氷花の鬼神って誰のことですか?え、僕のことってどういうこと?
39.葬式と開戦
次の日。
エレミヤとギリウスは森の稽古場にいた。
翡翠はルティーエスの中に入ってもらっている。
ギリウスの葬儀に参列してしようとしている彼らは次々と来る喪服姿の人々に目を向ける。
貴族。貴族。貴族。
貴族ばっかりだ。
エレミヤは「師匠って人気があったんだな…」と他人事のように思ったりした。
「はぁ…。」
明らかに場違いな服装のエレミヤ達はとても目立っていて、目立つのが苦手なエレミヤはそそくさとギリウスの後ろに隠れた。
しかし、この服装は冒険者にとっては正装で、なにも臆することはない、らしい。
しかし、ギリウスは知らないことだがエレミヤはシノハナ隊員であるので、シノハナの服装が正装に当たる。
(師匠、こんな服装でごめんなさい。)
エレミヤは軽く下を向く。
その時だった。
思いっきり後ろからスパァーン!と気持ちいい音が鳴り響くほど背を強く叩かれたのだ。
そんな急襲にエレミヤは
「おわっ!」
と声を上げる。
そこにはシノハナの制服に身を包んだ、ティナを除くシノハナの皆と優しい笑顔のミイロ、バラック、ユユリア、ジュリバークがいた。
ギリウスは突然の凄い人たちの群れに目を見開き、エレミヤは嬉しそうに声を上げる。
「皆さん!お久しぶりです!」
皆は朗らかな笑いを浮かべる。
「エレミヤぁ、お前、なんでこんな服装着てんだ?」
フメイが訝しげにエレミヤに言う。
皆がうんうん。と同情するように頷く。
エレミヤはギリウスを見る。
ギリウスは眉を寄せて意味がわからないというような表情をしている。
「やっぱ、駄目ですかねぇ。」
エレミヤは自分の服装を見る。
「せめてローブを着たら?」
とラニアが提案してきた。
エレミヤは一瞬躊躇ったが、コクンと頷くと、木に隠れてローブを取り出すと、羽織る。
ギリウスは流石に驚いた様子だったが、エレミヤの異常な強さを知っているのでどこか納得できている。
そしてエレミヤはすっぽりとフードを被る。
次の瞬間、神父が葬式の始まりを宣言した。
❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅
そして、ログラーツでも何かが始まろうとしていた。
戦争の鐘がなる。
そして兵達は一斉に歩き出す。
ザッザッと音を立て、一切の乱れなく進軍を開始した。
馬は悠々と騎士を乗せて歩き出す。
先頭で馬に乗り、黄金の鎧を着た国王が雷鳴の様な声を響かせた。
「目標、トゥーリス王国!いざ征くぞ!」
「「おう!」」
と勇ましい声が響く。
❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅
「…なっ?!」
エレミヤはものすごい遠くで何百人もの殺気を感じた。正確には場所はログラーツ王国で数はおよそ600。
本当はもっと居るはずだが、エレミヤの異能力によって見が身動きが取れない状況なのだろう。
シノハナの皆も表情を凍らせている。
ミイロはエレミヤに無言で近寄り、バラックは拳を強く握る。ユユリアは何も感じていないらしく、ニコニコと可愛らしく笑っている。
ジュリバークは表情を曇らせる。
一方、ギリウスはジリアスの入っているらしい棺を眺め、なんの反応も示さない。
そしてエレミヤは
「……。」
葬儀中なのだが、無言で立ち去ろうとした。
しかし、エレミヤの考えを読んだのか、ミイロはエレミヤの手を掴み、首を横に振る。
(一人で行こうだなんて、駄目だよ。)
ミイロは神父を邪魔しないように小さく言う。
(行く時は私も一緒。)
するとバラックもエレミヤの肩を掴む。
(俺らをまた置いていくつもりか、エレ。)
ジュリバークもバラックの言葉に大きく頷き、娘を抱きかかえる。
シノハナの皆はお互いに笑い合うと、声に出さず、こう言った。
「早く行け。」
と。
