異世界クロスロード 勇者と呼ばれた者

アナザー

第3話 異世界と言う場所

・こ、ここは?

目が覚めた裕輝。
目に映るのは木製の天井。
どうやら何処かの建物の中らしい。
体を起こそうとするが動かない。

・俺は、、、ダンジョンにいた筈だ。
ここは、何処だ?

暫く考えたが判らない。
相変わらず体は動かない。
しかし、暫くすると、、、、

・失礼します。

誰かが入って来た。
てか、俺が起きてる事を知らない筈だ、なら毎回失礼しますって言ってんのか?
なんて真面目な人だろう。

・あ、お目覚めになられましたか?

・リーシュ?
俺は、一体、、、

・ゆっくりと説明しますので、先ずは落ち着いてください。
とりあえず、処理しますので寝てて下さいね。

処理?なんの処理?
リーシュはベットの下に潜り込むと、一つの桶を取り出して新しいのに変えていた。
ちょっと待て、あれは、、、嘘だろ?

・リーシュ、、、まさか、、、

・恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ。
私は医療専門です。
排泄物の処理も治療の一環ですので。

いやぁぁぁぁぁぁ、
お願い、誰か俺の記憶を消して、、

・裕輝さんは、寝込むの初めて見たいですね。
皆さん同じ反応しますのでお気になさらず。

そう言って、リーシュは笑顔で部屋から出る。
俺が思うに、相手がリーシュだから患者が恥ずかしがるのだと思う。
あ、そうでもないか?
女性同士の時もあるんだし、
でも、やっぱりリーシュ以外の人だったらここまで恥ずかしくないよな?
いやしかし、、、そんな事は無いか?
そんな無駄な思考が駆け巡る中、リーシュが戻ってくる。

・その、すまない。
色々と迷惑かけたみたいで、、、

・構いませんよ。
こうなる事は事前にわかってましたので。
枯渇限界まで魔力を使うと大抵はこうなります。
1番の問題は、魔力回復薬を使った状態で枯渇限界に陥る事です。

・魔力回復薬?

・はい、
現在、軍が使用を促している薬です。
回復薬と言っても、一時的に魔力を底上げするだけなので、、、

・ふむ、

・魔力を底上げした状態で限界枯渇に陥り、薬の効果ぎ切れると、人は思考が死ぬんです。
何を言っても反応が無くなり、
何をしても感じなくなります。
私達は廃人と呼んでいます。

リーシュがもの凄く哀しそうな顔をする。
俺は戦慄を覚える。

・そんな薬を使う様に促してるのか?

・はい、それ程私達は追い詰められているのです
そして、医療専門部隊の隊員が少ないのもそれが原因でもあります。
既に何人もの隊員達が廃人となり、、、今も、、

リーシュが泣きそうになる。

・もう良い、状況は把握出来た。
俺が、この戦争を終わらせれば良いだけの話だ
だから、泣かないでくれリーシュ

俺はリーシュを慰める為に必死に言葉を発する。

・ありがとうございます。
私も全力でサポートさせて頂きます。

リーシュが少し笑顔になる。
めっちゃ可愛い、天使やな。

・でも、先ずは回復させる事を優先させて下さい
しっかり食べて、ゆっくり休んで下さい。

・リーシュ、俺は後どれくらいで起きられる?

・大体の人は約6日程掛かります。

長っ!
マジか、どんだけヤバいんだよ限界枯渇。

・普通の方なら意識が戻るまでに4日、立ち上がるまでに2日掛かりますが、裕輝さんは目覚めるのに3日目で起きました。
あれ程の魔力を使ったのに、考えられない回復力です。

・うそ、丸2日も寝てたの?
その間、、、まさか?

・私がお世話をさせて頂きました。

ニッコリと微笑むリーシュ。

・着替えとか、お風呂、、、は?

・お嫌かもしれませんが、
私が全てやらせて頂きました。
お体は拭く程度しかできませんでしたが、
出来るだけ綺麗に拭かせて頂きました。

まじかよ、、、全部見られたのか?
俺のアレも、ソレも、俺の全てを、、、

・あ、ありがとう。

頑張れ、俺。

・勝手な事をして申し訳ありませんでした。

頭を下げるリーシュ。

・いや、頭を上げてくれ。
本当に感謝している。
しかし、リーシュは、、、その、
平気だったのか?
俺の、、、その、。

・大丈夫ですよ。
私は医療専門部隊の隊長です。
恥ずかしがってなんていられませんので。

ニッコリ笑ってテキパキと仕事をするリーシュ
あれ?俺が変なのかな?
俺だけが恥ずかしいのか?
この世界が変なのか?

