氷花の鬼神って誰のことですか?え、僕のことってどういうこと?
52.冒険者はじめました
「「冒険者?」」
宿の一室にて。
全員がユウに問いかける。
「あぁ。ここにいる全員、冒険者ギルドに登録したらどうだ?」
と、ユウは、もう一度その提案を口にする。
「で、でも、みぃたちは良いとして、僕やティナはどうするんだ?まさか犯罪者を冒険者にするわけ無いだろ?」
エレミヤはユウに懸念をぶつける。
しかし、ユウは飄々としている。
「バレなきゃいんだ、そんなもん。」
べ、と舌を出して言い切るユウ。
そしてユウはエレミヤは方を見据えて、
「じきにその大金も無くなるだろうしな。確実に。そんだけ大人数で行動してりゃ、一ヶ月は持つだろうが、二ヶ月は持たんぞ。絶対に。」
と言い切る。
エレミヤはそれを聞いて、少し考え込む。
「確かに、一日一人200ロン使うとして、今持ってるお金が約48000ロン…。なるほどね。最低限の使い方しても一ヶ月と1週間持つか持たないか、ってぐらいか…。」
ロンとはこの世界のお金のことで、1ロン=百円である。
旅人にかかるお金は通常の十倍で、宿代や食事代、更には入国料を払わなければいけない国だってある。
ユウはエレミヤのその考えに頷く。
「あぁ。あと、この国は無かったが、お前らがその首輪をしているからな。いくらトゥーリス王国の外出許可証明書を持っていたって言っても、ここぞとばかりに金を請求してくる国もある。」
エレミヤはシュンとした。
ティナも申し訳なさそうに俯く。
それにミイロ達は
「しょうがないよ。まっくんたちは少しも悪くないんだから。」
「そうだよ、おにいちゃん!」
「叔母様の言うとおりです!元気出してください、父様、ティナ姉様!」
「元気ないパパはラム、そんなに好きじゃない…。」
と口々に言い、ジュリバークは無言で頷く。
〔くよくよしちゃって、馬鹿だなぁ。エレミヤは。〕
『そうだぞー。馬鹿だぞー、エレミヤー。』
『ヒョウくん、最近容赦なくなってるよね…。』
死人や龍にも言われたエレミヤは目を閉じると、すべてを聞き流す。
「分かった。冒険者になろう。皆も、いいね?」
エレミヤが後ろの仲間に聞く。
「「はい!」」
嬉しそうな返事が聞こえた。
❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅
次の日。冒険者ギルドにエレミヤたちは来ていた。
「はい、以上でギルドの登録が完了しました。料金は五人全員で500ロンです。」
「あ…はい。」
すんなりと終わった冒険者登録。
一応、アーシリアとダリアも「グラム」、「ミストルティン」として登録しておいた。
あまりの早さにエレミヤは一瞬、呆けてしまった。
そして手渡されたギルドカードを全員に配る。
ギルドカードには国籍をおいている国と冒険者の登録をした国、そしてランクが刻まれている。
エレミヤたちのギルドカードには「トゥーリス王国」、「アースレッド皇国」そして最低ランクの「G」と書いてある。
それに、なんか周りは屈強な男たちがいて華奢なエレミヤは「ワカメ」扱いされていた。
(この世界にもワカメってあるんだ…!食べてみよう…。ワカメって言えばやっぱり味噌汁だよな。…お味噌あるかな。確か、お味噌って大豆から作れるんだよね。…大豆あるかな?)