エレミヤは彼らに頷くと棺に視線を合わせる。
そして深々と頭を下げた。
弓道をしていたミイロから見ても見事な最敬礼であった。
ミイロ達は棺を見ると、小さく頷いた。
そしてエレミヤ達は葬儀場を去った。
❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅
「…これで…いいの…?」
最後方に居るティアラは馬に揺られながら悔しそうに呟く。
祖父に頼まれ、ジリアスを殺してから祖父のわがまま度に加速がかかってきた。
何もかもルティーエスの為。
この戦もルティーエスの為。
ティナは下を向く。
(少なくとも、私の知ってる兄上はこんなことを望む方ではないわ。エレミヤは尚更。)
ルティーエスとティアラは腹違いの双子の兄妹であった。
ティナはルティーエスが誘拐された十一年前のことをはっきりと覚えていた。
ティアラの記憶力はずば抜けており、彼女の最初の記憶は二歳の頃のルティーエスとのケンカである。
しかし、それはルティーエスが悪いのではなく、ティアラが悪かったのだ。
ティアラが侍女用のご飯を食べてしまったのだ。
それにルティーエスが腹を立て、叱った。
怒られたティアラは逆ギレをした。
(いつだって、兄上が正しかった。)
エレミヤもそうだ。
ティナがシノハナの本部の壺を割ってしまっとき、ティナは近くに居たフメイのせいにしようとした。しかし、エレミヤは無言で当時まだシノハナに勤めていたジリアスに言いに行ったのだ。
「師匠。あの壺、割っちゃいました。」
ジリアスはため息をつくと、エレミヤには本気の、ティナには半分の力で拳骨を落とした。
(あの時は私が全て悪かった。なのにエレミヤが痛い思いをした。)
ティアラは馬を止めた。
「兄上っ…。エレミヤ…!」
ティナは馬の方向を変えた。
エレミヤと自分から知らない、トゥーリスからの抜け道へ『風鷹』の力を借り、通常の速度の二倍で走らせる。
エレミヤとギリウスは森の稽古場にいた。
翡翠はルティーエスの中に入ってもらっている。
ギリウスの葬儀に参列してしようとしている彼らは次々と来る喪服姿の人々に目を向ける。
貴族。貴族。貴族。
貴族ばっかりだ。
エレミヤは「師匠って人気があったんだな…」と他人事のように思ったりした。
「はぁ…。」
明らかに場違いな服装のエレミヤ達はとても目立っていて、目立つのが苦手なエレミヤはそそくさとギリウスの後ろに隠れた。
しかし、この服装は冒険者にとっては正装で、なにも臆することはない、らしい。
しかし、ギリウスは知らないことだがエレミヤはシノハナ隊員であるので、シノハナの服装が正装に当たる。
(師匠、こんな服装でごめんなさい。)
エレミヤは軽く下を向く。
その時だった。
思いっきり後ろからスパァーン!と気持ちいい音が鳴り響くほど背を強く叩かれたのだ。
そんな急襲にエレミヤは
「おわっ!」
と声を上げる。
そこにはシノハナの制服に身を包んだ、ティナを除くシノハナの皆と優しい笑顔のミイロ、バラック、ユユリア、ジュリバークがいた。
ギリウスは突然の凄い人たちの群れに目を見開き、エレミヤは嬉しそうに声を上げる。
「皆さん!お久しぶりです!」
皆は朗らかな笑いを浮かべる。
「エレミヤぁ、お前、なんでこんな服装着てんだ?」
フメイが訝しげにエレミヤに言う。
皆がうんうん。と同情するように頷く。
エレミヤはギリウスを見る。
ギリウスは眉を寄せて意味がわからないというような表情をしている。
「やっぱ、駄目ですかねぇ。」
エレミヤは自分の服装を見る。
「せめてローブを着たら?」
とラニアが提案してきた。
エレミヤは一瞬躊躇ったが、コクンと頷くと、木に隠れてローブを取り出すと、羽織る。
ギリウスは流石に驚いた様子だったが、エレミヤの異常な強さを知っているのでどこか納得できている。
そしてエレミヤはすっぽりとフードを被る。
