報教えて。この事件で今わかっている事は?」
「ほい、送信」

魔法通信で情報が送られてくる。それを片手に女性が読み上げる。

「昨夜突如としてこの家でSCの反応があった。その反応を受けて治安維持部隊が出動するとリビングに愉快なオブジェを発見。一面真っ赤」

血は玄関先まで飛び散っていた。キッチンから大量の血液が流れ出している。

「被害者の名前はアンドルフ・ゴドルフ。調べたところ強盗と過剰暴行の前科があり。近隣の住民とはほぼ付き合いはなかった」
「どうして私達がこんな事件の担当を……畑違いも良いところなのでは?」
「さぁ? 全ては管理者様の思うままってね」

話している二人についていきながら銀河は周囲を見る。テーブルの上にはドラックが置かれており常用していたのがわかった。

「侵入の形跡は無し。物理は勿論、魔法的にも反応もなかった。だから殺して転移魔法で逃げたわけでもない」
「被害者を殺した凶器はどこへいったのでしょう?」
「謎。犯人が持ち去ったんでしょう。現場には残されていなかった」

銀河はクローゼットの中を開けてみる。中には衣類が散乱し、タバコが乱暴に放り入れられていた。整理はされていないようだった。机の引き出しにはアダルトな映像媒体がある。

「被害者には百ヶ所の刺し傷」
「百ヶ所!? そん、百ヶ所!? 刺し過ぎでは!?」

思わず銀河は大声を出す。それはあまりに常軌を逸していたからだ。
何とか今ある手札で、このシュチュエーションを脳内シュミレートできないか試行錯誤する。
被害者は、何かしらの凶器で全身を刺され、倒れた。その場所は血痕の量からしてキッチンから来た。

「犯人は相当恨んでいたみたいですね」
「それか、または意図しない刺し傷か」
「意図しないとは、一体なんです?」
「さぁ? 犯人に聞くしかないわね。話、続けるわよ」
「…………」

壁際に血濡れた手、倒れた椅子、散乱する家具、凹みがあるバット。そのバットには被害者ではない血が付いている。だが特定はできていない。強盗や過剰暴行の経歴から被害者は、暴力的な人物で先に手を出したのは被害者側だと銀河達は推測する。
裏口には足跡がない。犯人は逃げていない。どこかに隠れている。

「一旦纏めましょう。事件の始まりはキッチンです」
「そして容疑者はバットで被害者に襲われていた」
「そう。そして容疑者はSCを使い、被害者を一度刺した。だけど生きてた。浅かったから被害者は逃げたんです」
「机や家具が散らばっていたのはそれが原因ですね」
「そして被害者は転倒、その隙をついて百回刺して殺害したんです」
「おお〜、なんかそれっぽいね。情報は出揃ったし、私はここらへんでお役御免かな。あとは頑張ってね」

去っていく女性を見送って、銀河は言う。

「犯人はまだこの建物内にいる」
「その証拠は?」
「物理的に、魔法的に出入りした形跡がないからです。隠れているんです、例えば……そう」

そこでふと、梯子はしごの形に埃がついていない壁が目に入った。

「屋根裏部屋とか」

銀河は椅子を持ってきて屋根裏部屋へと突入する。自分の推理があっているのか一刻も早く知りたかったからだ。ガードジャケットを展開し、屋根裏部屋を乱暴にかき分けていく。そして突然、暗がりから飛び出してくる陰があった。

「待ってくれ」

そこにはボロボロは青年がいた。頭から返り血を被り、真っ赤だ。

「身を守っただけだ」

その容疑者の目には縋るようなものがある。

「お願いだ、見逃してくれ」

銀河は迷う。
どうしたらいい。加害者だが、被害者でもある。最初にバットで殴られたのは加害者だ。殴られた事に動揺した加害者はSCで反撃して殺した。
正当防衛――いや過剰防衛。このままでは罪に問われてしまう。罪に問うべき事柄だ。しかし同情の余地もある。この場で見逃すのは許されない行いだ。
綺羅星きらぼし銀河ぎんがに下された命令は殺人事件の調査だ。その結果、犯人を見つけたら報告しないわけにはいかない。なんせ管理者からの指令なのだから。
だけど、これではあまりに相手が可哀想だ。