一方のエレミヤは現実逃避中。
その時だった。隣のミイロからやばいくらいの殺気が漏れ出ているのに気付いた。
冷や汗をかいているエレミヤだが、そんな殺気にも気づかない男たち。
そして、ユユリアの気配もないことに気付いた。
そしてある予感を胸に感じながら後ろを見ると、気配を完全に隠して男共に近寄るユユリアの姿。
ティナはブツブツと何かをつぶやいて怒りを抑え込んでいるらしい。
剣姉妹はお互いの服を握りしめ、深呼吸を繰り返している。
ユウはそんな彼女たちの姿にハラハラしている様子でエレミヤたちを見守っている。
ユウ自体も冒険者であり、それも相当なランクの冒険者らしい。
その時だった。
「ばぁ!」
とユユリアがナイフを握り、男たちを後ろから脅した。
「どあっ?!」
「わぁ!」
「ぐっ……。げほ、げほっ!」
脅された側は椅子をひっくり返したり、飲んでいた水を吹き出したりして、大変だ。
男達はユユリアを、驚きの眼差しで見つめる。
そんな、彼らにユユリアはナイフをちらつかせながら聞く。
「今、ワカメって言った?」
ニコニコの笑顔が恐怖を引き立たせる。
彼女の周りからどす黒い殺気が膨れ上がる。
額を抑え、項垂れているエレミヤ、手に聖弓レジュリアートを出現させているミイロ、指の爪を噛み始めたティナ、なぜか深呼吸が早くなっていく剣姉妹。
(…普通に冒険者しようと思ったのに…。異常なパーティだと思われる…。)
殺気渦巻く冒険者ギルド。
エレミヤは受付嬢に何度も頭を下げて謝っていた。
しかし、受付嬢に曰く、こういう事はよくあるらしいので放っておくことにした。
エレミヤ自身も相当頭にきていたからだ。
それを見てユウは
「…愛はどんな武器よりも強し、だな。」
と名言のように呟いた。
それに聞いて受付嬢は
「…今、この場に相応しい言葉ですわね。」
とニコニコな笑顔の裏に呆れと恐れを浮かべて言った。
「こ、このガキ…。」
と椅子からひっくり返った男が唸る。
しかし、ユユリアはナイフを器用にクルクルと回しながら、
「あの人はね、メハナのお兄ちゃんなの。どんな世界でも一番強くて、優しいお兄ちゃんなんだよ。」
と言った。
ミイロとティナが頷き、剣姉妹は顔を見合わせ、男に向かって嘲笑う。
馬鹿にされた男はユユリア達女性陣とエレミヤに向かって指を突き出す。
「このクソガキども…。このCランク冒険者のゲルに侮辱的な行為を行ったこと、後悔させてやるからな…。」
そして、ユユリアに殴りかかろうとしたゲルと言うらしい男。
ユユリアは恐怖の色を浮かべたが、我慢してじっと、降りかかる拳を見つめる。
そこに割入ったのは、ユウだった。
「ほい。ちょっと待て。」
と言いながらユウは拳を軽々と受け止めた。
ユウは微笑を浮かべる。
「えーと、このアースレッド皇国から遥か西方にあるノルスティエス共和国から来ました、SSSランク冒険者のユウガ・ロンビネーストという者ですが、ちょっといいですか?」
と自己紹介しながら上目遣いで聞く。
そしてその自己紹介を聞き、ここにいる全員が息を呑む。
「エ…SSSランク冒険者ぁ?!」
と受付嬢が叫び、ユウはギルドカードを見せる。
確かにそこにはSSSという文字とユウガ・ロンビネーストという名前が刻まれてあった。
エレミヤも驚きを隠せない様子だ。
そしてユウは
「ここにいる彼らは俺の仲間でね。全員俺と同等かそれ以上の力を持っている。」
と余裕の笑顔のまま言う。
そして、それに更に驚くゲル。
「エ、SSSランク冒険者と同等かそれ以上?!って、なんてそんなやばい奴らが異能力者にならずに冒険者なんかやってんだ?特にトゥーリスの「シノハナ」にいる奴らはSSSランク冒険者をフルボッコにするほど強えって聞いたが…。」
エレミヤとティナは心の名でこう言い返すのだった。
(…まぁ、殺しますけど。)
(フルボッコって言ってもボッコボコにした後殺すけどな。)
と危険な思考。
「え?持ってますよ、異能力?」
とユウは言う。
エレミヤは目を瞬かせる。
「光龍と言います。見たければお見せしますよ?」
すると、ゲルは頬を引きつり、
「い、いえ。いいっす…。」
と言い、立ち去る。
そしてエレミヤと通り過ぎるとき、
「殺す。」
と宣戦布告をした。
エレミヤはため息をつくと、ユウに向かって歩いていく。