次の瞬間、神父が葬式の始まりを宣言した。
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そして、ログラーツでも何かが始まろうとしていた。
戦争の鐘がなる。
そして兵達は一斉に歩き出す。
ザッザッと音を立て、一切の乱れなく進軍を開始した。
馬は悠々と騎士を乗せて歩き出す。
先頭で馬に乗り、黄金の鎧を着た国王が雷鳴の様な声を響かせた。
「目標、トゥーリス王国!いざ征くぞ!」
「「おう!」」
と勇ましい声が響く。
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「…なっ?!」
エレミヤはものすごい遠くで何百人もの殺気を感じた。正確には場所はログラーツ王国で数はおよそ600。
本当はもっと居るはずだが、エレミヤの異能力によって見が身動きが取れない状況なのだろう。
シノハナの皆も表情を凍らせている。
ミイロはエレミヤに無言で近寄り、バラックは拳を強く握る。ユユリアは何も感じていないらしく、ニコニコと可愛らしく笑っている。
ジュリバークは表情を曇らせる。
一方、ギリウスはジリアスの入っているらしい棺を眺め、なんの反応も示さない。
そしてエレミヤは
「……。」
葬儀中なのだが、無言で立ち去ろうとした。
しかし、エレミヤの考えを読んだのか、ミイロはエレミヤの手を掴み、首を横に振る。
(一人で行こうだなんて、駄目だよ。)
ミイロは神父を邪魔しないように小さく言う。
(行く時は私も一緒。)
するとバラックもエレミヤの肩を掴む。
(俺らをまた置いていくつもりか、エレ。)
ジュリバークもバラックの言葉に大きく頷き、娘を抱きかかえる。
シノハナの皆はお互いに笑い合うと、声に出さず、こう言った。
「早く行け。」
と。
エレミヤは彼らに頷くと棺に視線を合わせる。
そして深々と頭を下げた。
弓道をしていたミイロから見ても見事な最敬礼であった。
ミイロ達は棺を見ると、小さく頷いた。
そしてエレミヤ達は葬儀場を去った。
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「…これで…いいの…?」
最後方に居るティアラは馬に揺られながら悔しそうに呟く。
祖父に頼まれ、ジリアスを殺してから祖父のわがまま度に加速がかかってきた。
何もかもルティーエスの為。
この戦もルティーエスの為。
ティナは下を向く。
(少なくとも、私の知ってる兄上はこんなことを望む方ではないわ。エレミヤは尚更。)
ルティーエスとティアラは腹違いの双子の兄妹であった。
ティナはルティーエスが誘拐された十一年前のことをはっきりと覚えていた。
ティアラの記憶力はずば抜けており、彼女の最初の記憶は二歳の頃のルティーエスとのケンカである。
しかし、それはルティーエスが悪いのではなく、ティアラが悪かったのだ。
ティアラが侍女用のご飯を食べてしまったのだ。
それにルティーエスが腹を立て、叱った。
怒られたティアラは逆ギレをした。
(いつだって、兄上が正しかった。)
エレミヤもそうだ。
ティナがシノハナの本部の壺を割ってしまっとき、ティナは近くに居たフメイのせいにしようとした。しかし、エレミヤは無言で当時まだシノハナに勤めていたジリアスに言いに行ったのだ。
「師匠。あの壺、割っちゃいました。」
ジリアスはため息をつくと、エレミヤには本気の、ティナには半分の力で拳骨を落とした。
(あの時は私が全て悪かった。なのにエレミヤが痛い思いをした。)
ティアラは馬を止めた。
「兄上っ…。エレミヤ…!」
ティナは馬の方向を変えた。
エレミヤと自分から知らない、トゥーリスからの抜け道へ『風鷹』の力を借り、通常の速度の二倍で走らせる。
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