能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜
叶うなら
「……フェアリー」
うっかり涙が溢れないように、天を仰いで耐える俺。
その唇から、彼女の名前が無意識に溢れた。
いや、今更だけど“フェアリー”は種族の名前であって、アイツ個人の名前じゃないんだよな。
言葉が通じないもんだから、自己紹介すら出来ず、自然にフェアリーと呼ぶ事に慣れていた。
というか、よくよく考えると、アイツと出逢ってから、まだ1日も経ってないのか。
昨日の昼間、俺が目を覚ました時に、いつの間にか腹に乗っていたフェアリーに気が付いたんだ。
あの時は本当に驚いたよなぁ。
なんせ、散々、血眼になって探してた相手が自分の腹の上で呑気に眠ってるんだから。
一応、モンスターだから警戒しない訳にはいかないし、かといってリリィも、まだ寝てたし。
どうしたもんかと考えあぐねていたら、何故か気に入られて頬にキスされるし。
それが切っ掛けでリリィが不機嫌になるし。
まぁ、その後なんとか和解して、一緒に湖で水遊びしたりしたけどさ。
だけど、思い返せば、帰り際のいざこざが無ければ緋熊と遭遇することも無かったのかもしれない。
あの時、フェアリーが怒ってた原因は、今でも良く分からないけど、どうやら俺が発端なのは間違いなさそうだった。
と言う事は、この状況に陥った遠因は俺にあるって訳だ。
つくづく自業自得じゃねぇか。
…………そう言えば、その時にリリィの大切な物が無くなったって話は、結局どうなったんだろう?
「グルル……」
緋熊が唸り声を上げて、ジリジリと距離を詰めてくる。
それと同時に、死が迫ってくる気配を肌で感じた。
……死が迫ると言えば、はぐれたフェアリーと再会した時、アイツが死んじまったんだって勘違いしたんだっけ。
実際は、アイツが生み出した分身体だったのにな。
だけど、その後、俺を逃がすために囮になった時は、本当に死んでもおかしくなかった。
間一髪で助けに入れたのは、まさに奇跡だろう。
そして、リリィが言い付けを破って助けに来てくれなければ、その奇跡も意味を為さなかった。
本当に、いくら感謝しても足りないな。
まるで走馬燈のように駆け巡った、二人との思い出。
その記憶に心を揺さぶられ、ふと思った。
叶うなら、もう一度、三人で旅に出たいと。
しかし、そんな儚い人の夢を嘲笑うかのように、緋熊が立ちはだかる。
そのまま4本腕のうちの1本を大きく振り上げた。
けれど俺は恨み言も、負け惜しみも口にせず、静かに目を閉じる。
最期の瞬間は、あの二人の笑顔と声に包まれていたかったから。
そして、今まで堪えていた涙が頬を伝った、次の瞬間――。
うっかり涙が溢れないように、天を仰いで耐える俺。
その唇から、彼女の名前が無意識に溢れた。
いや、今更だけど“フェアリー”は種族の名前であって、アイツ個人の名前じゃないんだよな。
言葉が通じないもんだから、自己紹介すら出来ず、自然にフェアリーと呼ぶ事に慣れていた。
というか、よくよく考えると、アイツと出逢ってから、まだ1日も経ってないのか。
昨日の昼間、俺が目を覚ました時に、いつの間にか腹に乗っていたフェアリーに気が付いたんだ。
あの時は本当に驚いたよなぁ。
なんせ、散々、血眼になって探してた相手が自分の腹の上で呑気に眠ってるんだから。
一応、モンスターだから警戒しない訳にはいかないし、かといってリリィも、まだ寝てたし。
どうしたもんかと考えあぐねていたら、何故か気に入られて頬にキスされるし。
それが切っ掛けでリリィが不機嫌になるし。
まぁ、その後なんとか和解して、一緒に湖で水遊びしたりしたけどさ。
だけど、思い返せば、帰り際のいざこざが無ければ緋熊と遭遇することも無かったのかもしれない。
あの時、フェアリーが怒ってた原因は、今でも良く分からないけど、どうやら俺が発端なのは間違いなさそうだった。
と言う事は、この状況に陥った遠因は俺にあるって訳だ。
つくづく自業自得じゃねぇか。
…………そう言えば、その時にリリィの大切な物が無くなったって話は、結局どうなったんだろう?
「グルル……」
緋熊が唸り声を上げて、ジリジリと距離を詰めてくる。
それと同時に、死が迫ってくる気配を肌で感じた。
……死が迫ると言えば、はぐれたフェアリーと再会した時、アイツが死んじまったんだって勘違いしたんだっけ。
実際は、アイツが生み出した分身体だったのにな。
だけど、その後、俺を逃がすために囮になった時は、本当に死んでもおかしくなかった。
間一髪で助けに入れたのは、まさに奇跡だろう。
そして、リリィが言い付けを破って助けに来てくれなければ、その奇跡も意味を為さなかった。
本当に、いくら感謝しても足りないな。
まるで走馬燈のように駆け巡った、二人との思い出。
その記憶に心を揺さぶられ、ふと思った。
叶うなら、もう一度、三人で旅に出たいと。
しかし、そんな儚い人の夢を嘲笑うかのように、緋熊が立ちはだかる。
そのまま4本腕のうちの1本を大きく振り上げた。
けれど俺は恨み言も、負け惜しみも口にせず、静かに目を閉じる。
最期の瞬間は、あの二人の笑顔と声に包まれていたかったから。
そして、今まで堪えていた涙が頬を伝った、次の瞬間――。
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