「…なんだかんだ言ってすごい人だったんですね、ユウさん。」
すると、ユウは肩をぐるぐる回しながら言う。
「そう?だって、エレミヤたちも持ってんじゃん。異能力。」
「あ。」
秘密をあっさりとバラしてしまったユウ。
秘密ね、とも言っていなかったエレミヤも悪いが。
ザワザワと波紋か広がり、
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」
と、終いには大合唱に変わる。
エレミヤ達は肩を落とし、ジュリバークはユウの肩に手を置き、
「なんの異能力を持ってるかは言わんほうがいいぞ。」
と言い、エレミヤ達にでさえ聞こえないように耳元でこういう。
「エレミヤには多分氷の針山で刺されるし、ティナには空までふっとばされるし、ミイロには煮られ、ユユリアには風圧で地面にめり込まされるぞ。永遠に。」
ユウは顔を真っ青にしたあと、自分の命が掛かっているかのように真剣に頷く。
まぁ、かかっているわけであるが。
ジュリバークもユウの肩を叩き、真剣な顔で頷き返のだった。
宿の一室にて。
全員がユウに問いかける。
「あぁ。ここにいる全員、冒険者ギルドに登録したらどうだ?」
と、ユウは、もう一度その提案を口にする。
「で、でも、みぃたちは良いとして、僕やティナはどうするんだ?まさか犯罪者を冒険者にするわけ無いだろ?」
エレミヤはユウに懸念をぶつける。
しかし、ユウは飄々としている。
「バレなきゃいんだ、そんなもん。」
べ、と舌を出して言い切るユウ。
そしてユウはエレミヤは方を見据えて、
「じきにその大金も無くなるだろうしな。確実に。そんだけ大人数で行動してりゃ、一ヶ月は持つだろうが、二ヶ月は持たんぞ。絶対に。」
と言い切る。
エレミヤはそれを聞いて、少し考え込む。
「確かに、一日一人200ロン使うとして、今持ってるお金が約48000ロン…。なるほどね。最低限の使い方しても一ヶ月と1週間持つか持たないか、ってぐらいか…。」
ロンとはこの世界のお金のことで、1ロン=百円である。
旅人にかかるお金は通常の十倍で、宿代や食事代、更には入国料を払わなければいけない国だってある。
ユウはエレミヤのその考えに頷く。
「あぁ。あと、この国は無かったが、お前らがその首輪をしているからな。いくらトゥーリス王国の外出許可証明書を持っていたって言っても、ここぞとばかりに金を請求してくる国もある。」
エレミヤはシュンとした。
ティナも申し訳なさそうに俯く。
それにミイロ達は
「しょうがないよ。まっくんたちは少しも悪くないんだから。」
「そうだよ、おにいちゃん!」
「叔母様の言うとおりです!元気出してください、父様、ティナ姉様!」
「元気ないパパはラム、そんなに好きじゃない…。」
と口々に言い、ジュリバークは無言で頷く。
〔くよくよしちゃって、馬鹿だなぁ。エレミヤは。〕
『そうだぞー。馬鹿だぞー、エレミヤー。』
『ヒョウくん、最近容赦なくなってるよね…。』
死人や龍にも言われたエレミヤは目を閉じると、すべてを聞き流す。
「分かった。冒険者になろう。皆も、いいね?」
エレミヤが後ろの仲間に聞く。
「「はい!」」
嬉しそうな返事が聞こえた。
❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅
次の日。冒険者ギルドにエレミヤたちは来ていた。
「はい、以上でギルドの登録が完了しました。料金は五人全員で500ロンです。」
「あ…はい。」
すんなりと終わった冒険者登録。
一応、アーシリアとダリアも「グラム」、「ミストルティン」として登録しておいた。
あまりの早さにエレミヤは一瞬、呆けてしまった。
そして手渡されたギルドカードを全員に配る。
ギルドカードには国籍をおいている国と冒険者の登録をした国、そしてランクが刻まれている。
エレミヤたちのギルドカードには「トゥーリス王国」、「アースレッド皇国」そして最低ランクの「G」と書いてある。
それに、なんか周りは屈強な男たちがいて華奢なエレミヤは「ワカメ」扱いされていた。
(この世界にもワカメってあるんだ…!食べてみよう…。ワカメって言えばやっぱり味噌汁だよな。…お味噌あるかな。確か、お味噌って大豆から作れるんだよね。…大豆あるかな?)
