能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

リリィの【お願い】

「うふふっ。せっかく、ハヤト様がワガママを聞いて下さるのに、お金で買える物なんて望みませんよ。私、こう見えても欲張りなんですからねっ」

そう言って悪戯っぽい笑みを浮かべるリリィ。

“こう見えても”って事は、欲張りに見えないっていう自覚はあるのか。

まぁ、見るからに慎ましい性格だし、もしかしたら、使用人達からも言われていたのかもしれない。

それで、ちょっと反発して悪ぶってみたくなった……って感じだろうか?

『俺、こう見えても札付きのワルですから!』と粋がる思春期男子みたいなノリだな。

そう考えると、なんか、メッチャ微笑ましい気持ちになってきたぞ。

「そうか、そうか。リリィは欲張りなのか〜。それで、欲張りさんなリリィは、何をお望みなのかな〜?」

「むぅっ! 何ですか、その小さい子をあやす様な口調は! ハヤト様たちより、私の方が、一つ歳上なんですからね!」

おっと、そうだったのか。

そう言えば、召喚初日に王族の前で、一人ずつ自己紹介したんだっけ。

その場で王族側の紹介もされた筈だけど、あの時はリリィ達に良い感情を持ってなかったから、適当に聞き流してたな。

「悪い、悪い。ほら、リリィって、なんかこう、実年齢よりも若く見えるからさ」

これは俺の母さんから教わった魔法の呪文(女性限定)だ。

世の中の大半の女性は、このセリフで、ご機嫌になると教えられた。

さぁ、これでリリィも、たちまち笑顔に――、

「それって、私が子供っぽく見えるって事じゃないですか! もう、ハヤト様ったら失礼しちゃいますね!」

「えぇぇぇ!?」

おい、母さん! 魔法の言葉が通じないじゃないか!

むしろ火に油を注いだ感じになってるんだけど!?

くそぅ、母さん直伝の呪文が通用しないなんて。

もしや、リリィは魔王なんじゃなかろうか。

「……はぁ。まぁ良いです。ハヤト様の事だから褒め言葉として言ってくれたんでしょうし、今回は大目に見ます。今後は、もう少し女心を学んで下さいっ」

「ぜ、善処します……」

ふぅ……リリィが寛容で本当に助かった。

とはいえ、女心なんて“彼女いない歴=年齢”の俺には難解すぎて、理解できる気がしないんだよなぁ。

まぁ、でも、リリィと行動を共にするのは街に戻るまでだし、特に気にする必要はないかな。

彼女を城まで送ったら、そこで、お別れだし。

【お願い】については、それまでに考えて貰うか、思い付かなければ次に会う時まで保留という事にしよう。

そんな俺の考えは――、

「……ところで、ハヤト様は今後どのように動かれる予定なんですか?」

「ああ、それなら取り敢えず隣街に向かおうと思ってるけど。いまさら王都は居づらいしな」

「でしたら! 私も一緒に連れて行って下さい!」

「……はい?」

リリィの衝撃的な一言に遮られたのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品