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【コミカライズ】寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

西雲ササメ

「今夜は優しくできそうにない」4

ショッピングモールから数分歩き、大通りから一本裏道へと入ったところから、表の黄色いイルミネーションはぱったりと途絶えて閑静な住宅街へと続いていた。

ぽつぽつとした電灯が並んではいるが、小気味の悪い枯れた並木道に、雪乃はキュッと腕を持つ手に力を込める。


「怖い?」


晴久は空いている手で彼女の頭を撫で、雪乃は彼の問いかけに首を横に振った。

晴久がいるから胸にくるような恐怖は感じないものの、こんな夜道になにがあるのかと彼女はハラハラし始める。

晴久を信用している。だから変な場所には連れて行かれるわけはない。
それは分かっているものの、秘密と言った晴久に目的地を尋ねたくて仕方なくなってきた。


「……暗いですね」


ついそう漏らし、彼に訴える。


「これ以上は暗くならないから大丈夫だよ」

「どこに行くんですか?」

「もう着いてる」


着いてるって?と首を傾げながら、雪乃は辺りを見回した。

数メートル先にコンビニや居酒屋ののれんが見えるだけで、特にデートスポットらしきものはなにもない。

本当にただの住宅地で、時折住人が歩いているだけ。

もう一度晴久の顔を見上げるが、彼は歩道の途中で立ち止まり、前後に目を向けているだけだった。なにかを待っている。


(なんだろう。……晴久さん、なにを待っているの?)


雪乃が夢中で掴んでいる晴久の腕。彼はその腕をゆっくりと持ち上げ、手首を目の前に持っていき、腕時計を見た。


「時間だ、雪乃」

「え?」


晴久は顔を上げた。雪乃もそれにならい、周囲へと視線を向ける。

するとその瞬間、鬱蒼としていた並木に次々と青い光が灯り出した。


「わっ……」


海の波のように、青い粒の煌めきが手前から奥の並木へと一瞬で広がっていく。

道の両端に並ぶすべての枯れ木が青い光に変わると、辺りは幻想的な空間に包まれた。


「ここは午後六時になると、こうなるんだ」


青い空間の中でぼんやりと照らされている晴久が、落ち着いた声でそう言った。


「……綺麗……」


雪乃の瞳にも青い光が揺れている。

ドキドキした今日一日のトキメキがじんわりと、穏やかに心に溶けていくようだった。

暗闇を避けていた雪乃は、いつもなら見る間もなく足早に通りすぎていく光景。

イルミネーションを見てこんなに胸がいっぱいになることは、今までなかった。


「夜道も悪くないだろう?」

「晴久さん……」


言葉を失うほど感激した雪乃は、ピッタリと晴久に体を寄せた。

彼の腕に頬をくっつけ、目の前のロマンチックな景色をうっとりと眺める。


「雪乃。これからは俺がそばにいるから。行きたい場所にどこだって連れて行くよ」


力強い腕に頬を擦り寄せ、彼の言葉を噛み締めた。

雪乃は今日のデートで実感していた。晴久が隣にいればどこへでも行ける。彼のおかげで失った十年を取り戻し、やっと自由を手に入れた気がした。

雪乃は愛しさが堪えきれず、自分から晴久の胸の中に抱きついた。


(晴久さんっ……大好き)


びくともしないが、ありたっけの力でギュウギュウと彼を締め付ける。


「……雪乃。かわいい」


抱きしめ返し頭を撫でる晴久に、雪乃はさらに甘えた視線を向けた。


「……晴久さん……」


柔らかそうな唇に晴久の喉がゴクリと鳴る。


「ここじゃこれ以上できないよ。外だからね」

「そうですよね……」


珍しく、たしなめずに残念そうに目を伏せる彼女に、晴久はたまらなくなる。


「帰ったら覚悟して」


彼の宣告にゾクッと甘い痺れが走った後、雪乃は顔を熱くしてうなずいた。


家に着く頃、ふたりは限界だった。


「雪乃っ……」


玄関に入るまでは寄り添うだけに留めていた体を、扉が閉まった途端に絡ませ、電気も点けないまま晴久は雪乃をリビングのソファに押し付けた。


「晴久さんっ……シャワーを浴びてから……」

「……ごめん、待てないっ」


お互いにここまで燃えるような恋を経験したことはなく、かき乱すキスをして気持ちをぶつけ合う。

我慢の限界だった晴久は肩が上下するほどの息をし、彼女のコートを剥ぎ取った。


「雪乃、ごめん……今夜は優しくできそうにない」


彼女の脚の間に腰を割り込ませた晴久は、そこで一度止め、許可を求める視線を彼女へ向ける。

それを受けた雪乃は彼の首に腕を伸ばして抱きつくと、体重をかけて引き寄せた。


「大丈夫です……私、晴久さんになら、何をされても」


熱い瞳に飲み込まれた晴久は、頭を彼女の胸へと沈め、狼のように貪った。



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