・皆さん恥ずかしがりますので大丈夫ですよ。

リーシュ、それ大丈夫じゃないからね!
やっぱりリーシュが凄いだけじゃねぇか
仕事出来る女性って凄いなぁ、、、
感心する裕輝であった。

・では、またお食事の時に来ますので、それまではゆっくりと眠ってて下さい。

そう言ってリーシュは出て行った。

・動けなければ何も出来ない、、か
仕方がない、ゆっくりしておくか。
しかし、ずっと寝ていたのに、また眠れるか?

そう思っていたが、気を抜くと気を失っしまった

次の日、、、

・おはようございます。
そろそろ起きれますか?

声が聞こえた。
俺は目を覚ました。

・裕輝さん、体の調子はどうですか?
昨夜はぐっすり眠っておられたのでお食事はやめて回復魔法をかけて体力を回復させるだけにしました

起き上がろうと試みる、
うん、大丈夫だ、起きられる。

・おはよう、リーシュ。
本当にありがとう、君のおかげで回復出来た。
全てリーシュのお陰だよ。

・おいおい、裕輝。
俺に礼は無いのかよ?

ライルが入って来た。

・ライル、、、
ライルがダンジョンから運んでくれたんだろ?
ありがとな。

・まあ、な、、、
お前を背負って運んだのはリーシュだ。
カールはスカウトだから先頭を歩いてたし、俺は敵の迎撃だからな、、、

マジか、俺はリーシュを見る。
すると笑顔で返してくれる。
可愛いな、、、、いや、そうじゃない。
大の大人を背負ってダンジョンの3階から上がって来たのか?
見た目によらずパワフルだな。

・いつまでリーシュを見つめてるんだよ。
とりあえず飯でも買うぞ、今後の事も決めておきたい。
裕輝、もう動けるか?

・大丈夫だ、2人とも、迷惑をかけた。

俺たちは食卓へ向かう。
ここは、軍の宿舎かな?
食堂らしき場所があるな、、!
3人は奥の部屋に入って行った。

・よし、
カールが揃い次第今後の行動について話し合う。
裕輝、体の具合はどうだ?

・あぁ、かなり重いな。
魔力の枯渇がこんなにも怖いとは思わなかった。
経験させてくれてありがとよ

・すまんな、無理をさせて。
こればかりは実際に体験しないと無理をしてしまう兵士も居たからな、、、

ライルは顔を伏せた。
多分、、、
犠牲になった兵士を思い浮かべてるんだろうな。

・遅くなりました。
今から料理を運んできます。

・私も手伝います。

カールが入って来た、と思ったらすぐに出て行く
続いてリーシュも出て行った。
今なら2人きりか、、、

・なあ、ライル、、
正直、俺はビビってる。
今までは平和な世の中に居た、平凡な奴だった。
それがいきなり命のやり取りだろ?
魔法の扱いを間違えただけでこのザマだ。
期待に応えられないかもしれないと、、、
正直怖いんだ。

・そうか、、
まあ、怖いのは当たり前だ。
俺だって、今でも怖くて堪らない。
たとえ、雑魚と戦っていたとしてもだ。
向こうも必死なんだ、、、気を抜いた瞬間に殺される事だってある。
急所に当たれば即死だってする。
ここはそう言う所だ。

背中がゾクリとする。

・だがな、、俺が、、、誰かがやらなければ直ぐにでも魔族に殺されるんだ。
何もしないで死ぬのは嫌だ。
だから俺は戦っている。
死なない為に戦っているんだ。
裕輝はどうなんだ?
お前はどうしたい?

・俺は、、、、

・良いか、よく聞けよ。
別に逃げるのは恥じゃない。
寧ろ当然の事だ、誰も気にしないさ。
逃げたいなら言ってくれ。
俺がなんとかしてやる。
死んだ事にして新しい名前で生きる事もできる。
無理にやる事は無いんだ。
今の内にしっかりと考えろ。
良いか?
俺はお前の味方だ。
何でも言えばいい、、、
友達だろ?

・ライル、、、

ガチャ

・お待たせしました。

カールが入ってくる。
そしてリーシュも、、、
その手には温かい料理を手に。

・裕輝さんは病み上がりなのでスープだけにして下さい。

そう言って、リーシュがスープを渡してくれる。
そして隣に座って食べさせてくれる。
暫く黙って食べていた。

・よし、食後はしばらく自由行動だ。
今日は一日休暇とする。
夕方にここに集まってくれ。
では、食事が終わり次第、各自解散。

ライルはそう言うと、食べ終わった食器を持って出て行った。
そしてカールも、俺に一礼して出て行った。

・裕輝さん、大丈夫ですか?

