能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

羞恥地獄と新たな扉

「あっ、そうだ! 他にも色々な場面を見てたんですよ! 例えば、ほら、緋熊ひぐまを湖に誘い込んだ後の開戦宣言! 『さぁ、第2ラウンドは水遊びと行こうぜ?』って言ったハヤト様、すごく格好良かったです! 特に、水が苦手な緋熊と湖で戦うのを【水遊び】って表現した所とか、絶妙に皮肉が効いてますよねっ!」

「いやぁぁぁ!? わさわざ解説とか止めてくれ! 恥ずか死ぬ! つーか、ぜんぜん格好良くないから!」

どうやら、またしても、俺が格好つけた場面をピンポイントで見られてたらしい。

違うんだ! あの時は気分が盛り上がって、つい調子に乗っただけなんだ!

決して、厨二病が再発したとか、そんなんじゃないんだ!

と、心の中で言い訳しつつ、あまりの羞恥しゅうちに頭を抱える。

しかし、そんな俺に対して、リリィは容赦ようしゃなく追撃を仕掛ける。

「またまたぁ。そんな謙遜けんそんしなくても良いんですよ? それに他にも格好良いセリフが、一杯あるんですから! あの『うらむなら好きに恨め。俺も仲間を傷付けた、お前を恨み続けるから』って奴とか! 一方的に相手を責めるんじゃなくて、相手の殺意を受け止める辺りにふところの広さを感じます!」

「いや、もう、ホントに勘弁かんべんして!? 俺のライフは、もうゼロだよ!?」

「えっ、それは大変です! 急いで回復しますね!」

「そういう意味じゃねぇよ!? 放っておいてくれってこと!」

というか、それはHPであって、俺が言ってるのとは別物だ。

「じ、じゃあ、最後に一つだけ! 緋熊に追い詰められて絶体絶命のピンチになった時に呟いた、『……こんな事になるなら、もっとリリィと話しておくんだったな』って言葉! そんな時まで私の事を考えてくれてたなんて涙が出るほど嬉しかったです!」

「ぎゃあああ!? 色々と思い出して、思わず泣きかけた、あの場面まで見られてたのかよ!」

俺は、とうとう羞恥心に耐えられなくなり、ゴロゴロと地面を転がり回った。

さすがに、あの湿っぽいモノローグまではバレてないだろうけど、それでも恥ずかし過ぎる!

「……ど、どうしてでしょうかっ。私、ハヤト様の悲鳴を聞いていたら、なんだかゾクゾクしてきちゃいました!」

無様に転げ回る俺の醜態しゅうたいを見て、なにやら、新しい扉を開いてしまった様子のリリィが、目をキラキラさせて、興奮をあらわにしている。

若干じゃっかん、呼吸が荒くなっているし、顔も赤い。

……なんか、ホント、俺と行動するようになってから、リリィが、どんどんイケナイ子になってる気がするなぁ。

王城で初めて見た時は、大人しくて、はかなげで、まさに薄幸はっこうの美少女って感じの女の子だったのに。

まぁ、怪盗に憧れを抱いてたり、悪ぶってみたい願望を持ってたりと、素質自体は元からあったのかも知れないけど、何となく責任を感じてしまう。

というか、いつか城に帰った時まで、こんな調子だったら、俺が王様にぶん殴られるような気がするな。

……せいぜい、それまでに覚悟を決めておくとしよう。

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