配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第6話 敵

救助した少女とその姉と食事を楽しんでいた綺羅星きらぼし銀河ぎんがは、途中で離席する事になった。直属の上司であるウィル・シェパードから呼び出されたからだ。プライベートを邪魔されて少し思うところはあったものの、人の命を助ける仕事をしているのだ。こういう事態は予測できたものだったので応じるのに時間は要らなかった。
姉妹の分も含めた支払いを済ませ、足早に魔装救助部隊の本部へ急いだ。
呼び出された部屋に入ると、そこにはウィル・シェパードが立っていた。
銀河は姿勢を正し、言う。

「綺羅星銀河一般魔装救助部隊員、到着しました」
「うん、ありがとう。プライベートを邪魔しちゃってごめんね。埋め合わせは必ずするから」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ行こうか」
「どこへですか?」
「多目的中央ホール」

多目的中央ホールは魔装救助部隊本部の直通トンネルで繋がっている『管理者』指令本部の地下に位置する場所にある巨大なホールだ。最大収容人数は無限で、耐震耐爆対魔可能が施された要塞と化している。入口には複数の監視カメラが設置され、防音加工によって魔法を使ったとしても外に情報は持ち出せない。
そこで行われるのは一体何なのか、説明されないまま多目的中央ホールにつくと、巨大なスクリーンに街の地図が映し出されていた。また集まっているのは普段では目にするのも難しいメンバーだった。

「1から8までの魔装救助隊のメンバーが勢揃いとは、かなり大規模ですね」
「魔装救助だけじゃない、治安維持や自衛部隊もだ。これだけの面子を集めて管理者は何を説明する気なのか」
「気になりますか?」
「気になるね。何か簡単な説明だけなら説明だけなら一括魔法通信で伝えれば一瞬だ。それをしないって事は魔法通信の傍受対策だろう。傍受、つまり敵がいる事は確実だ」
「人類の敵ですか? 宇宙人とか」
「さぁ。だけどそれらを想定している動きだ。考察するだけでもこれだけ出てくる。肝心の秘密にしたい情報、気にならないかい?」
「気になります」

銀河は頷いた。

・事故や災害時に救助を担当する『魔装救助隊』
・テロや反乱を防止し治安維持を担当する『魔装治安維持部隊』
・異次元の侵略者や異形の怪物などから街を防衛を担当する『魔装自衛部隊』

この三つの隊員がまばらに集まっていた。
やがて人でホールが埋まっていき、一定の人数が集まったところで扉が占められ、部屋全体が暗くなった。そしてモニターに『管理者』のロゴが映し出される。そして合成音声と思われる声がスピーカーを通して流れ出した。

『現在我々は、未だかつて経験したことのない未曽有の危機に直面しています』

そんな言葉から『管理者』の話は始まった

『外からは吸血鬼が、内部では『管理者』統治に対抗する反抗勢力がテロを行っています。そこで我々は全て戦力を投入し、事態の速やかな終息を求めます』

スクリーンに美形な人形の生命体が映し出される。そして人類の生存圏と自衛部隊を示す青いポイントと、敵性を示す赤いポイントがお互いを食い合うようにぶつかり合っている。

『まずは外部の敵吸血鬼です。金の髪に赤い瞳を特徴とします。単体で人間の八倍の身体能力を有し、一般人を圧倒します。また人間を下僕にする事で、数的不利を覆し、我々の生存権を脅かす戦力の一つとなりました。これに対し自衛部隊は長距離魔法砲撃による面制圧で対処します』
『現在は遅滞戦闘をする事で敵を足止めし、長距離魔法砲撃までの時間を稼ぎます。遅滞戦闘とはいいますが、現状、こちら側が有利です。やつらが人類の生存圏内に足を踏み入れる事は無いでしょう』
『吸血鬼だけでは我々を脅かす存在とはなり得なかったでしょう。鹵獲した吸血鬼のサンプルは今後の発展の礎となります。ですが問題があります。吸血鬼と同時に『管理者』には向かう叛徒が活発化しているのです』
「吸血鬼、実在するとは」
「魔法がある時点でファンタジーな生物がいても驚かないつもりでしたが、吸血鬼とは絶妙に厄介なところですね。不死身の化物とは」
「実際のところは『管理者』の支配領域外で禁忌の実験をして生み出した人造怪物だったりして」
「私は独自進化した新人類説を推します」