・ん?

・何だか元気がない様子なので、、、
私で良ければお話を聞きますよ。

リーシュ、、、

・とりあえず、お互いに食べよう。
もう、一人で食べられるから、リーシュも食べて

・わかりました。

2人は無言で食べる。
時々こちらを気にしてくれるリーシュ、、、
この子は、何で軍にいるんだろう?
こんなに優しい子なのに、、、

食事後、
リーシュに頼んで村全体が見える場所を聞いた。
そこに向かうことにした。
一人で良いと言ったが、頑なにリーシュはついて行くと言って離れなかった。
結構、頑固なんだな。

やっとの思いで丘を登り、、、
世界を見渡す。

・これが、この世界か、、、
俺が神に託された世界、、、
広い、、、広大だ。

暫く世界を、自分を見つめ直す

・俺は自惚れていた。
勇者になれると聞いて舞い上がっていただけなのかもしれない。

リーシュが黙って隣に居てくれる。

・俺の世界は、、俺の住んでいた世界は
何不自由ない環境で、魔物なんて居ない。
平和な国だ。
もちろん犯罪はある、
人は毎日何処かで死んでいる。
だが、世界に人が溢れてしまう程に人が次々と生まれてくる。
この世界と、俺の世界では、殺されて死んでいく人の数が比べ物にならないんだ。
俺は、そんな世界を救おうと言うのか、、

気がつくと体が震えてくる。

・一人で背負うには、余りにも大き過ぎる。
正直、このまま逃げ出したいよ。
、、、、怖いんだ。

それは裕輝の心からの言葉だった。
涙が溢れ出す。

・裕輝さん。
貴方は何故、悩むんですか?

・え?

リーシュが俺に問いかけて来た。

・人には世界を背負うことなど出来ません。
たとえ勇者だとしても、、、人なんです。
世界を背負うなど、自惚れ以外の何者でもありません。

俺はリーシュを見る。
リーシュは真っ直ぐに俺を見詰める。

・貴方は死んでもおかしく無い状態でした。
これからも死ぬ程辛い目に合うでしょう。
なのに、何故逃げないんですか?
悩む必要などありません。
勇者なんて関係ない。
貴方は貴方、、、風間裕輝さんでしょ?
私の仲間の、、、
だから、逃げなさい。

・リーシュ、、、?

・勝手に呼んだのはこちらなんです。
なのにお願い事なんて、酷いと思いませんか?
私は王国が許せない。
平和に暮らしていた貴方を、勝手に呼び出し、危険な目に合わせながら死んでゆけと、、、
この国は、世界は貴方にそう言っているんですよ?
従う必要なんて無い。
貴方は3日前、ダンジョンで死んだの。
だから、ここから逃げなさい。

そう言って一つの鞄を差し出してくる。

・ライル団長の指示で、カールさんが用意してくれました。
暫くはこれで生きていけます。
それまでに住む場所を見つけて、静かに暮らしてください。
呼びつけておいて勝手な事を言っているのは分かっています。
でも、このまま貴方を見殺しになどできない。
お願いします。
逃げて下さい。
幸い、貴方は十分に強い。
何処でも、好きな所に行けるはず。
何も気にする必要は無い、逃げてください。

そう言って、リーシュは去って行った。
残されたのは俺と鞄のみ。
俺は鞄を拾った。
涙が、また溢れて来た。

・う、、、うぅ、
うわぁぁぁぁぁ!

大声で泣いた。
恥ずかしいとか、そんな事関係ない。
俺はひたすら泣いた。

・なんでこうなった。
なんで俺だったんだ!
確かに俺は望んださ、
望んで来たのは俺だ。
たが、何故だ!
何故、俺は引き受けちまったんだ!

既に手遅れだと分かっていても、口から勝手に出て来てしまう。
どうしようもない感情が溢れて止まらない。

・うぅ、、、父さん、、、母さん、、
会いたいよ、、、

裕輝は返事のない空に呟いていた。

・ライル団長、、、

・やはりな、、、
裕輝の目が死んでいた。
心を砕かれていた証拠だ。
このままでは、ただ死にに行く様なもんだ。
俺は友達として、裕輝を死なせるわけにはいかん。
アイツはここにを置いて行く。
いいな、カール。

・、、、はい

2人は少し離れた茂みの中で様子を伺っていた。
そして、村に戻って行く。
ライルの目にも涙が溢れていた。

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