能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

犯行の詳細

「先程も言ったように、私は探し物の話をされた時から薄々、気付いてました。これは私を危険から遠ざけようとするハヤト様の企みだと」

「ああ。だけど、本当に探し物を必要としてる可能性も捨てきれなかった。そこで、望みの薄い森での採取を早々に諦めて、街に向かったんだよな?」

「はい、アレが希少な物だというのは分かっていましたから。それでも王都なら取り扱っている店もあるはずと思いまして。まずは、あの街で最も有名な商会の大型店を覗いてみたのですが……」

「当てが外れたと。その店では取り扱ってなかったか、あるいは在庫が切れてたとか?」

「さぁ、どうなんでしょう? とにかく、その店では目当ての品を手に入れる事が出来ませんでした。……と言いますか、そもそも中に入る事すら叶わなかったんです。その店舗は営業時間が長い事でも有名でしたが、流石さすがに日付が変わる頃には閉店してたみたいですね。一応、深夜警備に当たっていた方に掛け合ってみましたが、当然、入れて貰えませんでした」

あはは……と力なく苦笑し、肩を落とすリリィ。

まぁ、そりゃそうだよな。

あるいは王族としての身分を明かせば、無理を通せたかもしれないけど、そんな事をしたら大騒ぎになるに決まってる。

呑気のんきに買い物してる場合じゃなくなるだろう。

「それで、別の店を探したのか? と言っても、あの時間じゃあ営業してる店なんて見つからないだろ?」

「はい、その通りです。それから街を駆け回って何軒も覗いてみましたが、どこも既に閉店していて。……私はあせりました。このまま時間だけが過ぎていって、ハヤト様の身に、もしもの事があったらと。そんな不安と戦いながら頭をフル回転させ、悩みに悩んだ末に、一つの天啓てんけいを授かったのです! “扉が閉まって入れないなら、壊してしまえば良いじゃない”――と!」

「おい、憧れてた怪盗の“スマートさ”は何処どこに消えた!?」

というか、天の啓示っていうより、悪魔のささやきっぽいんだけど!?

夜の街をめぐる内に、何か変なモノに取りかれてないだろうな!?

「そうは言いましても、私は怪盗のように華麗かれいなピッキングなんて出来ませんし、仕方ないじゃないですかっ」

「仕方なくねぇよ!? つーか、いくら代金を置いてきた所で、器物損壊と不法侵入で普通に犯罪なんだけど!」

「ところがどっこい! 店には入らず、光魔法の応用で鏡を作って中を覗きましたし、目的の品を見つけた後は風魔法で商品を手繰たぐり寄せ、代金を置いて来ましたから問題なしです! あと、壊した扉や窓は修復魔法でバッチリ元通りですから!」

「ああ……。こんな所で王女のハイスペックが無駄に発揮されるとは……」

それにしても、“ところがどっこい”ってきょうび聞かねぇな……と、どこかで聞いたようなセリフが頭に浮かぶ。

というか、“きょうび聞かない”って表現もきょうび聞かないけどな。

……それはそれとして、今回の一件をにリリィの倫理観が、ぶっ壊れていきそうで怖い。

それに、衛兵とか騎士団にバレたら指名手配とかされる恐れもあるし。

とはいえ、元はと言えば俺がリリィの不安をあおってしまったのが原因だし、手段を選んでいられない緊急事態だった(と、その時のリリィが思っていた)のも事実だ。

仮に罪に問われる事になったら、俺も一緒につぐなうとして、これ以上、リリィが道を踏み外さないように気を付けるとしよう。

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