能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

長かった修行を終えて

「お二人さん! ようやく見えてきたぜ、ノースガルドの街が!」

森を貫くように整備された見晴らしの良い街道。

その中央を、列を成した馬車の集団が騒々そうぞうしく快走している。

そして、その先頭で馬を操り、振り返りながら声を張り上げる男が一人ひとり

俺は、その言葉に反応して、屋形やかた部分で寝そべっていた身体をゆっくりと起こした。

「ありがとな、おやっさん。送ってくれて助かった。……その上、お転婆てんば娘の面倒も見てくれたし、お陰で静かに寝られたよ」

「なぁに、気にすんな。こんな別嬪べっぴんな姫さんの相手をしながら走れたんだ。むしろ役得ってもんさ。ウチのわけぇ連中なんて血涙まで流して悔しがってたしな、ガッハッハ!」

「そう言って貰えると有りがたい。……それにしても、出会った時はモンスターだ何だと大騒ぎだった癖に、今となっては骨抜きにされてんだから現金な奴らだよなぁ。おやっさんだけは最初から普通に接してくれたけどさ」

伊達だてに長生きしてねぇからな。これも経験の差って奴よ。それにしても、あの時はマジで助かったぜ。兄ちゃん達が来てくれなかったら今頃どうなってた事やら」

そう言って、過去を思い起こすような遠い目になる、おやっさん。

俺も、それにられるようにして、ぼんやりと窓の外を眺めた。

思い返せば、この世界に召喚されて、既に1ヶ月半もの月日が流れている。

辛く厳しい緋熊ひぐまとの戦いに勝利し、フェアリーの特性に気付いた俺達は、先を見据みすえた鍛錬たんれんに明け暮れた。

そして、自分達で設定した、とある課題を達成して、手応えをつかんだ事で、先に進む決心がついたんだ。

そして、森を出てすぐに、おやっさんが率いる商人集団と遭遇そうぐうした。

モンスターに襲われ、パニックになっていた所を助けた事が切っ掛けで、こうして旅を共にする事になった訳だ。

といっても、王都ミッドガルドの北に位置する最寄り街――ノースガルドに辿たどり着くまでの期間限定だけどな。

「困った時は、お互い様だろ? それに俺達の方こそ、こうして世話になってるんだから気にする事ないさ。美味い飯も御馳走ごちそうになったし、温かい寝床も用意して貰って、至れり尽くせりだったからな」

「そりゃあ、こっちのセリフよ。兄ちゃん達みたいな腕利きにタダで護衛して貰った上に、むさ苦しい男所帯が華やかになったからなぁ。お陰で旅にうるおいが生まれたってもんだ。なぁ、姫さん♪」

自分の頭の上に腰掛けているフェアリーに、猫なで声で話しかける、おやっさん。

オッサンのびる声なんて、普通なら気持ち悪く感じる所だけど、おやっさんの場合は不思議と不快感がないんだよなぁ。

ちなみに、改めて言うまでもない事だけど、“姫さん”とはリリィの事ではなくフェアリーの事だ。

リリィの正体については伏せているから、当然と言えば当然だけどさ。

そして、姫と呼ばれて、ご満悦まんえつな様子のフェアリーは、おやっさんのスキンヘッドの上でピースして見せてくる。

初めて会った時から、あの頭が気に入ったらしく、俺の肩や頭に乗ってない時は大抵あそこに居座いすわっているのだ。

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