あかいトカゲのゆめ
3本足の神様
「…足を1本切って、ヤマトには3本足になってもらうんだべ…」
ヤマトくんは青褪め、ガマは大笑い。
茨男は咳払いして、話を続けます。
「コッチに来るとき、トカゲに噛まれたろ?
あれでおめえさんの中の神様がいなくなっただべ。
神様はココさ来れねぇからな。
もし神様になりゃあ、この世界から追い出される。
そして、3本足のカエルは神様だ。
つまり、あの井戸の前で、足を切りゃあ」
「まぁまぁ!
難しい話は置いといて、帰れるんでしょ?
よかったじゃない!」
と、笑いを堪えきれなくなったガマが遮って言いました。
「それにしても、あなたが足を切るなんて、ちゃんちゃらおかしいわよね?ヤマトくん?」
ガマはニヤニヤと、ヤマトくんの顔を覗き込みます。
「あんなにトカゲのしっぽ切りを見たがったあなた自身が、足を切るなんてね!ふふふ。
まぁ、『死ぬわけじゃない』から平気よね?」
ヤマトくんは、後ろめたくて、恥ずかしくて、キュウっと縮こまりました。
すると、
ゴツンっ!
「イタっ!」
とうとう茨男が、ガマに拳骨を落としました。
「ヤマトの贖いは済んだって言ったべ。
おめぇはいい加減にしろ。
わりな、ヤマト。
コイツも悪気は………あっけど、勘弁な」
「痛ーいっ!何よ?!偉そうに!
いっつも放ったらかしだったくせに、何?
保護者面でもするつもり?!」
頭を擦りながら、睨みつけるガマに、茨男はポツポツと返します。
「…おらは、意地悪で欲張りなおめぇがでぇきれぇだ。
でも、さっきのおめぇの言葉を聞いて、放っぽっとくのは、辞めようと思った…。
おめぇもこの世界の一員だからな…」
「…何よ、今更…」
ガマは小さい声で、消え入るように呟きました。
「それで、ヤマト。
痛えけど、我慢できるか?
って、うへ?!どうした?」
ふと見ると、ヤマトくんは汗…ではなくて、毒の汁でびっしょり…。
毒といっても、分泌液です。
「ごめん、足を切るのが怖くて、汁が出ちゃった…。
ほら、今の僕の体はヒキガエルだから…」
苦笑いして呟く彼の体は、ブルブルブルブル震えています。
そんな彼を見かねてか、ガマが口を開きました。
「他にはもう方法はないの?」
さっきまで、クスクス笑っていたとは思えない、乾いた声でした。
「おらは知らねえ。
…ただ、もし切るんなら、別の影のトコに行かねぇとなんねぇ。
もしかしたら、そいつは他の方法を知ってるかもしんねぇ」
「じゃあ、そこへ進みながら、考えましょう。
足を切るか、このままヒキガエルとしてここで暮らすか、それとも別の道があるのか」
そう言うと、ガマはハンカチをヤマトくんに差し出しました。
ポケットに入っていたヤマトくんのハンカチです。
ヤマトくんは、顔をゴシゴシ擦って、立ち上がりました。
「…その影は何処にいるの?」
コメント
みづあり
別の影って!??
ヤマトくんは帰られるんでしょうか?
ガマさんは?
続き楽しみにしてますね!
まあちゃん
ガマさんの心の背景が、漸く見えてきましたね。ヤマトくんのハンカチを差し出す辺り!憎めない奴です!!