氷花の鬼神って誰のことですか?え、僕のことってどういうこと?

皇城咲依

5.氷花の鬼神って誰のこと?

エレミヤが異世界に転生してきてから十年。
エレミヤは15歳くらいになっていた(実年齢不明)。

「では、行ってきます!師匠!」

エレミヤはシノハナの制服を来て、師匠を残し去っていこうとする。
ジリアスはビール樽片手に手を振ってくる。

「行ってらっしゃい!引退した俺に代わってじゃんじゃん働けよ!」
「…師匠。朝っぱらからビール飲む元気があるなら陛下に言ってまた復帰してもらいますけどいいですか?」
「はははー。エレミヤよ。これはな薬なんだ。」

エレミヤはまたまたといった様子で手を軽く振る。

「師匠。僕を騙そうとしたってそうはいきませんよ。」
「本当なんだよ!若かりし頃の労働によってついた傷を癒やすための…な。」
「そんな貫禄ありそうにに言ったって無駄ですよ。というか、師匠。本当はまだ55歳なんですから。なのに10歳も偽って。よくバレませんでしたよね。」
「あっ!俺のビール!」

ジリアスの言い訳もエレミヤによって一刀両断され、エレミヤがビールの樽を丸々1樽を片腕で持ち上げ、ロンガットに渡す。

「師匠をよく見張っておいてください。またビールをガブガブ飲んで倒れられても困りますからね。」
「承知いたしました。エレミヤさま。この命にかけても。」
「命はかけないでくださいね?」
「おおい!ビール返せぇぇ!」
「いやです。」
「エレミヤぁぁ!」

酔った勢いか、もしくは本物の怒りか。突然襲いかかってきたジリアス。
エレミヤはため息を付き、

(こりゃ、ちょっと痛い目合わせないとだめだな…)

そう思い、龍の力を借りる。

「…氷海ひょうかい。」

その瞬間、何もないところから水が出現し、それがすぐに凍る。
すると、床全体が氷に埋め尽くされた。
自分やロンガットが巻き込まれないように操作もする。

「あ!異能力なんてずりぃ!ってわぁ、う、動けねー!!」

ジリアスは自分の下半身を飲み込んだ氷の海を眺め、唯一自由な上半身を使い、ガリガリと氷を掻き始めた。

「このやろ〜っ!っていたぁ!爪剥がれたぁ!」

一人で騒いでいる師匠を放っておいて弟子は職場へ向かう。

「では、いってきますね。ロンガットさん。あとついでに師匠。」
「行ってらっしゃいませ。」
「まず、これ解除しろ!」

行ってきますと手を振りつつ、ロンガットに囁く。

「一時間したら溶けますので。後始末、すみませんがよろしくお願いします…。」
「お任せを!」
どん、と胸を叩くロンガット。
頼もしいが、もう老人の身。あまり無茶はさせたくないな。とエレミヤは思う。
「えと…。疲れたら休んでいいのですからね?」
「はい。」

ぺこりとお辞儀をしてエレミヤを送るロンガット。
その顔には孫を見るような優しい笑みが浮かんでいた。

「さてと。ご主人さま。しばしお待ちください。この氷が溶けるまで。」
「爺ー!助けてくれよー!」
「ご主人さま。エレミヤさまの行動はあなたのことを思っての事です。わたしがそれをおじゃんにする訳にはいきません。」
「爺の裏切り者ー!」
「ほほほ。裏切り者とは聞き捨てなりませんなぁ。」

一番大騒ぎしそうな年頃の少年が出ていった途端、余計に騒がしくなったガルゴス家。
それは歩いて一時間ほどかかるシノハナの本部にも聞こえていたので、

「…ごめんなさい…。」

エレミヤは近所の方々に謝りながら通勤するのだった。

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「はぁー。もうやだよ…。助けてー。ティナ…。」

やっと職場についたエレミヤは今回のことを親友に相談していた。 

「いいね!エレミヤんちって、超楽しそうじゃん!俺行きてーわー。」

この男みたいな言葉遣いの少女がエレミヤの 親友だ。
ティナ・ラウサーク。
短髪でガキ大将みたいな性格をしている彼女だが、結構美人で人気者なのだ。

「変なこと言わないでよ…。うち、師匠があれだからさ、結構迷惑かけちゃっているの。」

と言いながらぐったりしていると、 

「じゃ、俺がしばいてやろうか?」
「いや、しばくのは僕で足りてる。」

ティナはこくこく頷き、 
「まぁそうだろうねー。…あ、そうだ!」

思い出したようにティナは両手を叩き、
何かを企んでいるような顔でエレミヤに問いかける。

「あんたさ、氷花の鬼神って知ってる?最近巷で話題なんだよー。」
「ひょうかのきじん?」

エレミヤは首を傾げる。

「知らないけど…。それって誰のこと?」

ティナは口をパクパクさせ唖然とし、
エレミヤは訳がわからない、と言うように苦笑いを浮かべる。

「はぁ…。知らないならいい。…自分で調べな。」
「えぇ!そりゃないよ、ティナー!」

片眉を落としながら叫ぶエレミヤにティナは
小さな声でつぶやく。
「氷花の鬼神…か。俺はあんたが羨ましいよ…。お前のような、才能の塊みたいなやつがな。」
「え、何?」
「いや、なんでもない!」 

ティナはプイ、と顔を背け、走り出す。
「ほら、会議が始まっちまうから早く行くぞ!行くぞ、会議室まで競争だ!」
「おい、待てって!」

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「う…。あ…れ?」

深色はゆっくり目を開ける。

「勇者さま!お目覚めになりましたか!」

目の前にはきれいな女の子。
キラキラしているドレスを着ている。

「御機嫌よう。勇者さま。私はトューリス王国第一王女、セファリア・トューリスと申します。」
「え…?あ、はい。小野原深色です。ところで…ここは?」
「ここはあなた方の言う、異世界です。そして、あなたは我が国の勇者様なのです。」

異世界…。
本当にあるんだ…。
深色はそう思うと同時に一つの可能性を導き出した。

(ということはここにまっくんも居るかも…!)

深色は第一王女とかいう少女に掴みかかるように問いかけた。

「あのさ、貴女は三野真龍って知ってる?!」

そして再び彼らは巡り合う。
最強の力を宿した少年と血に囚われた少女。
彼らが巡り合うとき、その世界は戦場となり、大地に地の雨を降らせる。

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