氷花の鬼神って誰のことですか?え、僕のことってどういうこと?

皇城咲依

51.アースレッド皇国

ユウと出会ってから数日間。
エレミヤ達は野宿や狩りなどをしながら旅を続けていた。

そして、遂に…!

「着いた…!ここが、アースレッド皇国!」

エレミヤが感極まる。

遂に…ついにこの日が…!
野宿や狩りで汗だくのこの身体を洗うことができる…!
嗚呼ああ、なんて幸せ…!

ちなみに龍達はそれぞれの主の中にいる。

ミイロ達女性陣は喜びよりも早く行くきたい、という欲望が勝っているらしい。

「アー…。ラムたちは別に大丈夫だよー!ラム、お風呂嫌いだし!」

とアーシリアが叫ぶ。
すると、ダリアが姉を叱る。

「駄目です!一人の女の子として身体洗わなきゃ!それに、なぜダリ…ミストも巻き込まれてるんです?私は普通にお風呂入りますよ。父様と。」

ダリアの最後の爆弾発言にエレミヤはダリアを勢いよく見る。
父のそんな様子も知らないアーシリアは頬を膨らませると、

「じゃ、私も入る!パパと!」

と妹に対抗心を燃やした。

「ちょ、二人とも?何をおっしゃっているのでございますか?」

思わず敬語になるエレミヤ。


「「だめ?」」

娘たちはシュンとするように父に聞いた。
エレミヤは苦渋の選択を迫られることになった。

「え、だめなの?いいじゃない。本当は私も一緒に入……なんでもない。」

途中、言葉を切ったらしいが、自分に向けられる恋愛感情に全くと言っていいほど鈍感なエレミヤは首を傾げた。

「みぃ?」
「な、なんでもない!さ、入りましょ、お風呂が待ってるわ!」

エレミヤは不機嫌そうにしたが、お風呂に入りたいのは事実なのか、ミイロに従った。

そして入国検査を終えると、エレミヤは入国し、周りを見渡した。

まず、最初に目に入るのは、風にはためく赤と白をベースにした国旗。
その中心には赤い龍がいる。

そう、この国は赤い龍、「炎龍」を神様としているのだ。
それを見たミイロは、

「つまり、私は神様以上の存在なのね!」

と何かを企んでいるかのように目を光らせた。

そして、入国してすぐに総員は宿を探し始めた。
エレミヤ達はたくさんお金を持っているので、高いところでもいいよね!と思われがちだが、エレミヤは「これからあちこちを回るのだから。」と言って激安の宿を見つけ、そこに入った。
お風呂は宿についていなかったため、温泉に入ることになった。

混浴だった。

エレミヤとジュリバークは項垂れ、ユウは真顔だったが、どこか目をキラキラさせており、女性陣は恥ずかしそうにしながらも普通に入っていった。

その5分後。
かポーン、とどこかで鳴っていそうな雰囲気の日本よりの温泉はもちろん露天風呂で、女性陣は胸からタオルを巻いており、男性陣も腰にタオルを巻いた。
全員、た

エレミヤとジュリバークはホッとしたのだが、ユウはどこか悲しげだ。

「なんだよ…。せっかく肌色の花園が見れると思ったのに…。」

小さく呟いたユウ。
耳がいい獣人であるジュリバークと聴覚が異常に良いエレミヤはその声をはっきりと捉えていた。

二人は目線を合わせると、真顔で頷きあう。

皆をこの男から守ろう、と。

「きっもちいい……。」
「俺、もうここで死ねるわ。」
「ティナねーちゃん、死んじゃやぁよ?」
「メハナ叔母様、ティナ姉様は本気で言ってるわけじゃないですよ?」
「そーだよ、叔母さん!例えだよ、例え!」
「…メハナ、そんなにおばさんっぽい?うぅ……。」
「メハナ叔母様、叔母様とは父様のご兄弟のことを示すのです。」
「私達は家族だよ!」
「メハナとラム達、家族…?」
「「はい!」」

なんか仲良くなったユユリアと剣姉妹。

そんな光景にデレッとしているユウから女性陣を守るようにエレミヤとジュリバークは警戒していた。

「なんか、君たちはは謎が多すぎるけど、聞かないでおこう。それよりも……いいねぇ……。」

最初の言葉はエレミヤに対して言ったのだろうが、最後は独り言だろう。

「えぇ。そうしてくれると助かります。」

エレミヤは笑顔を浮かべ、そう返す。

そうして楽しい入浴が終わった。

宿のベランダにて。

「ぷはぁーっ!やっぱ風呂上りはこれでしょ!」

女性陣は熱くなった身体を夜風に浴びせながら牛乳を飲んでいる。

(風呂上がりのおじさんの一言かよ…)

ミイロの言葉にエレミヤは心の中でそう突っ込む。

エレミヤとアーシリアとダリアはもうベッドに入っていた。
と言っても、寝ているのは剣姉妹だけで、エレミヤはそんな娘たちの寝顔を見て微笑んでいただけだ。

(我が娘ながら、カワイイ…。)

エレミヤはアーシリアの頭を撫でる。
モゾモゾと動き、口元に微笑みを浮かべるアーシリア。
ダリアには左手を使い、胸をポンポン叩く。
ダリアはその振動に合わせるように寝息を立て始める。

すると、隣にミイロが来てベッドに座る。

「まっくんって子煩悩だねー。親バカって感じ。」

エレミヤは苦笑いする。

「いや、可愛くってさ…。こんな僕を父と慕ってくれているからね。僕もそれ相当のお返し、しなくちゃ。」

するとミイロは突然、寝ているアーシリアを抱っこした。
そして横抱きに抱えると、揺らす。

「よく、めーちゃんの事を寝かしつけるのに、まっくんママがこうやってたよ。そして、子守唄を歌うの。」

ミイロは鼻歌を歌い始める。
日本らしい懐かしい旋律。

エレミヤは薄く笑うと、ダリアをミイロと同じように抱っこし、揺らす。
エレミヤはその歌を知らなかったため、歌えなかったが、母が自分にもそうやってくれていたと考えると、心の中が暖かくなり、同時に心配になってきた。

(母さん、父さん…。大丈夫かな?)

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