能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

経験値の謎

「……もしかして、この劇的なレベルアップは、お前が関係してるのか?」

「…………(ドヤっ!)」

ただでさえ張っていた胸を、上半身をらすことで更に張り、これでもかとドヤ顔を披露ひろうするフェアリー。

が、無理な体勢を取ったせいで、バランスを崩してしまい、頭から落っこちる。

「わわっ、危ないです!」

そんなフェアリーに向かって、慌てて両手を突き出し、何とか回収するリリィ。

まぁ、フェアリーは自力で飛べる訳だし、墜落する前に立て直せたと思うけどさ。

それに、仮に地面にぶつかったとしても、フェアリーが物理ダメージを受ける事はない。

それでも、咄嗟とっさに身体が動くなんて、やっぱり、リリィは優しいよな。

「こらこら、あんまり無茶してリリィに心配かけるんじゃないぞ?」

取り敢えず、調子に乗ってポカをやらかしたフェアリーを指でつついて軽く注意しておく。

今みたいに、周囲に危険が無い場合は問題ないけど、モンスターが居る時にヘマをされると、フォロー出来ない可能性があるからな。

俺だって、フェアリーの事は娘みたいに可愛がってるし、一つの油断で取り返しの付かない事に……なんて事にはなって欲しくない。

「…………(ビシッ!)」

そんな思いが通じたのか、リリィの手の平で敬礼を見せるフェアリー。

だけど、女の子座りしつつ、小悪魔っぽくペロッと舌を出ながらやっているので、今ひとつ本気が伝わりづらい。

「……ホントに分かってんのかねぇ?」

「きゃっ、あははっ。フェアリーさん、くすぐったいですよぉ」

「…………(スリスリ♪)」

フェアリー的には、あれで反省の色を示したつもりなのか、俺の渋い表情かおには見向きもせずに、リリィとイチャついている。

まっ、この件については、もういいか。

そんな事より本題に戻ろう。

「……それで、具体的には何をやったんだ? もしかして、俺達の知らない所でモンスター退治でもしてたのか? その経験値が俺に反映されたとか?」

自分で言っておいて何だけど、恐らく、それは無いと思っている。

何故なら、この世界の経験値はモンスターを倒した者の総取りとなるからだ。

いかにパーティーメンバーと協力して戦っていようと、経験値を得られるのは最後に攻撃を加えた、一人のみ。

つまり、いくらフェアリーがモンスターを倒しても、俺がレベルアップすることは無い……はず。

「…………(ふるふる)」

そして、案の定、フェアリーは首を横に振る。

それは予想していた通りだけど、だったら何をしたというのか。

「ん? なんだ、外に行くのか?」

俺の元に飛んで来たフェアリーが、服のそでをくいくいっと引っ張って、洞窟の外へとうながす。

正直な所、もうかなり眠いから、出来れば明日にして欲しいんだけど、こっちから話を振っておいて断るのも申し訳ないか。

「行きましょう、ハヤト様。このままだと、どっちみち気になって眠れませんよっ」

まるで俺の心の内を見抜いたように、リリィが助言してくれる。

わざわざ付き合わせるのも悪いし、リリィには先に寝ていてもらおうかと思ってたけど、まさか先手を打たれるとは。

「……んじゃ、行ってみますか」

「はいっ」

「…………(♪)」

こうして、俺達はフェアリーにいざなわれ、白み始めた空の下を歩き出したのだった。

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