あかいトカゲのゆめ

おくとりょう

やっぱりかえる

わたしね、ここにはげてきたの…。
でも、もう…かえりたいのよ…」

うちかえるための井戸いどはもうまえ
それなのに、そこにはあのヒキガエルがかまえていました。

どこかとおくをつめるようなをして、
くらそら何処どこかをつめるようなをして、彼女かのじょはなはじめます。

「…ずっとむかし、ちょっと泥棒どろぼうをしちゃってね…。
それで、ここにはげてきたの。
そう、わたしはヤマトくんや茨男いばらおとこみたいにちてきたわけじゃない。
自分じぶんたの。

でもね、こっちの世界せかいにも、もうきちゃった…。
ウサギたちおどってばかりだし、影達かげたちわたしには見向みむきもしないし…。つまんない…。

もうそろそろかえりたいの」

ほしさがすように、夜空よぞらている様子ようすは、懺悔ざんげをしているみたいにも、わけさがしてるみたいにもえました。

「でも、この姿すがたじゃ、もうもと世界せかいかえれないじゃない…?
どうしようかしら?っておもっていたところへ、あらわれたのが…あなたよ、ヤマトくん」

夜空よぞら見上みあげながら、つらつらと語っている彼女は、チラっとヤマトくんに視線しせんけました。

かげと、はぐれちゃったヤマトくん。
おじいちゃんにしかられて、ねちゃったヤマトくん。
トカゲのしっぽをりたいヤマトくん。
元気げんき自由じゆうおとこ素敵すてきよね。

だから、あなたの姿すがたもらうことにしたの。
でも、タダでもらうのは、流石さすがもうわけないから、かえみちおしえてあげたの。

それに、何度なんどうようだけど、“姿すがたもらう”ってっても、あなたをべたり、ころしたりするわけじゃないのよ。
もちろん、かわがすような、いたいこともしないわ。

ただ、わたし姿すがたがあなたの姿すがたになるだけ。
そして、あなたにはわりに、そうね…」

そうって、彼女かのじょがパチンッとゆびらすと、ヤマトくんはなんだかがむずむずしてきました。

「このヒキガエルの姿すがたをあげるわ」

ドキッとして、ると、皮膚ひふがザワザワになっていて、ゆび四本よんほんになっていて、そして水掻みずかきが出来できていて…。

「これじゃあ、あなたがかえれなくなっちゃうって?

でも、大丈夫だいじょうぶよ。」

パッとかえり、微笑ほほえんだ彼女かのじょて、ヤマトくんはハッといきみました。
そこにいたのは、先程さきほどまでのおおきなヒキガエルではなく、いつもかがみなか自分自身じぶんじしん、ヤマトくんそっくりそのままの姿すがたおとこでした。

「…わたしがあなたのわりに、ちゃんとおうちかえってあげるから!」

コメント

  • ノベルバユーザー511237

    優しすぎだよ。
    帰れないの?おじいちゃんが心配してるよ。

    3
  • まあちゃん

    えーっ!そんな〜!!
    ヤマトくんピンチ!!

    4
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