雲の静けさを照らすように

上原家

ep5 : サイダーの奇跡は.....

星空「……もしかして………上原君?」
八雲「え?」

そこには今日買い物で見つけた原宮さんが立っていた。

星空「やっぱり。何してるのこんなとこで?」
八雲「えーと……少し星の観察を。」
星空「星?」

原宮さんが真上を向いて空を見あげる。

星空「確かにちょこちょこ見えるけど、雲ばかりじゃない?」
八雲「そうだね。今日雨降ってたから。でもあそこに雲がないとこあるじゃん。」

俺は雲のない場所を指さす。

星空「あ、ほんとだ。綺麗〜。」
八雲「だね。」

原宮さんと話しながら、夏の大三角が現れるのを待っていた。

八雲「原宮さんはこんな時間にどうしたの?」
星空「私?私は夜風にあたりに来ただけ。私の家、あのマンションだから。」
八雲「え!!あの高級マンション!!!」
星空「そ、意外だったかな?」
八雲「意外も何も色々驚いた。この辺に住んでるってのもそうだけど、お金持ちだったとは……。」
星空「そうでもないよ。まぁお父さんが社長だからかな。」
八雲「今日一驚きました。」

原宮さんと何気ない話をしてると夏の大三角が見えてきた。もちろん雲のせいで綺麗な三角形とはいかなかった。

八雲「やっぱり今日はこんなもんか。」

手に持っていた双眼鏡を覗き込んで確認する。そして落胆する。

星空「何か見えたの?」
八雲「まぁね。夏にはデネブ、アルタイル、ベガっていう星で結ばれる『夏の大三角』があるんだ。細かくいうともっと星座が見れるんだけどね。」
星空「なんかそれ聞いたことあるかも。」
八雲「まぁこと座が見れただけでも良しとするかな。」
星空「こと座?どれ?」
八雲「見てみる?えーとね…」

俺は原宮さんに、こと座について簡単に説明した後、星の観察板を使って形を見せてあげた。原宮さんはそれを見て、俺の持っていた双眼鏡を覗き込んだ。

星空「あ!ほんとだ!あるある!!綺麗〜。」

原宮さんが双眼鏡で見ている間、俺はふと我に帰った。夜空を眺めながら………。2人きり………。相手は1年生の中でもトップクラスに可愛い……………。

八雲(あれ?これってシンの言ってた………青春!!!!)
八雲「いやいや!!そんなわけないっしょ!!」
星空「びっくりした!!どうしたの?」
八雲「あぁ、ごめんごめん。こっちの話です。なんか喉渇いたわ。なんかいる?」
星空「え?いいよそんなの。」
八雲「全然大丈夫だよ。遠慮しないで。」
八雲(多めに持ってきて良かった〜。)
星空「ほんとに?じゃあ……」
八雲「あ」

俺は占い番組のことをふと思い出した。

八雲(まさかサイダー?)
星空「リンゴジュースで!」
八雲「…だろうね。」
星空「え?もしかして私がリンゴジュース好きなの知ってた?」
八雲「いやいや、ごめんまたこっちの話。」
星空「?ならいいけど、」
八雲「じゃあ買ってくるわ。ちょっと待ってて。」
星空「うん。ありがとう。」

俺はかけ足で自動販売機に向かう。

八雲「時間大丈夫か聞いとけばよかったかな。」

肝心な気遣いのない自分を初めて悔やんだ。

八雲(シンの時はこんなこと絶対なかったからな。)

大事なお小遣いを誰かのために使うのは生まれて初めてだった。リンゴジュースを買うとピピピッと音が鳴った。どうやら当たりがでるともう一本おまけで出る自動販売機だったらしい。

八雲「あ、サイダーがある。」

まさかとは思った。結果は見事にはずれ。

八雲「まぁ俺の人生はそう上手くいくもんじゃないしな。」

自分の分のオレンジジュースを購入する。また音が鳴る。さっきと音の鳴り方が違う。今度こそ!

八雲「まさか!幻の奇跡が!!」

もちろんはずれた。
そう幻に終わったのだ。

八雲「はぁ、どこに神頼みしてんだか。」

俺は2つの缶ジュースを持ってかけ足で戻る。そういえば何故かけ足なのだろうと疑問に思う。

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