雲の静けさを照らすように

上原家

ep1 : 俺の人生

俺の名前は上原八雲(うえはら やくも)。今年都立神氷学園の中等部1年生として入学した俺は、初等部のころはなんの面白味もない学園生活を送っていた。
早速だが俺はクラスで浮いている。運動神経はそこそこ、勉強はあまり得意ではない。加えて友達作りや部活に入ることは避けてきた。クラスの中では、いじめられっ子の一歩手前と言ったところかな。まぁそうはいってもこのクラスというか、この学校にはいじめ反対派がかなり強い為、揉めることは多々あってもあからさまないじめはない。
その中で俺はいわゆる「感じの悪い人」というレッテルを貼られている気がする。ただこんな俺にも、家族がいれば、友達もいる。帰る家もあれば、遊びに行くこともある。ただただそれが頻繁に行うことがないだけだ。



八雲「もうすぐ夏になるなぁ...」

通学途中の俺はふとつぶやいた。俺は四季の中で夏が一番好きだった。

八雲「もうすぐ大三角が現れる時期かな。」

特に自宅か学校の屋上で自分の望遠鏡を使って見る星空の観察は格別に気持ちのいいものだ。過去は良くないことばかりで面白くない生活をしていたが、小学3年生のときにやった「星の観察」はとても思い出として残っている。そんな趣味と少しばかりの絵心が俺の支えになっているのかもしれない。

新「八雲!おはようさん!」
八雲「おはよう、シン。」

コイツの名前は溝内新(みぞうち あらた)。俺は「シン」と呼んでいる。入学当初に仲良くなってずっとつるんでる友達だ。定食屋の息子で母親と姉との3人暮らしをしている。将来は母親が経営している定食屋のあとを継ぐらしく、将来は安定だとさ。ちなみに父親は他県にでて機械系の部品会社をやっていて、俺もよく望遠鏡の修理をお願いしていた事がある。

新「やっぱり晴れの日は気持ちがいいわー。夜はちょい肌寒いけどな。」
八雲「そだなー。」
新「ったく、今日も相変わらずテンション低めだな。ここ最近お前さんがハイテンションになったのって去年の『冬の大三角』を見たとき以来じゃないか?」
八雲「そうか?まぁあれはスッッゲェ綺麗だったな。」
新「あのな、俺らも中学生になったんだから星の観察以外にも趣味見つけろよ〜。」
八雲「中学生で星の観察が趣味のどこが悪いんだよ。そもそもそれ以外の趣味ってどんなだよ。」

俺はあくまでも否定的だ。あの夜空を見て『綺麗』の一言で片付ける奴が信じられない。バカにされてる感じを出されるとかなり不機嫌になる。だからこその「感じの悪い人」なのだろうな。

新「悪くはないけど、もっとこう恋愛だとか青春を堪能するようなさー。入学してから人と絡んだとこ見ねえし。」
八雲「そんなのお前だけでいいだろ。帰って勉強するんだから優等生じゃねぇか俺。」
新「星の勉強だろそれ。第一この前ママさんに成績もあんまりなんだからもっと学校の勉強もしなさいって言われたばっかりだろ」
八雲「うっ...それを言うなよ。」

そんなことを話しながら俺はまた学校に行く。

八雲(やっぱりなんかつまんねえけど、そんなものだろうなぁ、俺の人生。)

俺は自分の人生がつまらないものだと決めつけていた。でもそんな事はない。良いことも悪いこともすべてが有り難いのだと気付かされた。
そう。あの子に会ってから………

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