雲の静けさを照らすように

上原家

ep9 : 今年2人目

八雲「あー疲れたー。」

8月上旬、午前11時を回ったところ。
朝起きて何もしていなかった俺に母親の容赦ないお手伝いタイムが終わったところだった。自分の部屋の片付け、風呂掃除、靴洗い、ついでに買い物まで。

八雲「せっかく8時に起きれたのになんだこの仕打ちは。」
弥生「あーお疲れ八雲。100円置いとくからジュースでも買っておいで。」
八雲「今どき100円じゃジュース買えないっての〜。」

俺は100円を財布の中に入れ、部屋でゆっくりすることにした。
それから1時間以上経った12時半過ぎ。

弥生「八雲〜、新くんから電話よ〜。」
八雲「はいはーい。」

シンから電話がきた。内容は図書館でゆっくり話すと言ったので、俺は図書館に向かうことにした。

八雲「まだ暑いのになんでまた図書館なんだよ。」

図書館に着いたときは汗だくだった。入り口のところには、すでにシンがいた。

新「八雲ー!。ここにおるぞー!。」
八雲「いや遭難者かよ。」

入り口へと足を運ぶ。

新「いやー、悪い悪い。せっかくだから調べものしようと思ってよ。」
八雲「調べもの?。」
新「旅行!昨日弥生さんから許可もらっといたんだ。」
八雲「え!?。」

会って早々にとんでもないことを言い出すシンであった。聞くところによると昨晩母親同士が話している際に、シンが沙由里さんにいろいろ頼んで仕組んでいたらしい。確かに仲良しな母親は、長電話することも多かったりする。

八雲「こんなときに旅行ってなんだよ。誰といくんだ?。」
新「そりゃ俺らだけじゃ無理だから八雲のママさんらに連れてってもらうしかないじゃん。あとは知り合い何人かで連れてさ。」
八雲「俺に知り合いとかお前くらいしかいないよ。だいたい店とかどうすんだよ。」
新「大丈夫大丈夫。こういうときのために、うちの母さんたまに休日とれるようにしてるから。毎年何日かは休みとってんだって。」
八雲「マジか〜。てか俺『星の観察』あるんだけど!?。」
新「それは旅行先でも観察できるだろ。」
八雲「同じ場所でやるから違いが細かくわかんの!!。」
新「まぁたまにはいいだろ。八雲はそれ以外は暇なんだろうし。ここで努力して人と話せるようになれば、友達100人夢じゃねぇだろ!!。」
八雲「そんな努力、絶対報われねぇよ。ちょっとは俺の身にもなれよ。」
新「心配すんなって。いざというときは俺がいる!!!。」
八雲「そういうときのシンは8割頼りにならんと思う。」
新「なんか言ったか八雲!!!!。」
八雲「だから大きな声出すなって。」

図書館に入り、俺たちはあいてる席についた。夏休み中ということもあり、図書館には相変わらず親子連れが多く、子どもがたくさんいた。

八雲「子どもがいるのは仕方ないけど、なんでこうも人が多いかね〜。」
新「そらそういうところだからでしょ。」

人が多いところは嫌いだ。別に誰かに嫌な思いがあるとかじゃないけど、人と接することがそもそも嫌いな俺には、たとえ静かな図書館であっても嫌な感じがする。



シンと旅行の話をしている最中、俺は嫌気を最大限に隠しつつ聞いていた。

新「そんで旅館に泊まりつつ、一緒になった子とドキドキな体験がしたい!!。この旅行にはそういう意図もあるわけよ。」
八雲「さっきまで俺の人見知りを解消するための話してなかったか?。」
新「それは八雲のためのもので、これは俺の問題ってやつよ。」
八雲「わかったわかった。とりあえずいかなきゃ訳のわからん愚痴を聞かされるってやつだな。」
新「そうは言ってないがそうなる可能性もあるな!。」
八雲「へいへい。ちょっと本でも探しに行くわ。」
新「ちょ、、おい!まだ話は、、。」

すたこらさっさと俺は星座に関しての本を探しにいく。

八雲(あんな旅行と自論を何時間語られても困るっての。)

そう思いながら俺は本を探す。しかしなぜかこの前勉強したときに見た本がいつもの場所になかった。

八雲「確かここだったはずだけど、場所変わったなんてことないよな。」

探しているそのときだった。

晴美「何かお探しですか?」
八雲「え?」

勉強のときと同じ人に話しかけられた。
今年2人目の出会いというやつなのか。
そんなことを考える暇もなく、人見知り俺はこの後あたふたするのであった。

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