「銀河さん、何か見つけましたか?」

下から愛華から声がかけられる。
苦々しく思いながら銀河は言葉を返した。

「見つけました。犯人です」



尋問室では、容疑者の尋問が行われていた。
銀河と愛華は治安維持部隊員による尋問が行われているのを強化ガラスの外から見ていた。
容疑者は血で汚れた服のまま座らされている。そして治安維持部隊員が首を振って部屋の外へ出た。

「駄目だ、何も話さない」
「このままだと推定有罪で死刑かな」
「それが手っ取り早くて良いんだけどな」

銀河は思わず立ち上がった。あまりに酷い会話だと感じたからだった。せめて正当な裁きを下して欲しいと思った。よく分からないから殺して終わり、なんて結末は認められなかった。

「私が尋問してみます」
「無駄だと思うが、まぁ頑張れや」

尋問室に入り、容疑者の対面に座る。

「僕は綺羅星銀河きらぼし、君の名前は?」
「……」
「なんという名前だ?」
「……」
「君は何者だ? 事件当時にバットで殴られた傷、火傷の跡……攻撃を受けていたのは明らかだ。SCについて協力してくれれば相応の対応をすると約束しよう」
「……」
「君はバットで殴られた事で動揺した。そして生命の危機を感じたんだ。だから殺した」
「……」
「怖かったんだろう。恐ろしかったんだろう。想像できる。君は攻撃されていた、理性の限界に来てSCを使って殺してしまった。そうだろう?」
「……」
「僕は君を助けたい。本当だ。だから話してくれないか? そうしないと力にならないんだ。頼むよ」
「……」
「……お願いだ。話してくれ」

容疑者は下を向いて俯いたまま黙り込んでいる。
銀河は何も出来ず、時間を浪費しただけだった。そして愛華が前に出て、銀河に言う。

「代わって下さい」
「わかりました」

愛華と場所を交換し、次は花宮愛華か尋問を担当する。

「このままだと拷問する事になります。痛いのは嫌ですよね」
「……」
「話さないなら、脳に直接聞いても良いんです」
「……」
「頭を裂いて、じっくりと。ノコギリで痛みを与えながら脳を抜いて。そして調べれば終わります。簡単な事です」
「……嫌だ! それだけは嫌だ! お、俺は一体どうなってしまうんだ?」

銀河は驚く。必要だったのは寄り添いではなく恐怖だったのだ。

「死刑になるのか?」
「貴方は管理者の許可なく人を殺した。それがどんな理由であれ重い罪が課されるでしょう。それを少しでも軽くする為には協力が必要なんです。だから喋って下さい」
「何故、なんだ。何故彼は俺を放っておいてくれないんだ」
「彼……というのは銀河くんの事でしょうか。彼は今回の事件の調査をするように管理者から命令を受けています。私もそうです。ただ任務を遂行しただけです」
「し、死にたくない」
「なら話して」
「それは、出来ない」

銀河は疑問に思う。彼は状況からいって間違いなく暴力をうけていた筈だ。それを話す事は彼自身の為にもなり、自分達の捜査も進む。お互いに良いところしかない筈だ。

「百ヶ所の刺し傷です。念入りに殺したかったのか、偶然そうなってしまった。でしょう? そこにはSCが関係している。喋ってくれなきゃ助ける事だって出来ません」
「もう、放っておいてくれ」
「そう。まぁ良いです。容疑がかっているのは貴方で、私じゃない。死刑になる。死ぬのは貴方です。わかりますか? 貴方は死ぬんです」

愛華は冷たく突き放すように言う。そして何度も「死」という言葉を繰り返した。すると無口だった男はポツポツと語り出した。

「俺は彼が持っていたSCを奪う為に無料クリーニングサービスを語って家の中へ入った。最初は普通だったけど、違法ドラックでおかしくなったアイツは僕に殴りかかってきた。そしてバットで殴られた。その時に咄嗟にやつのSCを奪い取り……結果はあの通りだ」
「その時奪ったSCはどこに?」
「分からない。光ったと思ったら消えていた」
「何故SCを奪おうと?」
「……そうしなければ、ならない。パイオニアの一員になる為には捧げ物が必要だったんだ」

暴行により同情的になっていた銀河だったが、その言葉を聞いて一気に反転した。
反管理者を掲げる魔装テロ組織パイオニア。それに入る為にこうなったのなら、自業自得だと、銀河は思った。

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