一方のエレミヤは現実逃避中。
その時だった。隣のミイロからやばいくらいの殺気が漏れ出ているのに気付いた。
冷や汗をかいているエレミヤだが、そんな殺気にも気づかない男たち。
そして、ユユリアの気配もないことに気付いた。
そしてある予感を胸に感じながら後ろを見ると、気配を完全に隠して男共に近寄るユユリアの姿。
ティナはブツブツと何かをつぶやいて怒りを抑え込んでいるらしい。
剣姉妹はお互いの服を握りしめ、深呼吸を繰り返している。
ユウはそんな彼女たちの姿にハラハラしている様子でエレミヤたちを見守っている。
ユウ自体も冒険者であり、それも相当なランクの冒険者らしい。
その時だった。
「ばぁ!」
とユユリアがナイフを握り、男たちを後ろから脅した。
「どあっ?!」
「わぁ!」
「ぐっ……。げほ、げほっ!」
脅された側は椅子をひっくり返したり、飲んでいた水を吹き出したりして、大変だ。
男達はユユリアを、驚きの眼差しで見つめる。
そんな、彼らにユユリアはナイフをちらつかせながら聞く。
「今、ワカメって言った?」
ニコニコの笑顔が恐怖を引き立たせる。
彼女の周りからどす黒い殺気が膨れ上がる。
額を抑え、項垂れているエレミヤ、手に聖弓レジュリアートを出現させているミイロ、指の爪を噛み始めたティナ、なぜか深呼吸が早くなっていく剣姉妹。
(…普通に冒険者しようと思ったのに…。異常なパーティだと思われる…。)
殺気渦巻く冒険者ギルド。
エレミヤは受付嬢に何度も頭を下げて謝っていた。
しかし、受付嬢に曰く、こういう事はよくあるらしいので放っておくことにした。
エレミヤ自身も相当頭にきていたからだ。
それを見てユウは
「…愛はどんな武器よりも強し、だな。」
と名言のように呟いた。
それに聞いて受付嬢は
「…今、この場に相応しい言葉ですわね。」
とニコニコな笑顔の裏に呆れと恐れを浮かべて言った。
「こ、このガキ…。」
と椅子からひっくり返った男が唸る。
しかし、ユユリアはナイフを器用にクルクルと回しながら、
「あの人はね、メハナのお兄ちゃんなの。どんな世界でも一番強くて、優しいお兄ちゃんなんだよ。」
と言った。
ミイロとティナが頷き、剣姉妹は顔を見合わせ、男に向かって嘲笑う。
馬鹿にされた男はユユリア達女性陣とエレミヤに向かって指を突き出す。
「このクソガキども…。このCランク冒険者のゲルに侮辱的な行為を行ったこと、後悔させてやるからな…。」
そして、ユユリアに殴りかかろうとしたゲルと言うらしい男。
ユユリアは恐怖の色を浮かべたが、我慢してじっと、降りかかる拳を見つめる。
そこに割入ったのは、ユウだった。
「ほい。ちょっと待て。」
と言いながらユウは拳を軽々と受け止めた。
ユウは微笑を浮かべる。
「えーと、このアースレッド皇国から遥か西方にあるノルスティエス共和国から来ました、SSSランク冒険者のユウガ・ロンビネーストという者ですが、ちょっといいですか?」
と自己紹介しながら上目遣いで聞く。
そしてその自己紹介を聞き、ここにいる全員が息を呑む。
「エ…SSSランク冒険者ぁ?!」
と受付嬢が叫び、ユウはギルドカードを見せる。
確かにそこにはSSSという文字とユウガ・ロンビネーストという名前が刻まれてあった。
エレミヤも驚きを隠せない様子だ。
そしてユウは
「ここにいる彼らは俺の仲間でね。全員俺と同等かそれ以上の力を持っている。」
と余裕の笑顔のまま言う。
そして、それに更に驚くゲル。
「エ、SSSランク冒険者と同等かそれ以上?!って、なんてそんなやばい奴らが異能力者にならずに冒険者なんかやってんだ?特にトゥーリスの「シノハナ」にいる奴らはSSSランク冒険者をフルボッコにするほど強えって聞いたが…。」
エレミヤとティナは心の名でこう言い返すのだった。
(…まぁ、殺しますけど。)
(フルボッコって言ってもボッコボコにした後殺すけどな。)
と危険な思考。
「え?持ってますよ、異能力?」
とユウは言う。
エレミヤは目を瞬かせる。
「光龍と言います。見たければお見せしますよ?」
すると、ゲルは頬を引きつり、
「い、いえ。いいっす…。」
と言い、立ち去る。
そしてエレミヤと通り過ぎるとき、
「殺す。」
と宣戦布告をした。
エレミヤはため息をつくと、ユウに向かって歩いていく。
「…なんだかんだ言ってすごい人だったんですね、ユウさん。」
すると、ユウは肩をぐるぐる回しながら言う。
「そう?だって、エレミヤたちも持ってんじゃん。異能力。」
「あ。」
秘密をあっさりとバラしてしまったユウ。
秘密ね、とも言っていなかったエレミヤも悪いが。
ザワザワと波紋か広がり、
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」
と、終いには大合唱に変わる。
エレミヤ達は肩を落とし、ジュリバークはユウの肩に手を置き、
「なんの異能力を持ってるかは言わんほうがいいぞ。」
と言い、エレミヤ達にでさえ聞こえないように耳元でこういう。
「エレミヤには多分氷の針山で刺されるし、ティナには空までふっとばされるし、ミイロには煮られ、ユユリアには風圧で地面にめり込まされるぞ。永遠に。」
ユウは顔を真っ青にしたあと、自分の命が掛かっているかのように真剣に頷く。
まぁ、かかっているわけであるが。
ジュリバークもユウの肩を叩き、真剣な顔で頷き返のだった。
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