【コミカライズ】寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「ここで抱かせて」1
◇◇◇◇◇◇◇◇
月曜日の朝、ふたりは一緒に家を出た。
恋人になろうとも、通勤の眼鏡とマスクは必需品で、完全防備になってから駅へと向かった。
「じゃあ、あとで」
「はい」
晴久の早朝にカフェに寄る日課はなくなることはなく、雪乃も早出の時間を変えることはしない。
ホームに並んでから徐々に距離が開き始め、電車乗ってからは、完全に他人となる。
もちろん職場にも秘密。どちらがそうしようと言い始めたことでもなく、お互いにそうすべきだと思っていた。
燃え上がるふたりの恋は、通勤から仕事中にかけての時間、ぽっかりと空白になる。
早朝のオフィス。
雪乃が一番乗りをしてから二十分後に、岩瀬が出社した。
「おはようございます」
「あ、岩瀬さんおはようございます……」
雪乃はプリンターのインクを取り替えていた手を止め、いつもよりかなり早く出社してきた彼女に挨拶を返した。
教育係は別の社員が担当しているため、これまで岩瀬とあまり話す機会はなかったが、そんな雪乃にも今日の彼女の目は泣き腫らした後だと一目見て分かる。
(岩瀬さん……どうしたんだろう)
タイミングを逃した雪乃は、岩瀬に「どうしたの?」と聞けず、彼女はそのままロッカーへ入っていった。
(そういえば晴久さんに告白したんだよね……。断っただろうから、もしかしてそのせいかな……)
もしそうなら彼女を心配する権利はない。雪乃は複雑な心境でプリンターへ戻る。
その後、いつもまとまって出勤してくる女性社員が五人、今日はキャアキャアと声を上げながらオフィスへ到着した。
普段と様子が違う。
比較的静かなメンバーなのに、と異変を察知した雪乃は、そのうちのひとりに「どうかしたんですか?」と尋ねた。
同僚は興奮気味に答える。
「細川さんには写真回ってきてないの?」
「写真?」
「大スクープだよ!  私は広報部の同期から今朝回ってきたんだけど、まだなら見せてあげる!  女子社員は今この話題で持ちきりだから!」
「はあ……」
同僚はまだ肩にかけていたバッグに手を突っ込み、ピンクのカバーの携帯を取り出した。それをものすごい早さでタンタンとタップし始める。
雪乃も顔を寄せ、彼女が出そうとしている画面を覗き込んだ。
「ストーップ!」
「……皆子さん?」
そこへ割り込んできたのは、たった今出社した皆子だった。
髪を振り乱した彼女はゼーハーゼーハーと息を上げ、ふたりの間を手で遮断する。
雪乃は同僚とともに怪訝な顔をしたが、皆子はそんなことはお構い無しに雪乃の二の腕を掴んで引っ張り上げた。
「雪乃ちゃん!  ちょっといい!?  話があるから!」
「は、はいっ」
すごい剣幕で詰め寄ってくる皆子。
雪乃は携帯の画面を向けてポカンとしている同僚を残し、皆子にあれよあれよと連れ去られたのだった。
月曜日の朝、ふたりは一緒に家を出た。
恋人になろうとも、通勤の眼鏡とマスクは必需品で、完全防備になってから駅へと向かった。
「じゃあ、あとで」
「はい」
晴久の早朝にカフェに寄る日課はなくなることはなく、雪乃も早出の時間を変えることはしない。
ホームに並んでから徐々に距離が開き始め、電車乗ってからは、完全に他人となる。
もちろん職場にも秘密。どちらがそうしようと言い始めたことでもなく、お互いにそうすべきだと思っていた。
燃え上がるふたりの恋は、通勤から仕事中にかけての時間、ぽっかりと空白になる。
早朝のオフィス。
雪乃が一番乗りをしてから二十分後に、岩瀬が出社した。
「おはようございます」
「あ、岩瀬さんおはようございます……」
雪乃はプリンターのインクを取り替えていた手を止め、いつもよりかなり早く出社してきた彼女に挨拶を返した。
教育係は別の社員が担当しているため、これまで岩瀬とあまり話す機会はなかったが、そんな雪乃にも今日の彼女の目は泣き腫らした後だと一目見て分かる。
(岩瀬さん……どうしたんだろう)
タイミングを逃した雪乃は、岩瀬に「どうしたの?」と聞けず、彼女はそのままロッカーへ入っていった。
(そういえば晴久さんに告白したんだよね……。断っただろうから、もしかしてそのせいかな……)
もしそうなら彼女を心配する権利はない。雪乃は複雑な心境でプリンターへ戻る。
その後、いつもまとまって出勤してくる女性社員が五人、今日はキャアキャアと声を上げながらオフィスへ到着した。
普段と様子が違う。
比較的静かなメンバーなのに、と異変を察知した雪乃は、そのうちのひとりに「どうかしたんですか?」と尋ねた。
同僚は興奮気味に答える。
「細川さんには写真回ってきてないの?」
「写真?」
「大スクープだよ!  私は広報部の同期から今朝回ってきたんだけど、まだなら見せてあげる!  女子社員は今この話題で持ちきりだから!」
「はあ……」
同僚はまだ肩にかけていたバッグに手を突っ込み、ピンクのカバーの携帯を取り出した。それをものすごい早さでタンタンとタップし始める。
雪乃も顔を寄せ、彼女が出そうとしている画面を覗き込んだ。
「ストーップ!」
「……皆子さん?」
そこへ割り込んできたのは、たった今出社した皆子だった。
髪を振り乱した彼女はゼーハーゼーハーと息を上げ、ふたりの間を手で遮断する。
雪乃は同僚とともに怪訝な顔をしたが、皆子はそんなことはお構い無しに雪乃の二の腕を掴んで引っ張り上げた。
「雪乃ちゃん!  ちょっといい!?  話があるから!」
「は、はいっ」
すごい剣幕で詰め寄ってくる皆子。
雪乃は携帯の画面を向けてポカンとしている同僚を残し、皆子にあれよあれよと連れ去られたのだった。
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