続いて特徴的な三角のマークを掲げた集団が表示される。顔をゴーグルとヘルメットで隠し、体の装備の周りには細かい性能などが書かれている。

『反抗勢力の名前は魔装テロ組織パイオニア』
(パイオニア……?)
「見たことある名前だね」

ウェル・シェパードは言う。それに銀河も頷いた。

「私が第08だいはちに来る原因になった事件の犯行グループですね」
「そうそうターミナル区役所テロ事件。命令違反出した上に死者57人出たから結構有名だよ」
『彼らは「管理者」からの解放を掲げながら、重要施設への襲撃を繰り返しています。それによって大勢の市民が亡くなっています。しかも襲撃者の九割が自爆特攻であり、彼らの情報を手に入れる事が出来ないでいました。しかし先日のターミナル区役所襲撃事件の際、犯人を確保し情報の引き出しに成功しました』
「手柄じゃないか」
「命令違反さえしてなければ勲章ものでした」
「そりゃあ残念」

スクリーンが切り替わる。
そこにはSCスタンドコアの情報が映し出されていた。

『パイオニアはこのSCを暴走させて、この街を崩壊させようとしています。ここにいる全員にはそれを頭に入れて動いて欲しく思います。これからは組織の垣根を越えて、全組織がSCの回収、暴走体との戦闘、パイオニアの殺害または捕獲が任務として発令されるでしょう。我々は一丸となってこの危機に立ち向かっていかなければならない事を胸に刻んでください』

管理者からその言葉で話は終わった。
銀河は最初にウィル・シェパードと話した事を思い出した。

(傍受されたくない秘密っていうのは我々がSC確保に本腰を入れるという部分か。もしそれがテロ組織のパイオニアに伝われば今以上になりふり構わない行動へ出かねない)



『第08魔装救助部隊待機室』に綺羅星きらぼし銀河ぎんが、ウィル・シェパード、花宮愛華が集まっていた。
花宮愛華はつまらなそうに言う。

「吸血鬼はまぁ情報共有の一環で良いとしても、テロ組織とかの相手までさせられるのは不服です」

ウェル・シェパードは苦笑いを浮かべる。

「まぁ、うん、愛華ちゃんはそうだろうねぇ」
「安全で、簡単で、大量にスコアを稼げるから魔装救助部隊に入ったのに……現実には危険なテロリストの相手をさせられたりで前情報とは違いすぎて吐き気がしてきます。もーいやー」
「あははは、残念。残念。でも辞める気はないんでしょ?」
「それは無いですね。この仕事をやめるデメリットが多すぎます。だったら嫌で危険でもテロリストを相手にした方がマシです」
「昔は人を救う使命に命をかけていた愛華ちゃんが、今ではスコアの鬼とは僕は悲しいよ……よよよ」

その言葉に銀河は衝撃を受けた。思わず「え」と小さく声を漏らした程だった。

(安全で簡単で大量にスコアを稼げる、なんて言っていた彼女が昔は人を救う使命に満ちていた……?)

銀河が疑いの視線を愛華に向けると、呆れた表情で二人を見る。

「それは一体いつの話だというのでしょう。その話はしないでください。黒歴史です。甘ったれてた頃の私です。不愉快です」
「私としては非常に興味をそそられるワードなので、ぜひとも話を聞きたいですね」
「と、いってるけど?」
「駄目です」
「じゃあ駄目だね、本人の同意なしに喋るわけにはいかない」
「残念です」

と、そこでウェル・シェパードの元へ魔法通信が入った。応答を終えて、彼は真剣な表情で言う。

「殺人事件が起きた。その調査の指示が下った」

花宮愛華は顔をしかめて言った。

「それ絶対魔装救助部隊の仕事じゃないです」

その言葉に銀河もウェル・シェパードも同意した。

「なんか管轄違う気がするけど命令は命令だ。管理者様からの命令とあっては従わないわけにはいかない。さぁ、頑張って調査報告書を持ってきてくれ。僕はここで待ってるから」
「え、一緒に行かないんですか?」
「え、むしろ何で行くと思ったの?」

唖然とする銀河の肩を花宮愛華が優しく叩く。

「彼はそういう人です。スコアにならないのでやる気が起きませんが、やらないと評価が下がります。それは困るので、行きましょう」
「……わかりました」

銀河は心の中で思った。
ここは狂人の職場だ、と。
一人は一見まともそうだが救助部隊にいながら仕事をほぼしない狂人。
もう一人はスコア至上主義の冷血の狂人。
そこに並ぶのは感情優先の命令違反野郎か、と自虐する。

命令違反――もし人間の命が掛かっている場面で、救わない命令をされた時、自分は一体どうするのだろうか? また命令違反するのか、それとも今度は見捨てるのか、自分でも想像が出来なかった。

「何してるんですか? 行きますよ」
「すみません、すぐ行きます」

先に歩いて行く花宮愛華においてかれない為に、銀河は走って後を追った。

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